ありがとう
「じゃあさ、待つよ」
少しの沈黙の後、は、と、ため息をついて、健太郎はそう切り出した。
「優が少しでも好きになってくれる可能性あるんなら、待つよ。俺。別に、優とキスやどうこうするために付き合いたいわけじゃないし」
や、下心はもちろんあるけどと小さく付け加える。
なんだかそれがおかしくて、優は思わずふふふっと笑った。
つられて、健太郎も少し笑う。
「ねぇ、優」
「ん?」
「信用できると思えるまで、俺のこと試していいからさ」
「う、うん?」
「…まだ、一緒にいさせてくれる?」
瞳の中に、一抹の不安を見た。
「…はい」
優はそれを直視できなくて、少し目を伏せながら小さく頷いた。
「ありがとう」
そう言う健太郎の表情は見なかったけれど。
声に安心が乗っていたから、優もホッとした。
いや、甘えすぎだ。
「手」
「え?」
「手は、いいんだろ?繋いでも」
差し出された手に、戸惑いながら手を重ねると、健太郎はしっかり握り返した。
「冷たい。冷えちゃったね」
温かい健太郎の手と、体温がまざる。
たったそれだけのことなのに、胸のあたりがほんのりと温まった。
健太郎に応えたい気持ちはあるはずなのに、優の中で消化できていないものが大きすぎる。
怒って見限られても仕方ない。それなのに、健太郎はこうやってなんてことない風を装ってくれる。
「ごめんね」
はっきりしなくて。
「……あのさぁ」
「ん…?」
「その、ごめんっていうの、やめてくれない?振られた気分になる」
「あっ、ごめ、えーと……」
「俺は好きでやってるの。無理に合わせてるわけでもないし、一緒にいたいから一緒にいる。」
優をまっすぐ見据える瞳とぶつかる。
真剣に、優を見てくれる、瞳。
「……ありがとう」
優がそうはにかんで言うと、健太郎は眩しそうに目を細めた。




