三話 本当の俺を
短いよねぇ.....書き溜めする時間が欲しいわぁ〜❤
自己紹介をされておいて黙っているのもおかしな話だと思い、端的に名前と歳だけ伝える。
「.....木崎淳二。15。」
「おいおい、愛想悪いなぁ。淳二でいいか?」
「別にどう呼ばれようと構わない。」
その男の第一印象は、一言で言えば軽薄そのものだった。少年院の規則で坊主にはされているものの、間違いなく遊んでいたであろう金髪、耳だけでなく口元や鼻にも開けられているピアス。まさに『遊び人』という見た目をしている。口調も軽薄さを体現していて、間延びしたその喋り方はあまり良い印象を感じなかった。
「じゃ淳二で。なぁ淳二、お前何でネンショー入りになった訳?聞いても良き?」
まだ名前と歳しかお互いのことを知らないのに、いきなりとんでもないプライベートゾーンに土足で踏み込んで来るのも、見た目通りの行動だった。
「.....強姦未遂だよ。」
「ふ〜ん.....えっ?」
それでも、少年院という新たな環境で生きていくに当たって自分に着せられた強姦未遂という濡れ衣の内容は一人で生きるという自分の目的の為には丁度いい武器だった。
(未遂とはいえ強姦野郎だなんて知れば自然と離れてくだろ。)
その時点で、俺はこの磯淵少年院に入れられる人間のレベルを測り間違えていた。
「強姦未遂で磯淵かぁ。珍しいなお前。どんだけ裁判官に悪印象持たれたんだ?」
「───は?」
その司の発言を聞いた瞬間、俺は耳を疑った。未遂とはいえ強姦なのだ。それがさもそこまでの罪ではないかのように言う司に、思考がフリーズした。
「強姦、なんだぞ?俺は女に暴力を振って、犯そうと──」
「んなくれぇ武勇伝みたいに語ってる奴、此処には腐るほど居るっての。お前、ホントに悪い奴か?」
本当に悪い奴なのか。その言葉を、その疑いを、たった数回のやり取りで持ててしまう。目の前の男は、初めて会ったはずの俺を早くも見透かそうとしていた。
「少なくとも未遂の強姦で磯淵に2年間とか、自慢話として裁判所で鼻高々と演説でもしねぇとあり得ねぇよ。その割にお前、レイプしたこと自慢しねぇし。お前ホントにやったの?冤罪じゃね?」
誰も彼も、信じてくれと言っても信じてくれなかった。あれほど慕ってくれたクラスの仲間でさえ、長年を共に過ごした幼馴染でさえ、生まれてからずっと一緒にいた家族でさえ信じてくれなかったのに。この眼の前の男は、たった数回のやり取りで本当の俺を見てくれている。
「どうして、お前はそう思えるんだよ.....!」
「んぁ?俺ぁネンショー歴長いからよぉ。ホントに悪い奴と、ホントは良い奴の違いはそれなりに見分けられるつもりだぜ?」
そう思った瞬間、まだ名前と歳しか知らない、軽薄な印象もあんまり好きじゃない、そんな男の前なのに、不覚にも涙が止まらなかった。
「だ、誰も、信じてくれなかっだ!俺は!!やっでないのにっ!!」
「.....そうか。そりゃ、辛かったよな。」
あって数分の男は、俺を完全に溶かしてみせた。司との出会いは、今まで張り詰めるしかなかった俺の精神が限界を迎える前にすべてを見抜き、俺を救ってくれた。
「うっ、うぅ....」
「ほら、あんましうるせぇと大人が来るぞ。お前が女なら抱きしめてやったかもしんねぇけど、野郎を抱きしめる趣味はねぇから背中にでも引っ付いてろ。」
「あり、がどうぅ....」
司は、高校生とは思えないほど惨めに泣き腫らす俺を馬鹿にすることもなく、淡々と対応してくれた。冤罪をかけられてから約3ヶ月間。限界まで張り詰めていた俺の心はやっと開放された気がした。
前の話に誤字修正をしてくださった方、ありがとうございます。遅筆な上にミスとかアホですね☆レビューや感想、お待ちしてます!