二話 凋落は驚くほど早く
書き溜めてないので短い.....毎日投稿してる人達尊敬する(ʘᗩʘ’)
俺の平穏は、薄氷のを踏むような、そんな薄っぺらいものだった。
「淳二、おはよ。」
「おはよう、絵美。」
「寝癖ハネてるよ。」
「へ!?どこが!?」
慌てて頭をペタペタ触ると、その俺の様子を見ながら俺の幼馴染である伊藤絵美が吹き出した。
「プッ、アッハハハ!!はぁ~、冗談だよ冗談。...ブフッ、あ~面白かった!」
「酷くない?」
「ごめんごめん、ちょっとからかいたくなって。やっぱり淳二と一緒にいると楽し。」
俺と絵美は、物心つく前から両親の付き合いもあって一緒に居た。周りからはお似合いだ夫婦だと茶化されていて、言われるたびにただの幼馴染だと否定していたけど、内心嬉しかった。絵美がどう思っていたのかは分からない。それでも、将来結婚するなら絵美しかいないと思うくらいには好きだった。
「触らないでっ!!」
だから、冤罪をかけられた時も、絵美なら信じてくれると思ったのに。
「淳二がそんなことするような人だと思わなかった!最低だよ!!もう一生顔も合わせたくない!」
「ま、待ってくれよ!冤罪で──」
「証言だってあるのに!?まだ騙そうとしてるの?そうやって私にも乱暴するつもり?」
「ちが....信じてくれよ!なぁ!幼馴染だろ!」
「淳二の幼馴染なんて、もう身震いするわ。金輪際私に関わらないで!」
今思っても、証言するような人間が居ない路地裏だったし、証言者だった奴らも被害者のフリをしていた女の知り合いばかりだった。信憑性なんて欠片もなかった。だからすぐにでも冤罪は晴れるはずだと、そう信じていた。
「アンタなんかうちの子じゃないわ!」
「本当に....なんてことをしたんだ!」
「お兄ちゃんさいってー。ホント、こんなのがお兄ちゃんだったとかマジ無理なんだけど。」
「淳二、弟としての縁は切らせてもらうわね。金輪際私の弟を名乗らないでくれる?」
冤罪は晴れなかった。警察は身内で固められた証言者達の虚偽の証言を鵜呑みにして、早期解決だけを念頭に俺を犯人だと決めつけて掛かった。示談金を提示されていたが、家族は俺を縁切りした。両親は自分達の顔に泥を塗った親不孝者だと罵り、妹は気持ち悪いと俺を一蹴し、姉は弟としての縁を切るとまで言ってみせた。一番近いはずの家族でさえ、俺を信じることはなかった。
「木崎くん。今回の一件は、我が校としても見過ごせない。とはいえ、君は優秀な生徒だった。だからこそ、少年院で更生してくれると信じている。停学扱いで済ませよう。期限を終えて戻って来たとき、君が心を入れ替えてくれていることを祈るよ。」
そんな温情あふれるフリをした校長の言葉も、俺の憎悪を掻き立てる以外の効果は無かった。もうどうでもいい。俺の頭にあったのはこの場所から抜け出すことだけだった。
『レイプ魔!さっさと死ね!!』
『被った猫の中はゴミだったね。何で生きてんの?』
『害悪!この世から消えろ!!』
『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』『死ね!』
クラスグループも、個人チャットにも、俺を慕ってくれたはずの奴らが皆掌を返して俺を責立てる。誰一人俺の無実を信じる人は居ない。
「被告人、判決前に言いたいことはありますか?」
「.....俺は、やってません。それだけです。」
「成る程。では判決を言い渡す!被告人、木崎淳二は2年間の少年院送致!」
親に見限られた俺に、弁護人がつくことはなく、争う気力などとうに無かった俺はその判決を受け入れる他なかった。しかし、それと同時に何とも言えない開放感があった。
『これで、誰も彼も俺を信じないあの場所を抜け出せる。自由だ。』
少なくとも少年院は、今いる地獄より幾分マシに見えた。だから、2年間の収監期間に出来るだけ独り立ち出来るように計画を考えていた。そんな時、アイツに出会った。
「よう、新入り。お前、いい目してんな。」
「.....誰だ、お前。」
「おいおい、ネンショーじゃあ俺の方が先輩だぜ?」
「──どうせ全員脛に傷を持つ奴らなんだ。敬意もクソも無い。」
「あっはぁ!お前、ガチで面白いな!!俺、京極司!16だ!よろしくな!!」
俺の新しい居場所を見つけた、そのキッカケになった男と。
過去編はあんまり深く掘り下げないつもりです。主人公の心情の変遷さえ書ければ話が繋がるので....
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