公爵のため息4
門の向こう、扉の前に小さな人影が動いているのを認めて、アルバートは声を上げた。
「おおい、君」
小さな体に見合わない大きな道具を持って、もたもたと玄関から門に続く石畳の上の雪かきをしている子供は、離れた公爵からも異様な薄着であることが伺える。
中途半端な長さでぼさぼさの髪の毛で性別ははっきりと見極められない。
この雪だというのに袖は肘下までしかなく、手首はほとんど骨ばかりの細さだ。
アルバートの声も聞こえていないようで、下を向いたまま雪かきを続けている。
「君、すまないが誰か――」
公爵は手ずから鉄の門を押し開け、取次ぎを頼もうともう一度呼びかけた。
しかし子供は、自分の足に躓いたのか、ふらりと雪の上に倒れ、そのまま動かなくなった。
「君!」
駆け寄り、子供を起こした公爵は、硬く目を閉じた子供の体の冷たさにぞっとした。
いったいこの薄着でどれほど長くこの雪の中、外に出ていたのか。
そもそも、子供の体からして骨と皮ばかりのやせ細り具合だ。
貧民や奴隷であればそうしたこともあろうが、セレスシャル王国では奴隷を禁止している。
なによりも。
「君は、まさか……」
アルバートは急いで着ていた外套を脱ぎ、子供を包んだ。