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生き延びた娘1
少し体が温まったのか、ようやく少女がぼんやりと目をあけた。
アルバートは安堵して少女を抱えなおした。
優秀な公爵家の侍従は門の前でまだ待っていて、公爵が大股に歩み寄ると素早く馬車の扉を開けた。
しかし、彼が少女を馬車に乗せると、少女は怯えた顔で馬車から飛び降りようとしたので、公爵は少女を押し留めなくてはならなかった。
「あ、あ……だめ、です。馬車、汚れるから」
たどたどしい話し方も、とても12歳のものではない。
「構わない。座りなさい」
恐る恐る座席に座ろうとして、少女は自分がくるまれていた外套を慌てて脱ごうとする。
「着ていなさい」
「でも、きれいな服が」
「まだ寒いだろう。着ていなさい」
向かい合って座ってみれば、少女の靴はすっかり濡れて穴まで開いている。
縮こまった少女には水を与えてやりながら、公爵は侍従に命じた。
「至急馬を走らせよ。公爵領に戻る」
「畏まりました」