プロローグ 事件と、濡れ衣。
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「パーティーの資金が盗難に遭った! 犯人はマルスだ!!」
「……え!?」
リーダーがボクを指さすと、メンバーの視線が一気にこちらへ集まった。
いったい何のことか、まるで身に覚えはない。そもそも資金盗難も初耳だし、他のみんなも各々に何事かと把握するので精一杯の様子だった。しかしリーダーと一緒になってボクを糾弾したのは、戦士のダリス。彼は鼻で笑うと、蔑むような視線をこちらに向けてきた。
「こいつしかあり得ないぜ。なにせ、こいつは《グリーダー》だからな」
そして、有無を言わさぬ勢いのままボクの胸倉を掴む。
「どうせパーティーの金も『強奪』したんだろ? 素直に吐けよ!!」
「ち、違う……!!」
ダリスの剣幕に思わず気圧されるが、必死に反論した。
認めてしまえば、そこまでだ。そう思っていると、
「やっぱり、あの噂って本当だったのか……?」
「あぁ……盗人マルスの話、だな」
「信じていたのに……」
他のメンバーも次第に、口々にダリスに同調し始めた。
いまの『盗人マルス』というのは、ボクに付きまとっていた悪評の一つ。生まれながらに持っていた能力のせいで、自分はいままで何度もあらぬ疑いをかけられてきた。
もう慣れてしまったつもりだが、こうやって槍玉に上げられると辛い。
そして、どうやらボクの味方をしてくれる人はいないようだった。
「お前らも納得したようだな。……それじゃあ、罰を決めねぇとな」
「罰、だって……?」
悔しさに唇を噛みながら言うと、ダリスは不敵な笑みを浮かべる。
周囲は首を傾げていたが、どうやら彼とリーダーの間ではもう決定しているようだった。
◆
「こ、こは……?」
「おう、目が覚めたかマルス。ここがお前の墓場だぜ」
そうして、眠りの魔法で意識を奪われたボクが目を覚ます。
するとそこには武骨な岩肌の壁。眼前にある大きな穴からは、不気味な魔物の唸り声が聞こえてきていた。この場所は、噂程度に知っている。だけど――。
「どうして、こんな高難易度ダンジョンに……?」
「あっはっは! 言っただろ、ここがお前の墓場だってよ!!」
どうして、そんな場所に自分はいるのか。
曖昧な思考の中に、ダリスの馬鹿にした笑いが響いた。そして、次第にハッキリとしてきたボクに対して、彼は耳元で囁くようにこう言う。
「冥途の土産に、一つだけ教えてやるよ」
「…………え?」
とても、邪悪な声で。
「お前の噂を流したのも、金を盗んだのも……全部、俺様だよ」
「なっ……!?」
それにボクは、とっさに声を上げようとした。
しかし、さらに先にダリスは――。
「あばよ。……都合の良い捨て駒さん」
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ボクを高難易度ダンジョンへ続く穴へ、突き落とすのだった。
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