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思い出と傷口


『受け止めきれてないだけ、に、俺には見えるけどなぁ』


何を?


健太郎の好意、を?


誰、が?


ーーー私、が…?



◆◇◆



高校の頃だった。

麗とは違う高校で、愛はまだ中学生。同じ中学出身の人はみんなクラスも違かった。周りが姉も妹も知らない環境というのが初めてで、こんなに解放感があるものなのかと密かに感動していた。


そんな中、クラスで、仲良くなった男の子がいた。

たまたま委員会が一緒だった。集まりの度に顔を合わせて話すうちに、クラスにいるときも話すようになって、メールもするようになって、告白されて付き合った。


初めての彼氏だった。ファーストキスも彼だった。

放課後に遊んだり、休みの日にデートしたり、本当に楽しかった。

そんな浮かれている優に麗が気付かない筈もなく、麗と愛に問いただされて会わせろと言われるまま、家に連れて行った。

麗を見た瞬間彼の瞳の色が変わったのを見た。

それを見なかったことにして、また遊びに行きたいと言う彼の真意には気付かないフリをして。


段々、噛み合わなくなっていったのはわかった。


やりたいと思わないことにも笑顔で付き合ったし、本当は人目のあるところでイチャイチャするのは嫌だったけれど別れ際駅でキスするのにも応じた。

それがかえって面白くなかったらしい。


ワガママくらい言えないの、何でそんなに自我ないの。

姉はあんなに美人なのに、妹はあんなに可愛いのに、とも。


面白味がなくて飽きたのだろう。……誰がお前なんか好きになるかよ、って。


その彼とはそれっきり会話することもなかった。


大体のことを察していた麗はあんなの別れて正解よと詳しく聞かずに慰めてくれたけれど、それでも麗さえいなければと思う自分が嫌いだった。



ああ、もう、ダメだ。


なんで。なんで。私ばっかり。



『優ちゃんさぁ、そんなに頑なに何を守ってるんだろうね?』


守っている?


何を?


ーーー私、を?



ああ、やめて。やめて。



痛いから。


もう痛いのはこりごりだから。



火傷をするような、熱くて、冷たい、焼き切れるみたいな痛みは、もう。





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