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消えた娘8

「お暇を頂きとうございます」

「ふん、そうか」

リリィが死んでからも屋敷内のまとめ役として使用人たちを束ねてきたロバートの言葉を、フェリクスは長いこと聞き流してきた。

ロバートもいくら家令といえども使用人でしかない。

カステリ家の当主であるフェリクスの意見に反対することが、すでに心得違いなのである。

自分から出ていきたいというのなら、止める理由もなかった。

「勝手にしろ」

「長らくお世話になりました」

いやにすんなりと頭を下げて出て行ったので、フェリクスは肩透かしをくらった。

その抵抗の無さを訝しんで、ロバートに見張りをつけていたのだが、案の定だった。

数日後の深夜、全員が寝静まったところを厨房に降りていくロバートを捕まえたのである。

「ロバート、長年我が家に仕えてきたお前が、なんのつもりだ?」

「なにとは。もうこの家にはご不要なようですから、同じご不要なお嬢様ともども、出ていくだけでございます」

ロバートはシャーロットを連れ出そうとしていた。

どうぞと見送ってやるほど、フェリクスもロバートを軽視してはいなかった。

このままロバートを見逃せば、おそらくロバートはどんな手段を使ってもシャーロットを公爵家に連れて行くだろうと予想できる。

さすがにそれは阻止しなくてはならない。

「残念だぞロバート。お前に裏切られるとは」

「先に旦那様やリリィ様を裏切ったのは、フェリクス様でございましょう」

臆することなく言い返してくるロバートの目にフェリクスはたじろぐ。

いつもあの目が嫌いだった。

自分は正しいと信じているようで、あの目がいつも、フェリクスを責めているようで。

フェリクスは普段ほとんど使わない剣を抜き放った。

「長年仕えてくれた礼にこれをくれてやる」

「なにを……!」

下男にロバートを押さえさせ猿轡を噛ませる。

動かない標的であれば切るのは簡単なことだった。

片足の腱を切られ、額に脂汗を浮かべたまま呻くロバートを門の外に捨てさせた。

のたれ死のうと、近くの村にたどり着こうと、どちらでも良かった。

あの足では回復にかなりの時間を要する。

杖を使って歩けるようになったところで、領地から出ようとしても山越えは出来ないし、手紙の類はフェリクスが掌握している。

もうロバートが外へ助けを求めることは出来ないのだから。

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