一話 新たな居場所
初投稿一話目!とにかくざまぁとか後悔系の作品をもっと増やしたい。ヤクザって言ってもライトだよ。(作者のイメージ)
少年院の門戸をくぐる。1年ぶりの外の空気は、少年院より黒く澱んでいる気がする。
「よぉ、淳二。半年ぶりか。」
「そう、ですね。お久し振りです京極さん。そしてこれからお世話になります。」
待ってくれていたのは京極藤士さん。少年院に居た頃の俺を拾ってくれた『木々背組』のNo.4。両親ではない。あのゴミ共の元へは一生帰ることはないと心に決めている。
「はっ、堅苦しいこって。まあなんだ、冤罪が認められて良かったな。なんか旨いもんでも食いに行くか?」
「.....久々に、ラーメンが食べたいです。二郎系の。」
「ぶっはは!そうか!意外と細っこい癖して良いもん選ぶじゃねぇの。親父との顔合わせにはまだ時間もあるし、良いぜ、行くか二郎系!」
俺は木崎淳二。強姦冤罪によって、家族、友人、幼馴染、全てを失った男。二度とあの薄氷を踏むような日常に戻りはしない。今の俺にあるのは京極さん達、『木々背組』への恩義と忠誠だけだ。
「大将!やってるか!」
「うるっせぇなぁ京。立て看板出てんだろ。ん?誰だそのガキ。」
「今日からうちの組に入るんだ。ネンショー上がりの頭のキレる中々の野郎だぜ。」
「木崎淳二です。初めまして。」
「ケッ、細っこい癖に木々背組に入んのかよ。野垂れ死なねぇといいけどな。」
「少年院では負け無しだったので簡単には野垂れ死なないかと。」
「あぁ?偉そうな口聞くじゃねぇか。お前、何処のネンショー居たんだぁ?」
「辞めとけ大将。コイツのネンショーは磯淵だぞ?」
「.....ほぉ?見かけによらず中々やるじゃねえの。」
「頭もキレて腕っぷしも相当やる。コイツぁきっと上に行く。何より、コイツには原動力があるからな。」
「京がそこまで言うたぁやるでねぇの。ネンショーに入った理由は?」
「冤罪です。強姦未遂罪の。」
「.....あ?ってこたぁお前、カタギだったってことか?」
「はい。ですがもう二度と戻るつもりはありません。」
「そいつぁオススメしねぇぞ?親御さんも──」
「アレは俺の親じゃない。友達だと思っていた奴らも、仲のいい兄妹だと思ってたアイツらも、信じあってたと思ってた幼馴染も、誰も彼も俺のことを信じなかった。そんな場所に用はない。」
「.....なるほど。ソイツが京の言うお前の原動力とやらか。コイツは確かに上に行くかもなぁ。」
「だろ?ほら、淳二。何でもいいから頼めや。幾らでも奢ってやるぞ!ネンショー上がり記念だ!」
「ちっ、京の奢りなら俺がサービス出来ねぇじゃねえか!ソフトドリンク無料にしてやらァ!飲みまくれよ!」
やはり、暖かい。俺が信じられる居場所は、ここにしかない。
「ありがとうございます大将さん、京極さん、ご馳走になります。」
「おぅ!好きなだけ食え!」
それから1時間程ラーメンを食べながら談笑した。俺の生い立ちから始まり、京極さんとの出会い。そして、これからの話。
「ご馳走様でした。本当に美味しかったです。普通の二郎系にアレンジが入っていて。今度また食べに来ますね。」
「おう!いつでも来やがれ!木曜祝日以外ならいつでもやってっからよ!」
「営業時間外に行くと手伝わされるぞ。」
「京!余計なこと言うんじゃねぇ!ま、手が足りねえ時に来てくれっと助かるのはホントだがなぁ。」
「フフッ、それじゃあ時間がある時に手伝いに来ますよ。」
「かーっ!人が出来てやがらぁ!京も見習いやがれ!」
「余計なお世話だっての。んじゃ、また今度な。」
「おう!また来いよ京!あ、淳二。ちょっと待て。お前に一個だけアドバイスをやるよ。木々背組の親父と付き合うときのな。」
「....ありがとうございます。」
「元組員の俺から言うこたぁ唯一つ。『物怖じしねぇこと』だ。親父は強気な奴ほど気に入る。ただ──」
「無礼と強気を履き違えるな、ってことですか。」
「けーっ!最後まで言わせろぉ!察しが良すぎんだよお前!」
「ありがとうございます。肝に命じておきます。」
「な~にやってんだ淳二ぃ!車出すぞ〜!」
「はい!すぐ行きます!」
京極さんの愛車のアウディに乗り込む。
「んじゃ、行くか。木々背組事務所!」
「はい。お願いします。」
俺を信じてくれる人がいる場所こそ、俺の居場所だ。二度と誰も信じてくれなかったあの場所に、戻りはしない。
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