消えた娘7
領地に戻り、フェリクスは手紙を書き始めた。
書き出しはこうだ。
『先日お話ししたシャーロットですが、体調が思うように回復せず――』
高価な薬が必要だといっては金を求め、治ったと報告した数か月後にはまた季節の変わり目に具合が悪くなったと書き連ねた。
当のシャーロットは今まさに床に這いつくばって床の掃除をしているが、多忙を極める公爵がいちいち確認しに来ることもない。
イザベラはなにかにつけて折檻と称してシャーロットを叩いていたし、それを見ているベアトリスも一緒になってシャーロットを足蹴にしている。
さらには入れ替えた使用人たちも、すれ違いざまに足を引っ掛けてみたり、桶の水をひっくり返したりと、憂さ晴らしの対象にしている。
ある日は一晩馬小屋で過ごしたとかで、あまりにも臭かったので、さすがに馬小屋で寝ることはやめさせた。
代わりに使用人部屋から厨房横の半地下物置がシャーロットの棲み処になった。
その間にも、やれシャーロットが可哀そうだの、やめてくださいだの、使用人の身分を弁えない連中は後を絶たなかった。
そのたびに折檻して屋敷を追い出し、フェリクスの言うことを聞く新しい使用人を増やした。
中には夜中に消える使用人もいて、平民の身勝手さには呆れたものだった。
「旦那様、お話がございます」
夜、書斎にロバートが訪れた。
新しい使用人を雇うにも金がかかるので、また適当に公爵に手紙を書こうとしていたところだった。
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