side みのり
男が放っておかないだろうに。
と、思うのは同性だからなのか。
「彼氏?いない、いない。みっちゃんは?」
謙遜ではなく、「いるわけないでしょ私なんかに」というニュアンスで手を振る優。
テキパキと、そして丁寧に仕事をこなし、後輩へのフォローもマメだ。
困っているとフォローをしてくれるのはほとんど優だった。次点で健太郎。
お店のみんなが冷たいわけではなく、優の人が困っているときの察知能力が高いんだと思う。
なんでそんな自己評価が低いんだろうと思っていた。
チーフやバイト仲間からの信頼とギャップがある気がする。
健太郎は片想いと言っていたが、優も健太郎のことが好きだと思うのだ。
普段の反応を見ている限り。
あからさまな態度ではないが、健太郎は優を好きなことを隠していない。
あまり仲良くなければ気付かないかもしれないが、チーフや長年一緒に働いているスタッフはだいたい察しているように思う。
だからこそ、優がそれに気付いていないのが不思議だった。
そして、お店に遊びに来た優の姉妹を見て、納得した。
ああなるほどねと。
姉妹と仲良いことは会話から察しても、どういう人なのか掴めなかったのはそういうことだ。
派手な姉と妹だ。
華やか。容姿も、おそらく能力もずば抜けている。
優も一般的に言えば整った顔立ちだと思うが、派手さはない。
さらに言うと、性格の良さ補正で可愛く見えるタイプという感じ。
面倒見のよさや要領のよさ、フォローのきめ細かさ、人当たりのよさ。
優のよさは、姉と妹のそれと比べると、地味なのかもしれない。
勘の良さゆえに、物心つく頃からいろんな恋愛のキューピッドになったりとか気を遣ったりとかしてきたみのりだが、
「健太郎さんと優さんは上手くいってほしいなぁ〜」
こんなこと思うのは珍しかった。
おそらく健太郎が押し切る形で付き合ったのだろうが、その報告も嬉しかったし、帰る2人が手を繋いだり、優が照れたように赤くなったりしているのを見るのも、ニヤニヤしながら応援していた。
優本人が、自信を持てればいいんだろうが、こればっかりは、本人の問題だ。
おそらくみのりが何かを言ったところで変わるものでもない。
だから、ヤキモキするのだが。
とりあえず、
「健太郎は、私より、みっちゃんと仲良いと思ってたんだけど」
という的外れな一点だけは、似たような片想いをしているある種同盟みたいなアレなので、気が遠くなる思いで全力で否定しておいた。




