94. 地上部生産施設制圧
『ともかく、地下の制圧は終わったな。地上の制圧に向かおうぞ』
「それもそうですね。いくわよ」
合流した私たちは階段の一方を登り地上部分へと出た。
地上部分ではいろいろなところで先輩冒険者たちが戦っている。
でもやっぱり、被害が出ていないわけじゃないみたい。
「お、来たな。隠密行動部隊」
「地下への守りお疲れ様です」
「なに、これが俺たちの役目さ」
どうやら地下へ向かう通路を守ってくれていた先輩冒険者たちもいてくれたみたい。
おかげで楽に地下施設を制圧できたし感謝だね。
「さて、地下はもう大丈夫なのか?」
「はい。地下にあった生産施設はすべて破壊しました」
「そうか。じゃあ、地上の生産施設も破壊してくれないか?」
「地上にもあるんですか?」
「ああ、あった。1カ所だけは俺たちで襲撃したが、残りは立てこもられちまってな。他のオークどもの掃除とも兼ね合って逃げられないように見張りだけ残して放置している」
「そうか。じゃあ、私たちでなんとかする。支援、感謝する」
「ああ。早くいってくれ。サンドロックギルドマスターもデイビッドさんも砦中枢部に向かっていったがオークジェネラルが多くて敵わないそうだからな」
オークジェネラルが多くて敵わない?
オークジェネラルってそんな簡単に発生するモンスターなの?
スネイルさんもよくわからないというような顔をしているし、一体なにが起こっているんだろう?
『悩んでいる暇はなかろう。いまはまず与えられた仕事をこなすことじゃ』
「そうだね。全員、いくよ」
私たちは最初に制圧されたという部屋を調べ、その部屋に隠し通路とかがないかを確認した。
結果、隠し通路とかはなかったけど、ここでも大量の魔法金属が作られており、頭を悩ませることに。
オークたちって一体どれだけの装備を調えるつもりだったんだろう?
悩んでいても仕方がないので次の部屋、見張りがついていて逃げ出せないようにだけされている部屋に行ってみるとやっぱり扉は開かない。
スネイルさんが扉を確認したんだけど、非常識なほどに硬くて重たいなにかでかんぬきをされているらしい。
さっきの扉もそうだったんだけど、扉自体がアダマンタイトなんだよね……。
「スネイル、どうだ?」
「だめね。鍵じゃなくてかんぬきで塞がれている。しかも扉も頑丈で壊しようがない。シズク、この扉を《ストレージ》にしまうことってできないの?」
「ええと、できないみたいです。壊れたものとかは格納できるんですけど、壊れていない形あるものは武器とかのサイズじゃないとしまえないみたいで」
「そうなると……どうしましょうか」
『ねえ、扉以外の場所を通っちゃだめ?』
「キントキ?」
『扉以外の壁に穴を開けてそこから突入しようよ』
「そんな簡単に……できるの?」
『多分できるよ。危ないから少し壁から離れていてね。《ガイアキャノン》!』
キントキが魔法を唱えると足元から岩の筒が生えてきてその中から岩の球が飛び出し壁にぶつかった!
すると、岩の球は壁を砕いて貫通し大穴を開けてしまったよ……。
穴を開けたときに舞った埃をミネルが《嵐魔法》で吹き飛ばすと、そこにはオークバーサーカーの死体が転がっていた。
壁のすぐ側にいたんだね。
『これなら壁の中にも入れるでしょう?』
「あ、ああ。全員、突入!」
壁をいきなり壊されて呆然としていたオークたちは為す術もなく切り倒されていった。
金属や死体もキントキが回収して歩いていたし、この部屋はもう大丈夫だね。
『ねえ、冒険者さん。あとであの扉も破壊しない?』
「え、あの扉も?」
『《ガイアキャノン》を2発か3発撃ち込めば壊せるはずだよ。そうすればゴミとして《ストレージ》に格納できるし戦利品になるんじゃないかな?』
「ああ、ええと、シズクさん?」
「キントキ、時間があったらね?」
『それじゃあ、オークを片付け終わったら回収しよう。せっかくのお宝、もったいないよ』
「……ミネル、キントキって地下でもこのペースだったの?」
『このペースじゃったのう。お宝集めの楽しさに目覚めてしまったようじゃ』
「そうなんだ」
『そのようじゃ』
キントキの新しい側面を見てしまったけれど、そのあとの部屋攻略は楽に進んでいった。
《ガイアキャノン》を適当に打てば壁は全部貫通して崩れるから、その隙に乗じて部屋の中へと乗り込み、中のオークを全員抹殺する。
その繰り返しだけで地上部分にあった生産施設と思われる部屋は終わったよ。
オークたちも壁から侵入されるとは思っていなかったみたいで、どこの部屋も一瞬で制圧できたしあっけなかったかな。
ただ、入れなかった部屋には装備品置き場とかもあって、それらもまとめて回収していたね。
本当にたくましくなっちゃって……。
ともかく、地上部分にあった主な部屋も確認終了。
地下につながる通路はもうひとつあって監獄になっていたらしいけれど、使われていた形跡はないそうだ。
ただ、オークもヒト族の女性を犯す習性があるそうなので、それにはスネイルさんも首をかしげていたけど……。
ひとまず隠密行動部隊としての役割を終えた私たちは、各所で行われていた冒険者たちの争いに加勢することになった。
私たちが加わったことで一気に冒険者側の優位になり、オークの部隊がひとつまたひとつと消え去っていき、だんだん交戦している場所も少なくなってきている。
私とシラタマは《命魔法》で治療も施して回っているし、冒険者側がかなり優位に立っているんじゃないかな?
そう考えて別部隊の支援に行こうとしたそのとき、私に声をかける先輩冒険者がいた。
「おい! シズク!」
「はい、なんでしょう?」
「2階のバルコニーへ急げ! サンドロックギルドマスターとデイビッドさんがオークの首魁と戦っているんだが苦戦を強いられている! お前の援護が必要だ!」
「私の援護? あのふたりがかりで勝てない相手なんですか?」
「相手が空を飛んでいるんだよ! それも特殊変異個体のポイゾネスワイバーンだ!」
特殊変異個体に乗ったオークのボス!?
そんなの相手じゃサンドロックさんとデイビッド教官でも勝てっこないよ!
急いで救援に行かないと!




