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ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~  作者: あきさけ
第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第4章 〝ペットテイマー〟旅の休み
54/100

54. ミーベルン初めてのウルフ戦

 レザーアーマーと首元を守るスカーフ、マジックバッグが揃い、翌日ミーベルン用の剣も取りに行き、いよいよウルフ狩りの準備は万全だ。

 あとは街門を出て〝ウルフの林〟に行き、実際に戦うところを見せるだけだね。


「うん? シズクちゃんじゃないか。街に帰ってきていたのか?」


「はい。少しの間だけですけど」


「そうか。それで、後ろ見慣れない子供は?」


「私の妹になったミーベルンです。市民証もありますよ。ミーベルン、市民証を見せてあげて」


「は、はい」


「お、少し怖がらせちまったか。……ふむ、市民証も本物だな。どうしたんだ、この子供?」


「センディアの街で迫害を受けていたので連れ出してきました。ケウナコウ様の許可もいただいています」


「領主様が許してくれているなら、一衛兵の俺が口を挟む問題じゃないな。それで、今日はその子供を連れてウルフ狩りか?」


「はい。私がいる間限定ですが、ウルフの倒し方や解体方法を教えておこうと思って」


「わかった。ひとりの時は通さなければいいんだな?」


「お願いできますか?」


「いいぜ。他の衛兵仲間にも教えておく」


「ありがとうございます。それでは、これで」


「おう、今日もたくさんウルフを倒してきてくれよ。最近ウルフ肉がまた値上がりしていてたまらないんだ。やっぱりシズクちゃんがいてくれると助かるよ」


「あはは。その役目、新人冒険者が補ってくれるといいんですけどね」


「まあな。じゃあ、頑張ってきてくれ。妹に怪我をさせないようにな」


「はい」


「し、失礼します」


「妹の方も頑張りな。ウルフも最初は怖いだろうが、コツさえわかれば、1匹1匹仕留められるからよ」


 衛兵さんの声に後押しされて、私とミーベルンは〝ウルフの林〟の方へと歩いて行った。

 もちろんここでも注意することは忘れない。


「ミーベルン、街道の右手側にある林が通称〝ウルフの林〟で私の主な狩り場。ミーベルンにもそっちで狩りをしてもらうよ」


「うん、わかった。左手側の森は?」


「左手側の森は〝ゴブリンの森〟って呼ばれていて森の奥深くにはゴブリンの巣があるの。巣に近づかず、外周部だけでも危険地帯。外周部にいるのはウルフがメインだけど5匹から6匹程度で固まって動くことがほとんどだし、もしウルフを倒せたとしても、ウルフの血の臭いを嗅ぎつけて別のウルフの群れが襲いかかってくるわ。だから、〝ゴブリンの森〟側には絶対に近づいちゃだめ。最初は〝ウルフの林〟で1匹のみでうろついているウルフのみをターゲットにすること。いいわね?」


「〝ゴブリンの森〟、怖い……」


「私も去年の秋に油断したところを2度殺されかけちゃったから。ミーベルンは私よりもずっと弱い。だから、ウルフが2匹いたら絶対に襲いかかっちゃだめだよ」


「う、うん」


 ちょっと脅しすぎたけど、これくらいがちょうどいいかな?

〝ゴブリンの森〟が危険地帯なのは事実だし、ミーベルンだけじゃウルフ2匹に対応できない。

 ニベラマとベルンもまだ弱いから、ウルフに勝てるか怪しいもんね。

 最初はゆっくり、基本から学んでもらいましょう。


「ミーベルン、あなたって一度に何個のスキルをペットから借りられるの?」


「……ごめんなさい。試したことがないからわからない」


「じゃあ、いま試そうか。それがわからないと危なくて戦えないからね」


 ミーベルンが同時にいくつペットのスキルを借りられるか試したけれど、どう頑張っても1個しか借りられないみたい。

 それはそれで鍛え方を考えなくちゃいけないなぁ。


「1個だけか。ミーベルンの安全を優先しなくちゃいけないからニベラマの《隠密行動》を借り続けるしかないね」


「ごめんなさい。《魔爪》とかを借りられればよかったのに」


「気にしないで。私も初めは防御系のスキルからだったから。ウルフを倒していれば同時に借りられるスキル数も増えるはずだし、頑張ろう」


「うん!」


 ミーベルン、気合いが入っているなあ。

 でも、ここも注意しておかないと。


「ミーベルン、狩り場に入ったら大声はだめだよ。獲物が気付いて逃げ出すかこっちに近づいてくるかしちゃうから」


「あ、ごめんなさい」


「次からは気をつけてね。じゃあ、林に入るよ。林の中で転ばないようにしながら歩く方法も教えるね」


 ミーベルンは恐る恐るといった感じで林の中に入ってきた。

 足元の木の根や枯れ枝を踏まないように注意しながら、前を向いて歩くように指示したけどさすがに無理みたい。

 視線が足元の方ばかりに集中しているし、時々落ちている枝を踏んじゃう。

 私にもこういう時期があったなぁ。


「うぅ、ごめんなさい。うまくできない」


「最初は私だってできなかったもの。ふたりで一緒に覚えていこう?」


「うん」


「よし。それじゃあ、武器を取りだして。あそこでウルフが1匹眠りこけているから倒すよ」


「……あれがウルフ。思っていたよりも大きい」


「ベルンよりも大きいよね。戦うときは押し倒されないように注意だよ」


「わかった。どうすればいいの?」


「《隠密行動》で気配はほとんど隠れているから、物音を立てないように近づいて首を切り落として」


「は、はい。怖いけれど、行ってきます」


「ニベラマとベルンもサポートできるようについていってあげて」


『任せるにゃ』


『了解した』


 ミーベルンたちはそーっと時間をかけながら近づいて行き、ウルフの頭の前まで迫った。

 ここまではいい感じだね。

 あとは、その振り上げた剣を振り下ろすだけ!


「えいっ!」


「ッ!?」


 ああ、ミーベルン!

 声をあげちゃだめだよ!


 ウルフはとっさの判断でミーベルンの剣をかわし、尻尾のつけ根あたりだけを少しだけ傷つけられ、一旦距離を取り攻撃姿勢を取った。

 そして、ミーベルンに一気に突撃していって……ミーベルン、危ない!


「ひゃう!?」


 ミーベルンはかじりつかれそうになったのを、とっさに右腕を出して止めたけど目をつぶっちゃってたね。

 そこも指摘かなぁ。


「離れて、離れて!?」


 ミーベルンはパニックを起こしてウルフを振りほどこうとしているけれど、ウルフもなかなか口を離してくれない。

 牙はほとんど刺さっていないだろうけど、だんだん締め付けられていって怖いんだろうね。

 ペットたちも慌てていてどうすればいいかわからないみたいだし、少し指示するか。


「ニベラマ、ベルン。早くミーベルンを助けてあげなさい」


『そうだったにゃ!? 《魔爪》! え!? 首が少し切れただけかにゃ!?』


『ニベラマ、退け! 《帯電》!』


「Gyaun!?」


 ベルンの《帯電》を使った体当たりでウルフは弾き飛ばされ、岩に頭を強く打ち付けて気絶しちゃった。

 まだ、《帯電》自体では気絶させることができていないかな?


『無事かにゃ? ミーベルン』


『すまない、助けるのが遅くなった』


「うぅ……怖かった……」


 ミーベルンは本当に怖かっただろうね。

 でももう一仕事させないと。


「ミーベルン、まだそのウルフは死んでいないよ。首を切り落としてとどめをさして」


「え!? 本当だ、まだ息をしている……」


「それから、林や森の中で周囲の安全が確保できている場所以外では、みんな気を抜いちゃだめ。追加でウルフが襲ってきていたらみんな殺されているよ」


「……はい」


『甘かったにゃ』


『反省している』


「とりあえず、ミーベルンはウルフにとどめを。ニベラマとベルンは周囲の警戒をお願い」


「わかりました」


『了解にゃ』


『心得た』


 ミーベルンにはとどめをさしてもらったけど、ここでもかけ声を出しちゃった。

 そこも指摘だね。


 とりあえず1匹目が終わったので解体手順を教えていく。

 ミーベルンは気持ち悪そうにしながらも頑張って手順を覚えていっていたよ。


 それが終われば一戦目の反省会。

 ミーベルンは攻撃するときにかけ声を出す癖があるのでそれを取り除いていくことと、襲われそうになっても目をつぶらないようにすることを心がけるように指示。

 ニベラマとベルンにはミーベルンが襲われそうになったりしたら、すぐに助けるようにするようにって伝えた。

 ちょっと動き出しが鈍かったからね。

 人里に長くいたせいでそこの感覚が鈍っているのかも。


 このままこの日はミーベルンに12戦ほど戦わせて終了。

 レザーアーマーのあちこちに傷がついているけれど、まだ修復に出すほどじゃないし手入れをすれば十分に使える。

 それにペットたちを含めて動きも大分よくなってきているから、このまま数日頑張らせればウルフ1匹くらい正面からでもなんとかなりそう。


 あと、解体もあまり上手にできなかったけど、それでも買い取ってもらえて喜んでいたよ。

 おめでとう、ミーベルン。

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