合コン?
じゃあね!と言いたいことを言って嵐のように去って行く麗。
「面白いね、優のお姉さん」
「ごめんね、慌ただしくて」
麗は相変わらずのマイペースだが、健太郎が面白がってくれて安心した。
「全然。3姉妹なんだっけ?」
「姉と妹がいるよ」
「楽しそう」
「うん。」
「あんまり似てないね」
「う、うん、よく言われる」
鉛でも落とされたように、胸の辺りが重くなる。
それに気付かないフリをして、優は話題を変えた。
「健太郎は、1人なの?誰か友達とか」
「けーんたろ!何処に行ったかと思ったら。どちらさん?」
「和也」
ひょこっと健太郎の後ろから顔を出したのは、黒髪で気だるげな話し方をする男の人。
和也と呼ばれたその人は、健太郎の友達なのだろう。
チャラそう、というのが和也の第一印象だ。
「あ、わかった、先週行った合コンで会った子だ?」
「待っ…彼女!だから!」
グイっと優の肩を抱き寄せ、和也の言葉を否定する。
そしてハッとして向き直って優の両肩を掴んだ。
「優、それはその、違くて、いや違わないんだけど、人数合わせでどうしてもって言うから!別に誰とも連絡取ってないし…許可取るのも気を遣わせるかと…」
「人数合わせなら仕方ないよね。」
珍しく慌てる様子の健太郎がおかしくて思わず笑ってしまうと、健太郎の表情は曇った。
「…うん…ちょっとくらい怒ってくれても…」
「あ、そか。うーんと…次から行くときはちゃんと教えて?」
「あー…ハイ」
声を殺して笑っていたのは和也だ。
「模範解答だな〜」
「和也、やめろよ…今のわざとだろ。勘弁してよ」
「やだなーそんな悪趣味じゃないって。」
「性格悪いな」
ニヤニヤと楽しそうな和也。
いつもより、話し方の雑な健太郎。
これだけで、2人の仲の良さが伺える。
「優、一応紹介するけど、和也は小学校からの腐れ縁で、今大学が同じ」
「優ちゃん、よろしくね」
「澤村優です。よろしくお願いします」
よろしくねと手をヒラヒラさせる和也は、やはり軽そうな印象だ。
「優はこの後どうすんの?」
「今日バイトだから、このまま行くよ」
「そっか。じゃあ俺たち買う物あるから」
行くぞと、健太郎は和也の背中を押す。
「ハイハイー。じゃあね、優ちゃん。また今度お茶でもー」
「和也、怒るよ」
「きゃーこわーい」
ポンポンとテンポ良くやりとりする2人。
「ごめんね、優。また明日バイトで!」
「うん、健太郎、和也くん、またね」
今日はいつもと違う健太郎がたくさん見れる日だ。
優はなんだかそれが嬉しかった。