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消えた娘4

フェリクスの目についたのは、めそめそと泣きながら乳母に慰められている姪だった。

ベアトリスが5歳になるから、6歳くらいだったはずだ。

今までも時々顔を合わせていたが、積極的に関わろうとしたことはなかった。

泣きはらした目で、それでも乳母に促されて、イザベラとベアトリスに衣装の裾を持ったお辞儀で挨拶をしてみせた姪に、フェリクスは言い表せない苛立ちを覚えた。

自分を見下していたルイスとリリィがまだそこにいるようで、同じ食事の席についているのを見るだけでも苛立ちが募った。

姪に出されるはずの食事を一品、子飼いの下男に処分させた。

一人だけ食事が一品少なくて困っている姪の姿は、フェリクスの嗜虐心を満たした。

食事を持ってきた使用人は、何度言っても姪にフェリクスたちと同じ食事を用意するのをやめないので屋敷から追い出した。

追い出す前には、言うことを聞かない両手を鞭で打ってやった。

代わりに新しく雇った女はフェリクスの言うことをよく聞いて、姪を甘やかしたりしなかった。

そうしているうちに、姪の乳母サリーが、忙しいフェリクスのもとに直談判に訪れた。

「お嬢様に酷いことをしないでください。お嬢様は旦那様や新しい奥様に、なにをしたっていうんですか」

田舎者らしい不作法な女でも、リリィやロバートはおおらかで人が良いと思っていたようだが、フェリクスは違う。

末端とはいえミザール公爵家に連なる家門に、こんな田舎者はいらないと常々フェリクスは考えていた。

下男に命令してそのままサリーを屋敷から叩き出した。

下男の報告では、サリーはしばらく門の向こうで何か言っていたようだが、諦めてどこかへ行ったらしい。

使用人たちもフェリクスやイザベラの陰口を言っている者がいれば容赦なく賃金を減らした。

そのうち、自分から辞めたいと言い出す使用人が何人か出てきたので、望み通り暇をやった。

あまり使用人が減りすぎても困るとイザベラが言い出したので、フェリクスは妙案を思いついた。

働きもせず、すでに両親が死んでいながら、フェリクスの温情で無駄飯を食らっている姪にやらせればよいのだと。


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