2.ソードダンサーとの戦闘。
「ファイアバットからは【発火】で、アイスバットからは【氷結】……か」
――それから、ボクは奪い続けた。
ありとあらゆる魔物の能力を強奪して、自分の能力へと変換する。今まで自分から忌み嫌ってきた《グリーダー》という能力は、同じものを奪えばそれが強化されていくようだった。例えばアンデッドデーモンから能力を奪い続ければ、自身の回復速度が格段に上がっていく。
特殊な能力を持つ魔物は当然少ないけれど、雑多に存在している魔物が相手でも、能力が強化できるのだから奪わない手はなかった。実際に、最初こそ小さな火しか発生させられなかったが、現在では――。
「これは、なかなかに大きな炎だよね」
たいていの魔物であれば、焼却し得るだけの火炎が生み出せるようになっている。【氷結】についてはまだまだ発展途上だけど、ゴーレムの動きを封じられるだけの威力にはなると思われた。これならきっと、一般的な魔法使いのレベルには達しているはず。
だけど、ボクはまずこの高難易度ダンジョンから生還しなければならない。
そのためには、もっと力が必要だった。
「でも、まだ足りない。だったらもっと、強い魔物を探して……ん?」
ボクはそう考えて、ダンジョンの探索を続ける。
すると、ある一体の魔物を発見した。
「アレは、ソードダンサー……?」
『ソードダンサー』――それは、ダンジョンで死した剣士の意識集合体、とされるアンデッド。つまり、世界中の剣士の記憶を持つという稀少な魔物だった。見つけたら即座に逃げろ、というのが定説ではあるけれど、いまのボクにとっては最高の獲物だ。
もし彼の力を奪うことができれば……。
「……よし!」
ボクはそこまで考えてから、意を決して巨大な骸骨剣士の前へと躍り出た。
すると相手もこちらを認識したらしく、腰に携えた大剣を引き抜く。互いに臨戦態勢となり、間合いを計った後――。
【GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!】
ソードダンサーは凄まじい速度で、ボクへと肉薄した。
振り上げた剣を叩きつけるように振り下ろし、こちらはとっさに身体を左へ転がす。そして、それと同時に【氷結】によって、抉れた地面と大剣を縛り付けた。得物を失ったソードダンサーはあからさまに困惑し、こちらに対して怒りの感情を向けてくる。
武器がなければ、相手は普通のアンデッド。
ボクは次に――。
「喰らえ――【発火】!!」
最大火力をもって、ソードダンサーを焼き尽くす。
灼熱によって包まれた相手はもがき苦しみ、こちらから注意がそれた。これだけの間があれば、きっと《グリーダー》の能力を使う時間を稼ぐことができるはず。
ボクは意識を集中し、そして――。
「奪え、その力……!!」
その直後、ボクの中に様々な記憶が流れ込んできた。
ある者は将来有望と呼ばれながらも夢半ばに命を落とし、またある者は王国を守るためにその命の輝きを燃やし尽くし、そしてまたある者は――。
【GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?】
「な、思ったよりも行動が早い……!?」
だが、そこまで奪った瞬間だ。
ボクの魔法の効力が切れ、ソードダンサーが襲い掛かってきたのは。
「く、そ……!?」
これは、想定外。
もとより賭けではあったが、このままでは殺される。そう思った。
「ふむ。なるほど、私を呼び戻したのはキミか」
「…………え?」
その直後だ。
凛とした一人の女性の声が、聞こえてきたのは。
驚きながらも声のした方を見ると、そこに立っていたのは王国騎士団の鎧に身を包んだ麗しい女性。金色の髪に、鋭い赤の瞳。威風堂々と剣を構える彼女は、こう言った。
「これは面白い。だが、まずは借りた恩は返すべきだな」――と。
そして、ソードダンサーへと向き直り。
「はぁ……!!」
――剣戟、一閃。
彼女の剣は一太刀でアンデッドを葬り、魔素へと還してしまうのだった。ボクはその様子を尻餅をつきながら見上げ、完全に虜になってしまっている。
この人は、間違いなく強い。
そう思っていると、彼女は静かにこちらを振り返って言うのだった。
「それで確認するが、キミが私の恩人で相違ないのかな?」
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