六話 自分の価値
投稿遅れてごめんなちゃい★
書くの難しいっ!!現実味が無いと言われたけど、素人の書く小説に現実味を求められても...なるべく知識を調べて書いてるので、間違いがあれば御指摘お願いします。法律とかって書き方が面倒臭いಠ_ʖಠ
監督官の人に連れられて、小会議室に入る。そこには、弁護士バッジを着けた、長身のオジさんが。適当にセットされた髪型、短く生えた無精髭、切れ長の目。司から伝えられた特徴と一致する。手元には書類がごっちゃになっているバインダーが。
「はい、じゃあ面談時間は30分間だから。京極先生、よろしくお願いします。」
「ええ長田監督官。ありがとうございます。」
少年院は、本来三等親までの親族以外の面談は許可されていない。それはどんなに親しい友人であれ、恋仲であれ(婚約している場合は別らしい)、許可されない。一応、在籍中の学校の教員は可能らしいけど、まあお察しの通り、来るわけがない。その中で数少ない例外が一つ。
「それじゃあ自己紹介からやろうか。僕は京極藤士。君の保護司を担当させてもらう。一応弁護士もやってるけど、今回はあんまり関係無いかな。よろしくね。」
「は、はい。木崎淳二、高校一年生の16歳です。よろしくお願いします。」
保護司。加害者の更生を行うために保護観察処分が下った人物につく謂わば監視役。無給故に高齢化と人数の減少が進み、今は殆どの場合高齢の方がつくことになる。ならば何故今回、司の根回しによって選ばれた人が来れているのか?
司曰く、
『磯淵の奴らの保護司をやりたがるジジババなんて居ねぇんだよ。大抵どっかの半グレ集団の奴かバックにそういう組がついてる奴ばっかりだからな。更生なんて最初っから考えらんねぇのさ。そこをウチの組が目ぇ付けたって訳。』
とのこと。
『5日後、俺の保護司、つってもまあウチの組の人なんだけどな。京極藤士って人が来る。先に俺の面談、その後にお前の面談をねじ込む。面談の書類を管理する職員にウチの組の元組員が居るお陰で、無記名の面談届けの後付けが出来るからな。そこで藤士さんとお前を会わせる。そこで藤士さんにお前を認めさせろ。』
「それじゃあ木崎くん。僕が毎回保護司としてついた子にはじめに聞くことがあるんだけど、いいかな?」
「はい、何でもお聞き下さい。」
「そんな畏まらないくても良いけどね....」
最初にさて最後。この人に俺の価値を認めさせ無ければ俺の2年間は無為に消える。この人の言葉の隅々まで、読んで読んで読み切れ。
「今、信じられる人は居る?少年院で出来た友達でも、或いは外で君の出所を待つ人でも、誰でも良いよ。」
「信じられる人、ですか.....」
居ない。これは間違いなく断定できる。『誰も彼も信用しない』、そう答えるのは簡単だ。でも、それでは司の言う『自分を高く売る』ことには繋がらない。そもそもヤクザは職業柄、本当に信用する存在などごく一部に限られてくるだろう。だとすれば───
「...今のところは、心の底から信じられる人は居ません。在り方を買ってる奴は、少年院に一人だけ居ますけど。」
「....なるほど。」
頬杖をついてこちらを見る藤士さんの視線の色が変わったのを感じた。同時に頬杖が外れる。すると目の前の机上に紙切れが放られた。親指大の紙切れには簡潔に一言、
『アピールポイントは?』
と書かれていた。しかし今の俺には筆記用具は無い。それにそもそも、紙切れが小さすぎて筆記用具があっても返答を書き込むのは難しい。頭を巡らせようとした瞬間、藤士さんが質問してくる。
「出所したらどうなりたいの?将来の夢、みたいな。」
「将来の夢、ですか.....」
間違いない。この面談はたった今、面接へと変わった。アピールポイントを聞くと同時に問われた将来の夢、とくれば答え方は───
「要領と思い切りの良さを活かせる仕事、ですかね。特に苦手なこととかは無いですし、かと言って自分から考えて動くような仕事は向かない性格なので、人の元で働くほうが義理立てする主義ですし合うかなと。」
「ふむ.....こりゃまたえらく抽象的な。成る程。」
答えながら後ろに座る監督官に見えないよう紙切れを回収する。藤士さんの目は変わらない。面接は続行ということだろうか。そう思っていると藤士さんが俺の後ろに座る監督官に声を掛けた。
「長田監督官、木崎くんに親御さん達への手紙を書かせて上げたいのですが、宜しいでしょうか?」
「親御さんに、ですか。ええ、構いませんよ。ただ、中身は一応改めさせて頂きますね。」
「ええ、彼が書き終えたらお伝えします。はい、この便箋に親御さんへの手紙を書いてね。」
そう言って渡された便箋には付箋が。よく見ると、便箋は3枚ある。付箋には、
『2、3枚目は回収。身の回りの人間関係を書いて。』
と書かれてある。
『お前の冤罪の話は俺から藤士さんにしとくからな。なんせ、冤罪の立証から始まるスカウトは今までに無い。そもそも面談が30分なんだ。その間に裏の人間としての適性を測るなんて藤士さんでギリ。余計なことを話してる暇は無ぇんだ。お前はちゃんとアピールし続けることだけ考えろ。』
恐らく司に冤罪の話を聞いているのだろう。その上で俺の人間関係を聞きだすとなればそれは──
(合格、ってことか?)
冤罪の立証に協力してくれるという可能性がある。まだ確定ではないにしろ、このチャンスは見逃せない。
思いつく限りの名前を書き出す。家族から友人、クラスメイトや先輩後輩、知る人全てとの関係を書き出す。
「そう言えば、便箋もう1枚あるから他に手紙を書きたい人居たら言ってね。」
みるみる埋まっていく便箋を見ながら、藤士さんがわざとらしく言う。とはいえ、3枚目に突入した辺りでそろそろ名前のストックも無くなってきた。
「ありがとうございます。でも、30分だとちょっと時間的に間に合わないので大丈夫で──」
「そう?それじゃあ長田さん、あと20分位伸ばしてもらえない?君も、そしたら書けるかな。」
「はぁ、まあこの後は特に何か面談が入っているわけでもありませんし構いませんが。」
「───、はい。それじゃあ姉と妹にも書かせてください。」
そうか。敢えて最初に『家族』ではなく『親御さん』という言い方をしたのはこれが理由か。藤士さんが無理矢理にでも2セット目の便箋を渡したがるということは、俺が書く必要のある内容はこれで終わりじゃないということ。
「はい、じゃあ2枚目どーぞ。」
「ありがとうございます。」
手渡された便箋は、2枚重ねになって付箋が貼ってある。付箋に書かれたメッセージは───
『ウチの組でお前が出来ることを書け。唯一性の高いものに限る。』
カタギの俺を最大まで試す内容。藤士さんの居る組が、どんなことをやっているのかは分からない。事前情報は何一つ伝えられていない。そもそも組の名前すら知らないのだ。知っていることといえば司が口を滑らせた臓器販売をしていないということくらい。
(考えろ。ヤクザに必要なものは何だ?)
都合のいい突貫兵?そんなの山ほどいるだろう。違う。脅しの技術?その手のプロがヤクザだろう。違う。
(逆に考えろ。ヤクザの中で希少かつ重要な存在は何────あ。)
繋がる。繋がる。繋がる。司とのやり取りから藤士さんとのやり取り全ての話が繋がる。
(そもそもヤクザになんの縁も無かった外部の人間をスカウトするためにこんな綱渡りをするはずがない。人手を集めるならその手のチンピラを勧誘したほうが圧倒的に安全で人数も集まる。つまり、求められているのはヤクザとしての適性では無い。むしろ───)
そこまで頭を回したタイミングで、藤士さんが口を挟んできた。
「あと15分だけど、木崎くん、大丈夫そうかな?」
「...はい。あと5分ちょっとで書き終わると思います。」
「....えらく早いね。得意なの?そういうの。」
「はい。言いましたよね、要領が良いって。」
「.....へぇ。確かに言葉通りだ。」
恐らく手際の良さなども見られていたのだろう。既に書き終えた関係図を盗み見た藤士さんの顔に薄っすらと笑みが浮かぶ。
「ま、ゆっくり書いてくれて構わないよ。なんせ久しぶりのやり取りだろうし、積もる話もあるだろう。」
「ありがとうございます。」
「京極先生、それ決めるの私です....。」
「ああ、すみません長田監督官。でも別に大丈夫でしょう?」
「まあ時間はありますけども....。」
思えば不可解な点はあった。ただ保護司として少年院に訪れるなら、自分が弁護士だと明かす必要なんて無い。そもそもヤクザが法律的にグレーな存在なのに、その一員に弁護士が居ると知られる危険性すらある。幾ら小会議室で3人だけとはいえ、誰が外で聞き耳を立てているかも分かりはしない。
『そういう組がバックについてる奴らも居る。』
司の話が事実であれば、今回のこれに似たような他の組の面談は幾らでもある可能性が高い。情報収集のために聞き耳を立てるなんてあり得なくはない話だ。そこまでのリスクを負いながら、自分の身分を明かした理由。
(今の組に、自分と同じ存在が欲しいから。)
弁護士、またはそれに準ずる法律家。ヤクザというイリーガルな存在を、法的にサポートする存在。それを求めていると考えられる。
『組を法的に守る弁護士、或いはそれに準ずる法律家になり、組が摘発された場合の法的サポートをする。』
会社の面接じゃない。何を成すかを端的に書く。
「───終わりました。」
「うん。じゃあ回収するね〜。長田監督官、検閲お願いします。」
そう言って回収すると同時に素早く手紙以外の便箋をバインダーに挟み込む。手際の良さが、今まで何人も面接をしてきたであろう経験を物語っている。
「....うん、良いね。ちゃんと反省と感謝を書けている。家族の人達もきっと喜ぶよ。」
「....そうですか。」
しまった。手紙を家族に渡さないでそのまま捨ててもらうようにあっちの便箋2書いておけば良かった。悪気は無いにせよ今の監督官の言葉はあんまり嬉しくない。
「......1年。」
「!!」
「はい?京極先生、何か仰りましたか?」
「いえ、特に何も。じゃあ手紙、返して頂けますか?」
「ああ、すいません。文章がとても良くて。」
1年。藤士さんの口から零れたこの言葉は恐らく───
「はい、じゃあ今日の面談はこれで。本業の方が忙しくなるから、暫くは面談できないけど、最後に質問ある?」
「.....今度、いつ会えますか。」
「....遅くて1年後、かな。」
「───それだけ分かれば大丈夫です。」
冤罪が晴れるまでの期間。俺の冤罪を、一年かけて晴らしてくれる、と解釈して間違い無い。
「そう。じゃあまた会う日まで、しっかり準備してね。少年院には色々あるから、沢山学ぶといい。」
「ありがとうございます。京極さん。」
「うん。じゃ。長田監督官も、ありがとうございました。」
「いえいえ。お忙しい中、こちらこそありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。」
「どうも。それではまた。」
1年間。ヤクザのお付き法律家として少年院を出るための準備をするための期間。
「....監督官。」
「....なんだ木崎。」
ならば俺がするべきは1つ。
「法律関連の参考書とか、少年院にありますか?」
組の役に立つ知識を、可能な限り蓄える。冤罪が晴れた後に、組に恩義を示すために。
中々無理やり感の凄い内容になった気がしてる...てか過去編長くない?(おまいう)
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