新子爵の思惑5
フェリクスが、実際に領地を管理していたのがリリィであることを見破るまで、それほど時間はかからなかった。
ロバートや屋敷の使用人たちが結託して主人であるフェリクスを騙していたことには腹が立ったし、そのまま全員屋敷を追い出してやろうかとも思った。
だが、別邸でイザベラと酒を飲んで気分転換をするうちに閃いたのだ。
自分を騙せていると思っている連中が、実は自分の手の平の上で踊らされていたと知ったら、どれほど悔しがるだろうかと。
フェリクスは試しに公爵に手紙を書いてみた。
リリィが病気になり、医者や薬を手配するのに先立つものが必要だと。
やがてそれが金貨と滋養に良い食べ物に変わって戻ってくると、フェリクスは自分の才覚に震え上がった。
清廉潔白を気取っていた兄や屋敷の連中は領地を守ることばかり考えていて、別邸に追いやられたフェリクスは歯痒い思いをしていた。
フェリクスにしてみれば、兄は宝の持ち腐れだった。
せっかく公爵と縁があるなら、もっと外に出て流行に乗り、さらなる発展を目指すべきだというのに、いつまでもこんな僻地でぼんやりしているうちに死んでしまった。
新しい時代に必要なのは、フェリクスのような先進的な考えを持つ貴族だ。
こうして密かに得た金を利用してさらに大金を作ることが出来れば、本邸の連中も、もうフェリクスをお飾りのように扱うことはしないはずである。
イザベラに今後の計画を話すと、イザベラは言葉の限りフェリクスを褒めた。
「さすがは旦那様ですわ。本邸の田舎者たちとは見ている世界が違いますわね」
届いた金貨で買った酒は、値段以上に美味く感じられた。
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