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ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~  作者: あきさけ
第3部 〝ペットテイマー〟、〝オークの砦〟を攻める プロローグ 強くなったペットたちと旅から持ち帰ったもの
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74. 特殊変異個体の鎧完成

 アダムさんとリヴァさんに私が狩ってきた特殊変異個体の素材を渡しながら待つことしばらく、アイリーンの街もだんだん暑い季節になってきた。

 アダムさんもリヴァさんも必要になったとき、必要な分の素材だけを持っていくから、結構な回数をやりとりしている。

 特に皮を切り出すときに使っている工具、あれは見たことがない。

 素材がなにかもわからないし、一体どうやって革鎧を作っているんだろう?


 ともかく、既に暦は春の3カ月目終盤。

〝オークの砦〟攻めを行うのは夏の2月目終わり頃だと聞いているから、あまり時間はないかもしれない。

 私は毎日ウルフ素材の仕入れとミーベルンの訓練で〝ウルフの林〟に出かけていっているだけだけど、大丈夫かなぁ?


 そんな平穏なのか焦るべきなのかわからない日々を送っていたある朝、いつものように朝食を終えてミーベルンと狩りに行こうとしていたところ、リンネさんがやってきた。


「ああ、シズクちゃん。まだ狩りに行っていなかったんですね」


「はい。まだ準備中でした。なにか急ぎの依頼がありましたか?」


「依頼ではありませんがアダムさんから伝言が。〝例の品物ができたから取りに来い〟と。場所は冒険者ギルドのギルドマスタールームです」


 例の品物って特殊変異個体の鎧だよね?

 なんでギルドマスタールーム?


「よくわかりませんが用件はわかりました。ミーベルン、私、冒険者ギルドに行かなくちゃいけなくなったから狩りはまたあとでね」


「うん。気をつけてね、シズクお姉ちゃん」


「行ってきます、ミーベルン」


 私はリンネさんと一緒に冒険者ギルドまで行き、ギルドマスタールームへ到着。

 中に入るとサンドロックさんだけじゃなく、ケウナコウ様とアダムさん、それにリヴァさんまでいた。

 それから、部屋の一角には鎧も置かれている。

 真っ白な鎧だけど、あれが私の鎧なのかな?


「きたか、シズク」


「はい、鎧ができたと聞いて。そちらにある白い鎧が新しい鎧ですか?」


「ああ、そうだぜ。いろいろと着方が特殊になっちまったが、あれがシズクの嬢ちゃん用の新しい鎧だ」


「……真っ白に染め上げられているんですね」


「色は気にするな。母ちゃんの好みだ。着方を教えてやるから、ますは今着ているレザーアーマー一式を脱げ」


「はい」


 私は家から身につけてきていたレザーアーマーを外し、アダムさんの説明を待った。


「まずその鎧の着方だが、最初にその黒い服を着ろ」


「黒い服……これ、私の体よりもサイズが小さいですよ?」


「心配するな、そいつはとんでもなく伸びる。早く着ろ」


「は、はい」


 私はアダムさんに言われた通り、黒いなにかでできた服を着た。

 本当によく伸びる服で、私の体よりも小さかったのにきちんと着れる。

 ただ、全身の体のラインが浮かび上がってちょっと恥ずかしい。

 私、胸が小さい……。


「さて、着終わったな。あとはレザーアーマーを体中にはめていけ。それで装着完了だ」


「はめる? そういえば、このレザーアーマー、体に締め付けるためのベルトが一切ありませんね。腕や脚もはめる形になっていてベルトとかが一切ありませんし」


「いいからはめていけ。それでわかる」


「は、はい」


 とりあえずまず始めにレザーブーツを履いてみる。

 すると、いきなりレザーブーツが体にひっついた!


「ひゃっ!?」


「ふむ、やっぱりテスト通りの結果か」


「テスト通りって、アダムさん!?」


「そのレザーアーマーはな、その黒い服に吸い付いてぴったりはりつくんだよ。シズクの嬢ちゃん、試しに足首を動かしてみろ」


「足首を動かせって、こんな頑丈なレザーブーツでそんなことが……できた」


「その服を着ている限り、手足の動きが妨げられることもない。つまり関節も自由に動くってことだ。足の指だって動くだろう?」


「うわぁ、本当だ! 面白い!」


「面白いのはわかった。シズク、とりあえず全身分を着てみろ」


「はい、サンドロックさん」


 感覚がわかった私はいそいそと全身の鎧を身につけていく。

 膝当てとか肘当てみたいな細かいパーツもあり、本当に全身鎧みたいになってる!

 あ、首回りも鎧で守られるんだ!

 すごい、すごい!


「全身、身につけ終わりました」


「よし。そんじゃ、そのまま少し動き回って不具合がないか確かめろ。何分、初めて使った素材に製法、鎧だからな。不具合があってもいけねぇ」


「わかりました! あれ、でも、この鎧を着てからなんだか涼しくなったような?」


「ああ、熱波地帯や寒冷地帯でも使えるように魔法を施してある……というか、勝手にかかったんだ。正確にはその黒い服にだがな」


「そんなところもすごいんだ。とりあえず動き回ってみますね」


 私は鎧を着けたまま部屋の中でいろいろ動き回ってみたけど、まったく支障は出なかった。

 というか、多少重みを感じるだけで、あとは服しか着ていないときとほぼ同じ感覚だから本当にすごいよ、これ!


「どうだ、動きにくいところはあったか?」


「いいえ、まったく。それに重さもほとんど感じないんですが、なぜでしょう?」


「ああ、そいつも勝手にかかった魔法効果だ。身につけられているときだけ、着ている本人だけは重さを感じない。だが、実際には相応の重さがあるから注意しろよ」


「はい、わかりました!」


「それから、今回の鎧には首鎧もついている。首回りを攻撃されてもはじけるぞ」


「ありがとうございます!」


「あとはその黒い服だが、そいつもヴェノムヴァイパーの革製だ。普通の手段じゃ傷ひとつつかねぇ。シズクの嬢ちゃんはゴブリンに犯されるのが嫌だったんだろうが、そいつを着ている限り穴を開けようがないから心配しなくてもいいぞ。そもそも、毒が効かなくなっているんだから負けようもないが」


「うぅ……それでもゴブリンは嫌です!」


「そうか。それは冒険者が決めることだから口出ししねぇよ。ともかく、防具としての着心地については説明終わりだ。次、防具としての性能の話だ」


「性能、それは大事ですね!」


「結論から先に言う。オリハルコンの剣でも傷ひとつつかねぇ」


「へ?」


「ついでに言うなら思いっきり殴られてもたいして衝撃を感じない。気をつけるのは地面にめり込んだり、壁に叩きつけられたりして動きにくくなることだけだな」


「嫌だなぁ。アダムさん、そこまで丈夫な革鎧があるはずないじゃないですか。オリハルコンでもびくともしないだなんて」


「そう言うと思ってサンドロックの部屋で待っていた。サンドロック、思いっきりやれ」


 え?

 思いっきりやれってなにを?


「いや、思いっきりやれって、いいのかよ、アダム? 俺の剣だってお前の作った超一流のオリハルコンの剣だぞ? 間違って切れたら……」


「俺が散々性能テストをしたんだ。構わねえからやれ」


「いや、さすがにオリハルコンの剣で切られるのはちょっと……」


「心配するな、シズク。多少、鎧が傷つく程度で止めるから。ちょっとだけ試させろ。アダムが納得しねぇ」


「せっかく新品の鎧に傷がつくのも困りますが……どうぞ」


「わかった。ていっ……って?」


「あれ? サンドロックさん、切りました?」


「いや、確かに切ったぞ?」


「剣が触れた感触すらありませんでしたよ?」


 サンドロックさん、手加減を間違えたのかなぁ?

 本当に触れた感触すらなかったんだけど。


「だから言っただろう、サンドロック。思いっきりやれって」


「あ、ああ。シズク、本気でいくがいいか?」


「ちょっと怖いですが、どうぞ」


「お、おう。でりゃ!」


「あたっ!?」


「シズク!? 大丈夫か!?」


「ああ、いえ。肩に剣がぶつかった衝撃を感じただけですから……って、サンドロックさん!? 剣が欠けてますよ!?」


「ああ!? なにがどうなってやがる!?」


「ショルダーアーマーにも補強用のフォーホーンブルの骨を埋め込んであるからな。本気でぶつかりゃオリハルコンの剣だって欠ける」


「そ、そういえば私がフォーホーンブルを狩ったときも、オリハルコンのダガーがボロボロになっていたっけ」


「自己修復の魔法がかかっているから、そのうち欠けたところも直るだろうが……とんでもない鎧だな」


「物理防御はオリハルコンの武器すら通さない程頑丈。錬金術の添付薬と素材の効果で劇毒や呪いを無効化し、魔法や炎、冷気、電撃などにも耐性ありか。まさしく頑強な鎧だな、アダム、リヴァ」


「まあなあ。素材が上質すぎて作るのに苦労しましたよ、ケウナコウ様」


「本当でございます。初めてだから仕方がありませんが、技術料ミスリル貨10枚というのは少なかったかもしれません」


 ミスリル貨10枚が少なかった……。

 私の鎧、どれだけ高価なんだろう。


「まあ、2着目以降は簡単に作れるから元は取れるがな。最後に兜をかぶってみな」


「あ、はい。フォーホーンブルの角は背中側に回したんですね」


「前側だと視界を塞ぐし突撃でもしない限り使い道がないだろう? 背中側に回したのは防具としての機能を持たせるためだ。その角も特別な魔法処理を施してあるから刺さっても簡単に抜ける。安心して使いな」


「ありがとうございます。あ、この兜もかぶったら頭の形にぴったりとひっついた」


「裏地にヴェノムヴァイパーの布を貼ってあるからな。音も聞こえにくくないだろう?」


「はい。まったく聞こえにくくありません」


「そういうものになっちまった。面も下ろしてみろ」


「わかりました。あ、こちらも見えにくくならないですね」


「シズクの嬢ちゃんの顔もしっかり測らせてもらったからな。そうそう、鎧一式、全部自動修復の魔法を施してある。傷がついてもしばらくすれば直る……というか、おそらく砕けても直るから安心して使え」


「ありがとうございました!」


 うーん、こんな性能のいい鎧をもらっていいんだろうか。

 私、D+ランクのステップワンダーなのに。


「さて、1着目の説明と引き渡しはこれで済んだな。次、2着目の商談だ」


「2着目?」


「ああ、2着目だ。ほしいだろう、サンドロック?」


「……特急仕上げで頼めるか?」


「技術料ミスリル貨30枚でなら3週間で仕上げてやるよ」


「わかったその条件でいい。兜はどうにかならねぇか?」


「特殊変異個体の兜はどうにもならん。素材がもうないからな。普通のフォーホーンブルの頭骨を複数個錬成で組み合わせてある程度強度を上げ、特殊変異個体の革で覆うしかないな」


「それで構わん。急いで仕上げてくれ。色も指定できるのか?」


「できるぜ、何色がいい?」


「黒色を。光沢のある色でな」


「わかった。それで、素材はどうするんだ?」


「それもそうだな。シズク、素材を大急ぎで売ってくれ。金銭交渉の時間も惜しい。白光貨1枚とミスリル貨50枚を支払う。白光貨を用意するのは時間がかかるから、手付金としてミスリル貨だけ今日受け取っていってくれ」


「ミスリル貨50枚なんて多すぎます!?」


 さすがに白光貨1枚とミスリル貨50枚はもらいすぎなので、白光貨1枚とミスリル貨30枚まで下げてもらった。

 でも、所持金がミスリル貨30枚も増えちゃったし、サンドロックさんからは1カ月以内に白光貨も用意するって言われているし……。

 金銭感覚がおかしくなりそう。


 あとこの鎧と服はお手入れしなくても大丈夫なんだって。

 アダムさんとリヴァさんがどんなに試しても、一切汚れがつかなかったし乾いたりして革が痛んだこともないらしいからね。

 冒険者の心得として毎日お手入れはするけど!

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