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公爵邸の戸惑い(4)

調査のための人員を差配してしまえば、公爵本人のやることはほとんどない。

翌朝には宰相としての勤めを果たしに王都へ向かった。

しかし馬車に揺られていても、思い出すのはあの娘とルイスのことばかりだった。


ルイスはミザール公爵家の系譜に連なるカステリ家の長男だった。

アルバートとも年が近く、学院の前身となる学び舎が創設されたときには、学び舎の理念通り、身分を越えてその知性で輝いていた将来有望な若者であった。

カステリ家の長男でなければアルバートの側近として迎えたいと、前公爵が口にしたことすらあった。

アルバートにとっても兄弟とも親友とも思える相手であり、豊富な知識と前進的な考え方は尊敬してすらいた。

末端の見習いではあるが、若くして外交使節団の一員にも選ばれ、前ミザール公爵も、長男ではあってもルイスをよりミザール家に近い侯爵か伯爵あたりの婿として出してはどうかと、先のカステリ子爵に提案したほどだった。

そんな彼が、輝かしい将来の全てと引き換えに得たのは、たった一人の女性だった。


当時の騒動はアルバートもよく覚えている。

騒動、といっていいのかすらわからない。

事情を知る者たちには大変な騒動だったが、知らない者は事が起きたことすら知らない。

全ては秘密裡に片付けられた。

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