間章 拭えない過去
本編じゃなくて間話続きじゃない!!って激おこプンプン丸のそこのあなた!大変申し訳ございません!!次は本編だから!絶対本編だから!!
純粋な悪人など存在しない、性善説。そんなものを信じる人間は馬鹿だ。往々にして完全な悪人は存在する。磯淵少年院にいる奴らなんて大抵がそうだ。
『〇〇高の誰々をボコボコにしてやった。』
『△△組の下っ端共をメタメタにしてやった。』
『何人もの女を食い物にしてやった。』
『ジジババ共から金を吸い上げてやった。』
聞こうと思わなくとも耳に入る、声高に、そして自慢げに披露される醜聞な行為。英雄譚じみた口調で語られるそれは、本当に聞くに堪えない。
「───全員死ねばいいのに。」
何度もそう思った。こんな社会のゴミを生かしている理由が何処にあるのかと。でも俺には奴らを糾弾する権利なんてない。
『待ってっ司っ!!こっ、殺さないでっ!!』
───黙れ。
『謝るっ!!今までのこと全部謝るっ!!』
────今更遅いんだよ、クズが。
『これからはちゃんとするっ!あなたのしたいことなら何でもさせてあげる!!ちゃんとした親に──』
───ぐしゃり。
今もこびりついて離れない、岩で肉を潰す感覚。体を垂れ落ちる生温い血の感覚。完全に潰れ、物言わぬ骸となった親だった何か。
どんな理由があろうと、少年院に来る奴らはほぼ確実に『悪人』だ。自分の犯した罪は、どんな理由があっても許されないから刑務所や少年院に入ることになる。淳二のような例外こそあれど、罪を犯してしまえばそこにあるのは『咎人』という不名誉な烙印だけ。
「藤士兄。母さんは───」
「まだ目は覚めてねぇ。ずっと意識のないまんまだ。」
「そう、か。」
唯一の肉親である兄貴は何も言わない。『親殺し』なんてとんでもない重罪を犯した俺を責めることも励ますことも無く、ただただ月に2回面談に来る。俺に与えた『役割』を全うさせる為だけに。
『木崎淳二、強姦冤罪でネンショー2年。頭は相当回る。口八丁も上手く適性アリ。覚悟も決まってる。』
小指サイズのメモ書きを机に放る。後ろの監督官に気付かれないように兄貴がそれを回収すれば、それで終わり。
「───次は、いつ来るんだっけ。」
「さぁな。これから忙しくなるかも知れないし、そうじゃないかも知れない。分かりゃしねぇよ、そんなモン。」
「そっか。────じゃ、また。」
「おお、また今度。」
それだけ。血の繋がりも、兄弟としての絆も、何もかも感じない。俺が犯した親殺しが作った全て。
後悔しているか、と聞かれれば微妙だ。少なくとも、兄貴が家を出た後の母親は見るに堪えなかった。でも、兄貴が家を出るまではそうじゃなかった。
───俺が、悪かったんじゃないのか?
芽生えた疑念は覆されることも、真実だと叩きつけられることも無いまま俺の中で燻り続けている。だから俺は、少年院にいる社会のゴミの一員だと思い込む。その方が楽だから。
はい、司の過去ということでね。う~ん激重!やっぱりシリアスからしか得られない栄養分ってあると思うのヨ。シリアス続きで耐えられないわ!って方は、並行して書いているこちらの作品を読んでみては如何でしょうか!
↓再会 ~俺、もう生徒じゃありません~
https://ncode.syosetu.com/n7443id/
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