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公爵のため息3
窓の外に見えるのは寒々しく枯れ果てた地だった。
立ち枯れた木は雪の重さに耐えかねて折れ、まばらに見える建物は屋根が落ちて人が住んでいる様子もない。
屋根が無事な家もあるが、人がいればあるはずの気配というものがまるで感じられない。
湿り気のない乾いた土の上には雪が積もり、全てを白く覆い隠している。
「旦那様、雪が酷くなってきました。如何致しましょう。戻りますか?」
御者が小窓から訊ねてきたが、アルバートは首を横に振った。
「ここまで来たら戻るより領主館の方が近いだろう。急いでくれ」
とにかく領主館に着かないことには何も判断出来ない。
胸のざわつきをなだめながら、アルバートは深く息を吸った。
体を冷やすのは入り込む隙間風か、それとも荒れ果てた光景への不安か。
馬車の往来はあるらしく、道が現れているのが幸いだった。
領主館の門の前で馬車を止めさせたアルバートは、こうした場合に馬車の音を聞きつけて出てくるであろうロバートの姿を探した。
しかし鉄の門は一向に開く様子がない。
何度目かのため息をついたアルバートは、一人で馬車を降り、門に近づいた。