1.決意。
「がはっ……! ぐ、う……!?」
強か身体を打ち付けて、ボクはそんな呻き声を上げる。
今の弾みで足をひどく負傷してしまった。鈍い痛みと同時に、動かすと刺すような感覚があって、動かすことができない。仄暗いダンジョンの中で、ボクは這いずりって壁に背を預けた。脂汗がにじみ出ててくる。通常のダンジョンよりも魔素が濃いのか、呼吸も苦しかった。
「くそ、どうして……!」
どうしてボクが、こんな目に遭わなければならないのか。
生まれながらに授かっていた力によって、これまでずっと偏見の目に晒されてきた。それでもどうにか、冒険者としての生活が軌道に乗り始めたと思っていたのに……。
「こんなこと、ないだろ……」
あまりにも悲惨だ。
誰にも認められずに、罪を擦り付けられて死に至るなんて。
許せない気持ちが沸き上がると共に、言い表せないほどの悔しさが生まれた。誰かに対してではなく、何もできない自分に対して。常に人の顔色をうかがって、抑圧されて生きてきた自分にだった。
いま考えれば、なんとも馬鹿らしいのだろう。
だって、そうやって生きてきた結果が、これなのだから……。
「だったら、いっそのこと……!」
ボクはそう思って、ゆっくりと面を上げる。
どうやら、こちらの存在を感じ取った魔物が姿を現したようだった。薄暗い空間に、二体のデーモンが見える。アークデーモンに、もう一方はアンデッドデーモン。前者は強力な魔法弾――【ショット】を放って、冒険者を行動不能に陥れる。後者はその名の通り、高い戦闘能力を持ちながら驚異の再生能力を秘めていた。
彼らは長く鋭い爪を鳴らしながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
それを見据えて、ボクはおもむろに手を前に突き出した。
「もう、誰にも遠慮なんてしない……!!」
そして、そう叫んで自身の力を解放する。
生まれながらに宿っていた呪いのような力を――!
「高密度魔力弾の【ショット】に、死者すら蘇るという再生能力……か」
全身に染み渡っていくような力の流れに、ボクはゆっくりと立ち上がる。
アンデッドデーモンの再生能力で、足の怪我は急速な回復を果たした。デーモンたちは何が起きたのか分からないといった様子で、どこか怯えたようにこちらを見る。
ボクはゆっくりと息をつきながら、眼前の彼らを見た。
そして、
「悪いけど、ボクはもう自重するのを辞めたんだ。……ごめんね」
デーモン二体に対して謝罪しながも、無慈悲に【ショット】を放つ。
高密度な魔力の塊は、狙い過たず彼らの身体を吞み込んだ。己の能力を奪われたデーモンたちには、それを防ぐ術などない。断末魔の叫びを上げながら魔素に還る様を見送りながら、ボクは――。
「これからはもっと好き勝手に、自由に生きてやる……!」
そう、決意を口にするのだった。
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