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消えた娘3

本邸に戻った際に、馬車から降りてきたイザベラとベアトリスを見たロバートの顔は見ものだった。

いつも落ち着き払って、フェリクスを旦那様と呼びながら、そのくせ内心では自分を見下してリリィに従っていたロバートを、フェリクスはすっかり嫌っていた。

そのロバートが顔色を変えて慌てふためている様は実に滑稽だった。

「旦那様、まだ奥様のご葬儀すら終わっておりません。せめてご葬儀を終えて、お部屋が整ってからお迎えになってはいかがでしょう」

賢しげにそんな提案をしてくるロバートの魂胆も、フェリクスには解っていた。

ロバートはリリィに心酔していたから、他の女が屋敷に入ることが許せないのだ。

フェリクスはその心得違いを正してやらなくてはならなかった。

「いいか、二度とあの女を奥様と呼ぶな。今日からお前たちが奥様と呼ぶのはこのイザベラだ」

子爵夫人に相応しく着飾ってきたイザベラに、集まってきた使用人たちも驚いているようだった。

「さあ、早くあたくしたちを案内してちょうだい。部屋はそうね、今日のところは客間で許してあげる」

当座のものとして持ってきた荷物を近くの使用人に渡し、イザベラは別邸の荷物も早急に運ぶ手配をするよう指示を出した。

何人かは客間の用意に行き、突っ立ったままの使用人にも茶と菓子の用意をするように言いつけ、閉め切っていた窓を開けさせる。

花瓶に生けるためか白い百合の花を持っていた使用人には、もっと色の明るい花を用意しろと言ったので、使用人たちが一斉に動き出して屋敷の中が活気づく。

来て早々に女主人らしい風格のあるイザベラの采配はさすがだとフェリクスも感心した。

今まで日陰の身だったとはいえ、別邸を任せていただけのことはある。

葬儀が終わっていないとロバートなどは口にしたが、手配はロバートに任せてあるし、葬儀をしたところで最後に顔を出して適当に挨拶をするだけなので、これといってやることはない。

しかし暇ではない。

次に公爵に会いに行く日のために、前にリリィに邪魔をされて手に入らなかったあの毛皮で新しい外套を誂えるか、それとも家紋を金糸で縫い取らせた天鵞絨の上着を仕立てるか。

商人がまた儲け話を持ち込んできているので、それも精査しなくてはならない。

すでにほとんど終わったような葬儀のことなどより、フェリクスには考えなければならない先々のことが山ほどあるのだから。

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