バイト仲間と
「ほーほー。やぁーーっと付き合ったんですねぇ」
バイトの休憩中、賄いのパスタをフォークにクルクル巻きつけながら、後輩は感慨深そうに言った。
「え、みっちゃん、やっとって。」
バイト先に付き合ってることはわざわざ言わなくていいと思ったが、健太郎が「みっちゃんにはいろいろ相談したから」と、バイトの後輩である「みっちゃん」こと、みのりには付き合ったことを伝えた。
「やっとはやっとですよぉーーー!こんなに仲良いのに、全然進展しないからヤキモキしてましたーー!!!」
「う、うそ…」
「もういくら世話焼きたいとおもったこと!けど絶対健太郎さんはそういうの嫌がるじゃないですかぁ。だから我慢してたんですよ!」
「えええ…」
「お似合いな2人なので、付き合ってくれてうれしーーー!!」
きゃーと盛り上がっているみのり。
全く。本当に、全く、気付かなかったのだ。
「ええっと、みっちゃん。いつから知って…?」
「えー?いつだろ。あたしがバイトに入った時にはもう、好きなんだなーと思ってましたよ」
「そ、そう」
「最初は優さんが交わしてるのかと思いましたけどね?まあ、優さんのガードが堅いのは健太郎さんに対してだけじゃないのもすぐわかりましたけど」
ーーー交わす?私が?いつ?
みのりの言うことが、あまり理解できなかった。
どういうことか訊こうとしたところで休憩室にチーフが入ってきた。
「チーーフ!優さんと健太郎さん、ついに付き合ったって!!」
「わー!みっちゃん、待っ…」
「おお、そうなのか。ついにね。よかったなー」
休憩室に入ってきたチーフにまで、みのりは話してしまった。止める間もなく。
かくして、バイト先のスタッフ公認の仲になったのである。
◇◆◇
「あはははは!みっちゃんらしいね」
「ご、ごめん…」
「いいよ、俺は別に隠さなくていいと思ってたし。」
帰り道、休憩中の出来事を健太郎に伝えると、健太郎は何でもないことのように笑った。
「真面目に仕事すれば問題ないでしょ」
「そう、だよね」
優はあまり、周りには言いたくなかった。
麗と愛にも、バイト先にも。
言えば言っただけ、別れたとき惨めになるなと、思ってしまったのだ。
みのりの話を信じるなら、健太郎は前々から優のことが好きだったことになる。
麗や愛ならまだしも、と、どうしても考えてしまう。
ーーー私のこと、いつから好きだったの?
聞きたい気がしたが、聞いてしまうのは怖い気もした。