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健太郎の隣は居心地がいい。


「映画よかったねー」

「よかった。まさか主人公が最後さぁ」

「あれはびっくりしたね。」


スタッフとして一緒に働いている期間が長いから、人となりは知っている。

付き合うとは言っても、何かが変わった感じもしなかった。


「お昼どうしようか」

「んー、この辺だとパスタか和食は?鉄板焼きはちょっと遠いし。健太郎は何食べたい?」


優が指折りお店を挙げてみるが、健太郎は苦笑い。


「俺が聞いてんだけど。俺にまで遠慮しなくていい。遠くてもいいよ。優は何食べたいの。」


優は言葉に詰まった。

行きたいところと言われても、何も思い浮かべられないのだ。

強いて言うなら、


「…健太郎の、行きたいところに行きたい」


優が他人を優先させるのは遠慮や気遣いじゃない。生まれてからずっと培われてきたある種のアイデンティティだ。


どの店で食事するか揉めれば、麗と愛の食べたいものを聞いて近くにあるお店を頭の中に思い浮かべて折衷案を出す。

ケーキを食べに行けば即断即決の麗と、優柔不断に迷い続ける愛の仲裁に入りつつ、二人と違うものを頼んで一口ずつ味見をし合う。選ぶのは愛が二択まで絞って選ばなかった方。

それでよかったのだ、澤村家では。それで、円滑に進む。


「んーー」


健太郎は少し考え込む。


「中華とハンバーガーなら?」

「へ?」

「どっち?」

「えーっと、ハンバーガー、かな?」

「ハンバーガーと和食なら?」

「和食かな」

「和食と蕎麦なら?」

「和食、かな?」

「じゃあ和食にしよ」

「えっ」

「俺の食べたいものの中で、優が食べたいもの。いいでしょ?」


じゃあこっち、と、健太郎は優を促した。



困る。非常に困る。


映画のチケットを買うときも、飲み物を買うときも、食べ物を選ぶときも。

強引でいて、気を遣わないように、でも萎縮しないように先回りされる。


そして、それを楽しい、嬉しいと思ってしまう。


完全に健太郎のペースだ。


困った。


ーーー何、に?





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