表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/39

消えた娘1

食器の割れる音が食堂に響く。

茶器をぶつけられた娘はただ床に頭をこすりつけて、もうしわけありませんと繰り返した。

その薄汚れた顔にフェリクスを見下していた女の面影を見て、フェリクスは腹立ちまぎれに杖で打ち据えた。


リリィが本当に病気になったのは、結婚生活4年目を迎えた頃だ。

フェリクスの計画は思い描いていたほどには上手くいかなかった。

商人から売れると聞かされて資金を提供した品もそれほど売れず、上位貴族との繋がりを増やすために贅沢な衣裳を誂え、頻繁に社交場に顔を出しても、その場では良い手応えを感じていたはずの相手からは茶会や夜会の誘いもない。

減るばかりの金を取り戻すために頻繁に賭場に通うようになった。

賭場といっても道楽で遊ぶのではない、とフェリクスは言い張った。

手っ取り早く金と人脈を増やすための正当な手段だ。

商人の紹介で訪れた賭場には身分を隠した上位貴族も混ざっていたが、フェリクスがわざと負けてやっても感謝もない。

次第にリリィやロバートからも金の出処を怪しまれるようになって、本邸に帰るのが億劫になった。

どうせあの二人が執務を行っているなら、フェリクスが面倒なことをする必要もない。

あの二人が引きこもって書類仕事をするなら、自分は外部との積極的な交流をしているのだとフェリクスは考えていた。

賭場にはイザベラを伴うこともあったが、夜会には連れていけなかった。

金蔓である公爵には、妻がリリィであることが知られていたからだ。

下手に夜会にイザベラを伴って、よからぬ噂が公爵の耳に入るのは好ましくなかった。

代わりに、公爵の誕生日を祝ってミザール家で行われる一門を招く夜会では、誰もが公爵への挨拶の機会を伺うなかで、公爵は必ずフェリクスの挨拶を受けた。

リリィの体調を訊ねるためだが、公爵と言葉を交わすフェリクスを上位の者たちが羨ましそうに見てくるのは気持ちがよかった。

それでも公爵はリリィの治療費以上の金を出したり、カステリ家を特別に取り立てることはなかった。

それがどうやらリリィの願いによるものらしいと公爵との会話で知って、フェリクスは次第にリリィを疎ましく思うようになっていた。

よろしければ評価、ブックマークをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ