四話 野郎を抱く趣味?
シリアスを書き続けようとするとモチベーションが続かない症候群にかかってしまっているの...誰が助けて(*﹏*;)
少年院初日にして、名前と歳しか知らない男の前で泣き腫らした俺は、落ち着いてから物凄い羞恥心に襲われていた。
「落ち着いたか?」
「....忘れてくれ。」
「忘れようにも俺の背中が色々とグッチャグチャだからなぁ。」
「そ、それは悪かった。何か詫びを───」
「別に構わねぇよ。ネンショー来て一日目で号泣とかいう面白ぇモンの代償だと思えば安いもんだ。」
「思い出させないでくれよ....。」
「へへっ、いいツラした野郎が弱ってんの面白っ。」
「趣味悪....。」
とはいえ司のお陰でかなり気持ちは楽になった。恐らくここで司に会わなければ、いずれ俺は壊れていたかもしれない。
「....ありがとう。司。」
ポツリと、ただしっかりと感謝を零す。
「....え?急に名前呼び?てか、いきなり感謝とか気持ち悪いんだが?」
「....やっぱなし。」
「冗談だよぉ~!嬉しいぜぇ?どーいたしまして淳二ぃ。」
ニマニマしながら肩を組んでくる司。うっとおしいと思い腕を外そうとしても、上手く絡め取られて離れない。
「う、うっとおしい!」
「良いだろぉ〜ん?相談に乗ってやった分仲良くしてくれよ!───なぁ淳二、俺、なんだかお前のこと───」
「俺に男の趣味は無いっ!!というかお前もさっき野郎を抱く趣味なんか無いって言ってただろうが!」
「撤回するよ...お前みたいな色男なら、良いかもな。か弱いところも見れた訳だしな?」
「き、キモイキモイキモイっ!!離れろぉ!!」
貞操の危険を感じて、全力で振りほどこうとするが、ガッチリ組まれた肩は気付けば抱き込むように回されて外そうにも外れない。
「連れないこと言うなよ....野郎を抱くのは初めてだけど、優しくしてやるよ。」
「い、嫌だっ!相談料が割に合わなさ過ぎるだろッ!!」
そう言う間にも、司の顔は迫ってくる。最早逃げ場を失い、拘束も解けない。
───サヨナラ、俺の後ろの童貞....
諦めて目を瞑り、いつか来る司の唇に備え───
「ぶっ、ぶはははは!!」
「....ぁ?」
たその唇は来ることはなかった。
「ぶはっ!ぶふっ、はぁ~!やっべぇマジで面白ぇ!!ぶはっ!は、ははっ!はひーっ!!い、息出来ねぇ!!ぶぁっははは!!」
「.......おい。」
「あっは!ははは!!ぶっはは!!はぁ~っ!あー、悪い悪い、...ぐふっ、駄目だ、笑い止まんねぇ...ぶははっ!」
いつの間にか解かれた肩。傍らでは司が転げ回って笑い続けている。
(.....絵美とのやり取りみたいだな。)
いつだったか、気色は違えど絵美にこんなふうにからかわれたことを思い出す。そして同時に、生まれてからずっと一緒だった彼女は司と違って信じてくれなかったという事実も。
「....オイタが過ぎるんじゃないかな、司。」
「あひっ!あっはぁ!....は?」
転げ回る司に覆い被さるように、床に腕をつく。
「お、おい。淳二?なんか、近くね?てか、これ体勢あんましよろしくねぇ気が───」
「───お仕置き、しちゃおうかな。」
「.....ッ!?」
立場が逆転し、急に慌てだす司の言葉を遮り、寝そべる司の顔を撫でながら人生で初めての渾身のイケボ(笑)を出す。思いの外効果があったのか、司の顔が真っ赤になる。
(....コイツもしかして───)
「チェリーなくせにあんなコトをした司くんには、優しく出来ないかなぁ.....」
「にゃ!?何でテメ.....おっ、俺が....!」
図星だったのか。こう見ると、司は小動物みたいな顔立ちをしてるし、意外と責められるのに弱いのかもしれない。まぁお互い童貞なのも分かったことだし、からかうのもここまでにしよう。
「プッ、やり返し大成功〜!いやぁ~、お顔が真っ赤な司、面白かったなぁ!」
「ぐっ、テメェ.....かなりドキッとさせやがって!!」
「ま、これでおあいこだろ?相談料はまた別のところで───」
「性癖歪んだらテメェのせいだからな!!」
「えぇ....?そこまでだったの?」
「む、無自覚で顔が良いって罪だな....。てか、雰囲気づくり上手過ぎるだろ!!ホントに童貞か!?」
「BLオタクが身近に居たからなぁ.....。」
かつて家族だった姉妹が頭に浮かぶ。涎を垂らしながらBL本の濡れ場を読んでた姿は最早異形の怪物のようだった。もう縁も切られてただの他人だが。
「お前、大丈夫そ?男でしか勃たないとか言うなよ?」
「大丈夫....だと思うぞ?だって今さっきは勃たなかったし。」
「たりめぇだ!!アレで勃ってたらお前ガチのやべぇ奴だよ!!」
「俺の性癖はママみのあるお姉さんと黒タイツだから、多分問題無い....はず。」
「性癖聞いてねぇよ!!てか最後に『はず』って付けんじゃねぇ!!不穏だ!!」
「しーっ、監督官が来るかも知れないだろ。静かにしようぜ、司。」
「んでテメェが先輩風吹かしてっ....はぁ、まあ良い。吹っ切れたみてぇだな。」
「司のお陰で、な。」
性癖を明かして軽口を叩きながらふざけられる程度にはマシになった。
「....2年間、無駄に過ごすわけにも行かないからな。やれることは何でもやるつもりだよ。」
「随分といい顔になってきたじゃねぇの。うし!ちと手伝ってやるか!」
「...何をだよ。少年院での立ち回り方か?」
「ま、それもある。けどお前、冤罪なんだろ?」
「あ、ああ。でもそれがどうかしたのか?」
「───冤罪を証明出来る手段があるって言ったら、どうする?」
そういう司の顔は、イタズラを考える子供のように見えながら、どこか常人とはかけ離れた凄みがあった。
「......聞かせてくれ。その話。」
「そうこなくっちゃあな!」
いち早く冤罪を証明して、少年院を出る。新しい目標が、設定された。
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淳二の性癖はワシのなんじゃよ。
司には『スゴ味』があるッ!!