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イルミネーション


「愛ちゃん面白いな」


その事を健太郎に伝えると、健太郎は堪えきれずに笑っていた。


「いやー愛ちゃんは本当に優のこと大好きだよね。」

「そうみたいだね…」

「初めて会ったときから思ってたけど」

「初めてって…うちで夕飯食べてったとき?」

「そうそう。めっちゃ睨まれたもん俺」


健太郎の言う通り、愛は初めツンケンしていた。いつの間にやら、健太郎が手懐けていたが。


「『優ちゃんのこと本気で好きなの?ほんとに大事にしてくれる!?優ちゃん泣かせたら許さないから!!』って」

「え!愛そんなこと言ってたの!?ごめん」

「麗さんにもめっちゃ試されてる感じあったし」


青ざめる優。

なのに健太郎は楽しそうに続ける。


「優らしいなって思った」

「私らしい?」

「うん。優のために、優以上に周りの人が心配してくれる感じ」

「私、そういう感じ?」

「周り優先で自分のこと後回しでしょ。だからいざっていうときに周りが本気で守ってくれる」


うるっと目頭が熱くなって、ありがたいね、と呟いた。



クリスマスデート。とは言うものの、イタリアンのお店はクリスマスやら忘年会やらで書き入れ時だ。


クリスマスの翌日なら迷惑かけなくて休みやすいし、イルミネーションも空いてそうだしと提案したのは優だ。


「イルミネーションも空いてていいねー」


イルミネーションの見えるベンチに優を座らせて、隣に腰掛けながら健太郎が言う。


キラキラと頭上をイルミネーションが煌めく。


「はい、優、メリークリスマス」


健太郎がプレゼントを差し出す。


「え、えっ!?2つも!?」

「この前のあれで、愛ちゃんと選んだプレゼントあげられませんって。でも持ってるわけにもいかないからもらって。」

「いいのに…」

「まあまあ。こっちがね、愛ちゃんと選んだプレゼントね。愛ちゃんからのプレゼントだと思って」


そう言われては、優も断れない。


「ありがとう。開けるね?」

「どうぞ」


口では言ったものの、優はその気遣いが嬉しかった。

愛と選んだというのは赤のサンタ柄の包装紙に緑のリボンがかけられている。

優は丁寧にリボンを解き、包装紙を剥がしていく。


「わ、これ欲しかったの」


中から出てきたのは、可愛らしいシルエットのフレグランスランプだ。

モザイクガラスのランプは、全体的に淡いピンク色。光の加減で白っぽくも見える。

香りはリリーとジャスミンだ。


「ジャスミンの香り、好きなの。嬉しい。部屋に置くね」


箱から出して大事そうに両手で持って眺める優。


「よかった、気に入ってくれたみたいで。流石愛ちゃん。」


選んだのは愛だが、フレグランスランプがいいんじゃないかと提案したのは麗だそうだ。麗と愛が優の欲しいものを覚えていたことにも感動した。


「で、こっちが俺から」


白の包装紙に赤を金色で縁取ったリボンかかけられている。

こちらもスルスルとリボンを解いていく。


縦長の小箱の中から出てきたのは、小さく輝く、


「ネックレス?」


チェーンの真ん中にはバラを模ったネックレスが座っていた。

散りばめられた何種類かの色の石は、イルミネーションの光を浴びてキラキラしている。


「可愛い」

「うん、優に似合うかと思って。」


着けてみてよと健太郎に促されるまま、優はネックレスを手に取る。

うまくつけられないでいると、抱きしめられるように腕を回されて、健太郎が止めてくれた。


「ありがと」

「ん、イメージ通り。似合う。可愛い。」

「も、すぐそういうこと…!」


照れて赤くなる優を見て、健太郎は満足気だ。


健太郎にはマフラーをプレゼントした。

いつも首元が寒そうだから、ライトグレーのニットのマフラー。今日も着ているチャコールのコートにも合わせやすいだろう。


「嬉しい。優からの初プレゼントだ」

「そうだっけ」

「そうだよ」


嬉しいなーと、その場でマフラーを巻いた健太郎はスッと立ち上がって、優に手を差し出す。


「もうちょっと、歩こうか。せっかくイルミネーションも空いてることだしね。」


冬の空気に頬を冷やされながら、イルミネーションの真ん中を2人で並んで歩く。

右手を健太郎に預け、左手でもらったネックレスに触れてみた。


「ねえ、健太郎」


今なら、聞ける気がする。


「ひとつ、聞いてもいい?」

「うん、もちろん」


きゅっと右手に力を込めると、大きい手が握り返してくれる。


胸のあたりがじんわりあたたまる。


ちょっとずつ、言いたいことを言えるようになった。


「私のこと…いつから好きでいてくれたの」


今日も、思い切って口に出した。

健太郎に好きだと言って以来、自分の感情を伝えることは、苦手なことには変わりないが、恐怖感はなくなっていた。

なんで今まで怖がっていたのか、わからないくらい。


「そうだなぁ。気がついたときには好きだったな。自覚したのは去年の夏くらい。」

「…そんなに前?」


健太郎に告白されたのが、今年の夏頃だ。

優は目を丸くする。

丸一年、気付かぬまま思われていたことになる。


「うん、そんなに前。アプローチしても社交辞令と取られるわ、流されるわ、デートの誘いも何人かでの飲み会になるわ、何度脈なしだと落ち込んだことか」

「う、うそ…」

「ほんと。」


冗談めかして言う内容の全て、優は記憶になく、呆然とする。


「長期戦でいいやって思ったんだよ。そもそも優は恋愛モードじゃなさそうだったし。」

「それは…」

「まずは気を許してくれる関係になろうかなって」


イルミネーションの真ん中で、いつの間にか立ち止まっていた。

健太郎の右手が優の頬に触れる。


「初めて会ったときから、この子いいなって思ってた」


健太郎は照れもせずサラッとそんなことを言う。

聞いておいて、だが、優は赤面して何も返せなくなる。


「で、優は?」

「へっ!?」


聞き返されると思わなかった優は声が裏返った。


「優はいつから俺のこと好きになってくれたの?」


今度はニコニコと楽しそうな健太郎。


「ま、まだ、内緒…」


何とか絞り出す優。

健太郎の方が何枚も上手。


「まだ、ね。今後のお楽しみかな。先は長いしね」

「…気長に待って…」


いつもそう。


優に選択権を渡しているようで、主導権は健太郎。

完全に健太郎のペースなのだ。


でも、それが心地よい。


「うん」


ちゅ、と音を立てて唇を掠め取られた。


「ちょ…っ」

「待つよ、気は長い方だからね」


真っ直ぐな瞳と目が合う。

優のことを、真剣に見つめてくれる双眸。


優も俯かずに顔を上げて、優だけを映す瞳を見つめ返した。



この人は、私を愛してくれるかも、と思った。




今は、同じくらい愛情を返したいと思っていた。






本編はこれにておしまい。

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