表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/32

電話

一晩寝て体調は大分よくなった。元々シフトに入っていなかったから、次の日もゆっくり寝ていた。


なんとなく気まずくて、健太郎へのメッセージは、いつもより時間を置いて当たり障りなく返信した。

返信をしない勇気はなかった。


「ぅわ…っ」


熱下がったよと返したら、急にプルルと電話が鳴り、反射的に電話に出ていた。


「もしもし、優?」

「あっ、わっ、健太郎?」

「あはは、返信来たから電話かけちゃった。寝てた?」

「う、ううん」


電話越しの健太郎の声。じんわりと心が温まるのを感じた。


「声ガサガサだね」

「うん、ちょっとね」

「微熱だけど声がひどいって愛ちゃんが言ってたよ」


愛とそんなに仲良くなったのか。頻繁にメッセージのやり取りをするくらい。


「ずいぶん、仲良くなったね」


そう言いかけて、棘のある言い方になりそうで、飲み込んだ。


「昨日も早退してごめんね」

「空いてたし大丈夫だよ。みんな心配してたよ。空くまでいてくれたけど、無理してたでしょ」


聞いてるだけで、落ち着く健太郎の声。


「じゃあ、声が聞きたかっただけだから」

「うん…」

「ゆっくり休んで。」

「うん、ありがとう」

「おやすみ。好きだよ、優。」

「…おやすみなさい」


何とか平静を保って返したが、ドキドキが止まらない。

通話の切れたスマホを両手で握りしめる。


「私も、すきだよ」


ぽつりと、誰もいない部屋でつぶやいた。


「…バカだな」


答えなんて出てたじゃないか。


少しでも好きじゃなかったら、押し切られて付き合うこともなかった。

デートするのも。手を繋ぐのも。


麗や愛と仲良くなって欲しくないと思ってしまうのも。


その手に触れたいって、一緒にいたいって思うのも。

笑っていてほしいって、思うのも。


全部、好きだってことなのに。



きっと好きだと言われるより、前から、きっと。


「いまさら、何て言うのよ…」


怖い。

自分の感情が。

自分の感情を、口にするのが。


いつか、自分じゃない誰かを、健太郎が好きになることが。


「好き」の気持ちに気付いたときには、もう、引き返せないところまできていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ