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82. 本営防衛戦

 私がオークキラーの襲撃を受けた翌日。

 オークキラーは決まった時間にしか現れないということで、ようやくミネルたちとも再会できた。

 寂しかったよー!


「ミネルたち、体は大丈夫? 調子のおかしいところはない?


『平気じゃ。事前にサンドロックが避難させてくれていたからな』


『さすがにあの密度の呪いを目の前にしていたら、ちょっと危険だったかな』


『ちょっとじゃなく、すぐに逃げないと死ぬわさ』


『それくらい危険な相手だったの』


「この鎧の効果に感謝だね!」


 ああ、アダムさん。

 この防具を作ってくれていてありがとうございます!


 さて、そんなわけでペットたちのご飯もあげて私も朝食を食べた。

 そうなると次の行動を決めなくちゃいけないんだけど、そんな重要な会議にD+程度の私が……サンドロックさんにつかまって呼び出された。

 なんだか、私の扱いが大物になってきている気がする。


「さて、主要メンバーは揃ったな。今日これからの動きを説明する」


 今日の動き。

 遂に侵攻開始かな?


「今日は一日本営の防衛だ。黙っててもオークどもが攻めてくるはずだからな」


「黙ってても攻めてくる?」


「当然だろう? 目と鼻の先にこんな野営地を作られてるんだ。破壊したいに決まってる」


 ああ、そっか。

 私たちも最終決戦ではオークの本陣に突入したものね。


「それで、今日はあちらの様子見だ。そんで明日に攻略部隊は出発。護衛部隊は本営の警護に残ることになるな」


 その言葉に全員がうなずき了解したみたい。

 明日から攻略作戦開始か。

 作戦初日はどんな感じになるんだろう。


「それじゃあ、今日の作戦予定だが……」


 サンドロックさんがここまで説明しかけたとき、ひとりの冒険者が駆け込んできた。

 かなり慌てた様子だし、なんだろう?


「どうした? 状況を知らせろ」


「はい! オークの軍勢が本営に向けて進行中! 一般兵クラスだけではなくハイオークやオークナイト、オークジェネラルまで出てきています!」


「ちっ! 面倒なことに!」


「それだけではありません! デイビッド様が言うにはオークジェネラルの装備に使われているのはオリハルコン合金だと……」


「ジェネラルクラスまでオリハルコンかよ! いい、俺が叩く! オークジェネラルの数は!?」


「全部で2匹です!」


「じゃあ両方とも俺が斬る! デイビッドにはオークナイト以下のザコどもを叩かせる部隊の指揮を取らせろ!」


「はい!」


 敵はオークナイトかそうなってくると……。


「シズク、お前には救護班と糧秣の護衛を頼みたい」


「護衛、ですか?」


「あっちの戦闘部隊も本命だろうがやつらが本当に消したいのは、救護班や食料などだろうからな。お前にはこっちの防備を任せたい」


「でも、オークナイトの装備は……」


「間違いなくミスリルとガルヴォルンの合金だ。手が出せるのはデイビッドくらいだろうが、なんとかするだろう。ともかく、こちらが敵の手に落ちても負けなんだ。しっかり防衛を頼む」


「はい!」


「お前の他にもBランクの冒険者を数人残して行く。そいつらも気配には敏感なやつらばかりだ。オークアサシンの対処はどうにかなるだろう。残る問題は」


「オークレンジャーのボルト」


「すまんが、それが飛んできたらお前が体をはって止めろ。どうせ俺たちの鎧には傷ひとつつかん」


「わかりました。絶対にこの場は死守してみせます」


「任せた。俺もなるべく早く、オークジェネラルをぶっ倒すとする」


 サンドロックさんもいなくなり、取り残されたのは私と私の仲間(ペット)、他数人の冒険者のみ。

 私以外はみんな威風堂々としていてかっこいいなあ。


「〝ウルフ狩りのステップワンダー〟、相談がある」


「はい。なんでしょう」


「お前には俺と一緒に救護班、つまり治癒術士の護衛を優先してもらいたい。それ以外の防衛は他の連中に任せる」


「わかりました。指示に従います」


「助かる。救護班もすまないがテントよりもう少し離れてくれ。テントを燃やされた場合、そこだと逃げ出す必要があるからな」


「は、はい!」


 そっか、テント自体を狙ってくる可能性もあるんだ。

 私じゃそこまで頭が回らなかったな。

 本当に勉強になるよ。


「さて、それじゃあ、ここから先は……」


『《ガイアウォール》!』


 先輩の説明を遮ってキントキが《大地魔法》を発動させ、岩場の壁を作り出した。

 するとそこにたいしてほぼ同時に5本のボルトが突き刺さった!


『モナカ! ……は、もう行っちゃったようだね』


『キントキ、さすがなの』


『嫌な予感がしたんだよ。でも《ガイアウォール》を使って正解だった。《ロックウォール》じゃ2本目くらいで砕かれていて3本目以降はほぼ素通りだよ』


『まったくじゃ。気が抜けないのう。モナカも戻ってきたようじゃぞ』


『お待たせだわさ。オークレンジャー8()()仕留めてきたわさ』


『8匹かい? ボルトは5本しか無いのに?』


『時間差で狙うつもりだったんじゃないのかわさ。既に死んでいるし知らんわさ』


『それもそうだね。シズク、こういうわけだから僕たちも能力の出し惜しみはなるべくしないよ』


「……使ってしまったものは仕方がないな。だが、余計オークどもを皆殺しにする必要が出てきた」


「ですね。あ、オークアサシンが5匹迫ってきています。方角は風下の方から」


「……のようだな。しんがりはペットに任せて大丈夫か?」


『任せよ。儂とシラタマですべての敵を感知する』


『頑張るの!』


「では、俺たちはオークアサシン狩りだ。遅れを取るなよ?」


「はい!」


 こうして始まった救護班対象の防衛戦。

 オークアサシンにオークレンジャー、オークエージェントとかいう破壊工作員まで混じっての大混戦だったけど本営を守り切るのに成功。

 本隊の方から離脱してこちらを攻めてきたナイトも数匹いたから驚いたよ。

 全部退治したけどさ。

 崖の上からこちらの戦況を監視していたスカウトたちは、全員ミネルが《魔獣の鉤爪》でグシャッとやってくれたって。

 これである程度は情報漏洩も防げたと思いたいんだけど。


「おう、派手にやってくれたようだな。〝ウルフ狩りのステップワンダー〟」


「サンドロックさん、手札を隠しながら戦える相手じゃなかったんですからね?」


「わかってるよ、そんなこと。お前自身はスキルを使ってないんだろう? ペットたちがテイムモンスターって認識されちまうのは仕方がない。侵攻作戦が始まったらペットを先に始末しようと動き出すかもしれないから気をつけろよ」


「わかりました。それで、あれらの死体や戦利品はキントキが解体と回収をすればいいんですね?」


「ああ、頼む。肉はほとんど使い物にならないだろうが、装備はとにかく豪華だ。あれをアイリーンの街まで運んで特急仕上げをしてもらってこい。オリハルコンなんてアダムしか使えないがな」


「アダムさん、また大変そう」


「仕方がねえだろう。こんな辺境にアダムのような凄腕がいること自体、おかしいんだからよ。ともかく、キントキの回収作業が終わったらお前はアイリーンの街まで走り、装備と戦利品を渡してこい。キントキ以外のペットは残していってもらいたいが、お前から離れるとスキルが使えなくなるとかはあるか?」


『そんなことはない。離れていたところでスキルを使えなくなることはないぞ』


『ただ、わちらの言葉は聞こえなくなるわさ。そちらの言葉はわかるけど、そこは諦めるわさ』


『何事も万能じゃないの』


「そうか。シズク、昔使った〝言語理解のネックレス〟だったか? あれを俺とデイビッドの分だけでも用意できねぇか?」


「ちょっと試してみますね。……軽くめまいを覚えましたができました」


「めまいっつーことは魔力切れのサインか。作るのに相当な魔力を消耗するんだな」


 私も初めて知ったよ。

 あの時は簡単にできていたのに。

 ああ、でも、あの時はひとつだけだったし、気にしていなかっただけなのかも。


「ともかく、これで俺とデイビッドはシズクのペットとも話せるな。1時間くらいであっても」


『そうなるのう。キントキが帰ってくるまでは3時間くらいかかるじゃろう。まあ、そのうち1時間だけでも話せるとだけ考えておけばいい』


「よし、お前のペットたちからも状況報告を受けられるな。シズク、キントキが戻ってきたみたいだぞ。ああ、それとアダムに伝言だ。オリハルコンは武器を優先に作ってもらいたい、そう伝えてくれ」


「わかりました。それでは失礼いたします」


 私は素材をたっぷり貯め込んだキントキに乗って一度アイリーンの街へ帰ることに。

 門衛の人たちは驚いていたけれど、事情を話すと納得されたね。

 冒険者ギルドで武具職人を集めてもらい、素材倉庫にキントキが集めてきた素材をびっちり並べてもらったけれど、みんな渋い顔をしていた。

 誰もがここまで戦力強化しているとは思っていなかったみたい。


 ともかく、ここからは冒険者ギルドが取り仕切ってくれるということなので、私は本営に戻ることになった。

 その前にアダムさんへとサンドロックさんからの伝言を忘れずに。

 アダムさんは〝3日で仕上げて持っていかせる〟って意気込んでいたけど大丈夫あなぁ?


 ともかくお使いは終わり。

 メイナお姉ちゃんとミーベルンの顔は見たかったけど我慢して戦場へと舞い戻った。

 ……今度こそ、私は無事に帰って来てみせる!

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