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北方の地3

ロバートは長年カステリ家に勤めてきた家令だった。

幼い頃には先々代子爵とも面識があり、先代、ルイスの傍らに従い、カステリ家の全てに精通しているといっても過言ではない存在だった。

リリィがこの場にロバートを同席させたのも、それだけの信頼があったからである。

「つまり……カステリ家を、フェリクス様がお継ぎになると」

リリィの顔から色が消え、両手は膝の上できつく握られている。

ルイスの急な死からまだひと月と経っていない。

喪服のリリィに対して、夜遊びのような派手な格好で応接室の上座に座った男は、似合わない葉巻を指先で弄び、本人が豪快だと思っている笑い方で笑った。

「そりゃあなあ、兄上様が死んだ今、血縁の男は俺だけ。ま、当然のことだな」

ルイスの弟、フェリクス・カステリはあまりルイスに似たところのない男だった。

ルイスが子爵家と領地を継いだあと、少し離れた場所に屋敷と財産を与えられ、悠々自適に過ごしているとリリィは聞いていた。

顔を合わせたのも、実のところ先日のルイスの葬儀が初めてである。

それまでずっと、ルイスがリリィとフェリクスを遠ざけていた。

リリィは深く息を吸い、長く吐き出した。

「ロバートと相談します。今日のところは、お引き取りを」

「おいおい! これから当主になるっていうんでわざわざ来てやった俺を、追い返す!? 冗談はやめてくれよ! 今日からここが俺の屋敷だ」

目を見張ったリリィは、それでも目を硬く閉じて、ロバートを振り返った。

「ロバート。フェリクス様にお食事とお部屋のご用意を。それから、お風呂の支度をお願い」

「かしこまりました」


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