85. 滝の裏にあった裏口
通用口を塞いでからの3日間はひたすら裏口探しの日々だった。
私たちは砦から出てくるオークアサシンやオークテイマーを倒すだけだけど、本隊は二手に分かれて〝オークの砦〟周辺をくまなく調査だもんね。
本当に大変だったと思うよ。
そうして、最終的に見つかった裏口の場所、それは……。
「この奥にある滝の裏側ですか?」
「ああ、そうだ。そこに大きな洞窟があってそこから大型のオークどもが出入りしていた。オークバーサーカーが出入りしているんだ。オークジェネラルもここから出入りしていたんだろうよ」
「じゃあ、今度はそこを攻め落とすんですか?」
「そうなる。そうなってくると次は人選だ。俺とデイビッドは決定。Bランク冒険者も連れて行く。あとは、シズク。お前も一緒に来い」
「私もですか?」
「どこにオークアサシンどもが潜んでいるかわからねぇからな。それを見つけるため、お前にはついてきてもらいたい」
「さすがに全部を見つけることは無理ですよ?」
「そんなことはわかってる。頭上からの不意打ちを少しでも減らせればマシってところだ」
「それならついていきますが、過信しないでくださいね」
「心配するな。お前以外、全員Bランク冒険者で構成されたメンバーだ。多少なら遅れを取ることはねぇよ」
「わかりました。信じています」
「よし。明日は裏口の制圧から砦内部への侵入が目標だ。砦側から裏口を塞ぐことができる形式になっていたら、爆破していつでも通行可能にする。その日以降、本隊はその洞窟近くに陣を構えてオークどもが出てこないか見張りながら行動だ。滝付近を砦攻めの前線基地として使用する。本営に戻るのは負傷者と補給時のみだ。いいな」
これから先は本営で寝ることもなくなるのか。
厳しくなるなぁ。
でも、これもオーク退治のため。
しっかり切り抜けないと!
********************
翌朝は隠密行動部隊から私だけ抜けて裏口があるという滝の方へ。
滝に到着するだけでも歩きで2時間はしんどいね。
それを抜きにしても、ここを攻め落としたところで、また占拠されたら意味がないのだろうからここに居座り続けるという意味なんだろうけれど。
さて、滝に到着。
その裏側をのぞき込むと、確かに大きな洞窟が口を開けている。
その前にはオークバーサーカーも2匹陣取っているし、あそこが裏口で待ちがいなさそう。
どれどれ、《存在判別》の結果は……?
「うわっ」
「どうした、シズク?」
「滝の洞窟に向かう天井に、たくさんのオークアサシンと思われる存在が張り付いています」
「やっぱりか。お前の魔法でそいつらを倒すことは?」
「《嵐魔法》で切断していくのなら。ただ、最初数匹を倒した時点で気付かれますので、あとは地上戦になるかと」
「さすがに全部ってのは無理だよな。わかった、倒せる範囲だけでいいから倒してくれ。あとは俺たちが始末する」
「お願いします」
私は早速《嵐魔法》をセットし《ストームカッター》を使い、可能な限りすべてのオークアサシンを狙い撃ちにする。
でも、オークアサシンも慣れたもので最初数匹が切り裂かれた時点で天井から飛び降り、魔法はその上を通過、やつらはオークバーサーカーと一緒に攻めてくることになった。
「シズク、お前は後方支援だ! 背後から攻撃を受けないように見張っていてくれ!」
「はい!」
「残りは全員、正面の豚どもを倒す、いいな!」
「おう!」
始まったオーク軍と冒険者たちによる激戦。
武器と防具の性能をフルに生かしたサンドロックさんとデイビッド教官は、オークアサシンを切り捨てながらまっすぐオークバーサーカーへと向かっていった。
それ以外の冒険者たちは、たくさんのオークアサシン相手に互角の戦いをしている。
オークアサシンも得意の不意打ちを塞がれている状況なのでうまく戦えず、数の優位を生かした戦いができていない。
ときどき、壁伝いに背後へ回り込もうとするオークアサシンは、私が《嵐魔法》で切り裂いちゃっているからね。
サンドロックさんとデイビッド教官の方は、オークバーサーカー相手にかなり優位な戦いを勧めている。
サンドロックさんはオークバーサーカーの武器である2本の斧を両方とも破壊してしまっているし、デイビッド教官も片方を破壊しもう一方も破壊寸前だ。
問題はオークアサシンがふたりにも襲いかかろうとすることがあって、それを受け流すのに隙ができてしまうことだね。
でも、ふたりはそれも難なくこなしているし、オークバーサーカーも血まみれ。
もうすぐ決着がつきそう。
そんなとき、《存在判別》に敵対反応がいくつか引っかかった。
ここからだと滝の反対側につながる道の方だけど、なにかが私たちを見つけて襲いかかってこようとしているみたい。
襲ってくるのは……石を担いだオーク!?
なんで石ころ!?
ともかく、みんなの邪魔になる前に倒しちゃうけど!
「Pugi!」
「Bupi!」
なんだったんだろう、こいつらは一体……。
ともかく、先輩方の支援に戻らないと。
決着がついたのは1時間ほど経ってから。
オークアサシンの数が多すぎて倒しきるのが大変だったみたいだね。
戦利品をキントキに回収させている間、私はサンドロックさんとデイビッド教官にさっきの石を担いだオークの検分をしてもらった。
「ふむ、こいつはオークマイナーだな」
「〝オークマイナー〟?」
「オークの中でも鉱山を掘る係をしている連中だ。だが、こいつらの背負っている鉱石はなんだ? 鉄鉱石でもなければ魔鉄鉱石でもねぇ。銀鉱石や金鉱石でもねぇし、一体こいつは……」
「気になりますよね」
「気になるな。シズク、キントキが戻ってきたらデイビッドを連れてこの道の先を偵察してこい。なにかわかるかもしれねぇ」
「わかりました。あ、戻ってきたみたいです」
「さすが。早いな」
「キントキ、この奥を調べに行きたいの。お願いできる?」
『任せて。乗っていくのはシズクとデイビッド?』
「そうなる。いつもすまないがよろしく頼む」
『気にしない気にしない。さあ、乗ってよ』
デイビッド教官と一緒にキントキの足で30分ほど行った場所。
そこに広がっていたのは露天掘りの鉱山だった。
「デイビッド教官、これって……」
「さっきのオークマイナーが掘り出していたのは、ここの鉱石のようだな。だが、あれは一体なんのために使うんだ?」
「わかりません、わかりませんが……あの防衛体制は」
「オリハルコン装備のオークジェネラル2匹にオークバーサーカー4匹。ここはオークどもにとってかなり重要な場所のようだ」
「どうします? 襲撃を行いますか?」
「いや、俺たちだけでは危険だ。オークマイナーを始末することも考えれば、相当な人数がいるべきだろう。しかし、キントキが全力で走っていないとはいえ30分か。キントキ、一般的な冒険者が歩いてここまで来るにはどれくらいかかると思う?」
『うーん、7時間から8時間くらいじゃないかな? 登り道だったし、かなり大変だよ?』
「冒険者は上り坂程度で弱音は言わない……と言いたいが7時間も上り坂が続けば疲労がたまるか。朝出て夕暮れ時に着く、そのペースで来るのが一番早いだろう」
「あの、私がキントキでひとりずつ輸送するのは?」
「却下だ。今回は60人から70人程度で攻めたい。さすがのキントキでも、それだけの人数を運べば時間がかかるだろうし、こちらに先に来た冒険者たちが気付かれるとオークジェネラルに襲われてしまう。ともかく、戻ってサンドロックギルドマスターに報告だな」
「わかりました」
今度はキントキに全速力で走ってもらって滝まで何分で戻れるか測ってみた。
結果は10分弱。
キントキの足でも往復20分近くかかっちゃうんじゃ、60人から70人の冒険者を運ぶなんて無理だよね。
キントキの《騎乗》スキルも私が側から離れると効果を失うみたいだし。
サンドロックさんとも話し合った結果、今日の戦利品をアイリーンの街へ持ち帰るついでに、この石がなんなのかアダムさんに聞いてくることになった。
これを見たアダムさんはオークの装備が充実していることに納得したみたいだけど。
「シズクの嬢ちゃん、こいつはオークアルケミストが錬金術で魔法鉱石を錬成するときに使う素材の石だ」
「え? つまり、ミスリルとかの原石になるんですか?」
「ヒト族には不可能だから無価値な石だが、オークアルケミストにとっては重要な石だ。うまくいかなきゃ魔鉄なんかになっちまうが、大成功すりゃオリハルコンにだって化けるそうだぜ?」
「つまり、私たちの装備って……」
「大本はこの石だろうなぁ。こいつの鉱脈を見つけたからオークどもがこの街を攻めてきたんだろうよ。他にも理由があるかもしれないが」
「となると、早めにその石の供給を断った方がいいですよね?」
「そうなるな。戻ってサンドロックに伝えろ。急ぎでこの鉱山を制圧しろってな」
「わかりました!」
「それから、今日仕上がった装備品もこっちに並べてある。受け取っていけ」
「はい! ありがとうございます!」
私はアダムさんの鑑定結果と武器を持ってサンドロックさんの元へ急行、サンドロックさんも明日には鉱山攻めを行うと決めたみたい。
そして、私には本営から仕上がってきているオリハルコンの武器をすべて持って来いとも指示を出されて本営にも一度戻り、さっき持ってきた武器の中でいらない武器と交換にオリハルコンの武器をすべて持ちだした。
明日は一大決戦になりそうだなぁ。
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