3姉妹
「ただいま」
「優おかえり」
「麗ちゃんごはんは?」
「まだ。今帰ってきたとこ」
「なら温めるから待っててね」
「ありがと」
リビングで優を迎えたのは、姉の麗だ。
時には巻いて、時にはベリーショートで、時には金髪になるその髪は、今はストレートの黒髪ボブで前髪が斜めに揃えられている。
優は手を洗うと冷蔵庫に入れておいたハンバーグと味噌汁の鍋をそれぞれ火にかける。
「なによ、溜息なんか吐いて」
温まるのを待っていると麗はカウンター越しに楽しそうに聞いてきた。
「えーっと、何と言いますか」
あまり気乗りはしなかったが、後からバレた方が何を言われるか、だ。
「……彼氏が、できました。」
「え?なんでそんな浮かない顔で言うのよ。さては押し切られたな?」
「う…」
「何よ、嫌なやつなの?」
「いや…すごくいい人…」
「不細工なの?」
「かっこいい…と、思う。お客さんに声かけられてたりするし」
「ふーん。軽そうな奴?」
「そ…んなことはないと思うけど」
ニヤニヤとカウンターに頬杖をついている麗に嫌な予感がする。このままだと根掘り葉掘り聞かれることだろう。
「麗ちゃん、優ちゃん!」
とてとてと素足でリビングに入ってきたのは、妹の愛だ。
「愛、ただいま」
「おかえりーー!!」
愛は、優の後からぴとっとくっつく。
「ハイハイ、危ないからあとでねー」
「えー」
やんわりと愛を離し、一度ぎゅーっと抱きしめて髪を撫でてあげた。
目線は優より少し高い。
「あのねあのね、今日ね、水族館行ったきたの」
愛は満足そうに、離れて、カウンターにいる麗の隣に並ぶ。
「ちょっと愛!今、優に彼氏ができた話聞いてたんだから邪魔しないで!!」
「ええー!優ちゃん彼氏できたの!?どんな人!?」
興味深々は麗と、不満そうな目線を向ける愛。
「ええーっと、愛、水族館行ったんだっけ?」
「いいよそんなの!それで!?優ちゃん彼氏ってどういうこと!!!」
「ねー、気になるよねー。どんな人なのーー??」
話が逸れることもなく、優は洗いざらい、新しくできた彼氏について話させられたのだった。