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ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~  作者: あきさけ
第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第2章 ふたりめの〝ペットテイマー〟
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46. シズクのいない日

 ミーベルンの支度も調ったので一緒に食堂へと降りていった。

 食堂ではミーベルンのかわいらしさに一同が一瞬ぽかーんとしていたが、そのあとは大盛り上がりだったよ。

 ミーベルンが驚いて私の後ろに隠れちゃったからやめてよね。

 そのあと、丁度空いていたテーブル席に案内されて夕食として出されたのは、パンとスープにウルフ肉の蒸し物。

 私はゆっくり味わって食べてたけど、ミーベルンは慌てて一気に食べちゃった。

 一体どうしたんだろう?


「ミーベルン? お腹が空いてたの?」


「どうしたんだい? お代わりなら持ってくるよ?」


「あ。ごめんなさい。まともな食事を食べられるのって3年ぶりくらいだから……」


「3年ぶり?」


「ああ、シズクちゃんは知らないか。この街では5歳になったら『天職』を授かるための儀式を行うんだよ。しかし3年ぶりということは、ミーベルンは8歳かい?」


「はい、8歳です」


 驚いた。

 わたし、6歳くらいだと思っていたよ。

 持ち上げたときもすっごく軽かったし、身長だって人間族にしてはとても低い。

 とても8歳だとは考えられない。


「そっか、辛い目にあってきたんだね。お代わり食べられるかい?」


「はい。まだ食べたいです」


「わかった。でも、今度はもっとゆっくり食べな。ここにはミーベルンの食事を邪魔したり奪ったりするヤツなんていないからさ」


「はい。すみません」


「いいっていいって」


 ミーベルンは運ばれてきたお代わりを今度はゆっくりと食べ始めた。

 やっぱりお腹は空いていたみたいで、お代わりの分も全部食べちゃったけどね。


「そういえば、シズクちゃん。オーク肉料理だけど、もうしばらく時間をくれないかい? 少しだけ脂のくどさは落とせたがまだ時間がかかりそうだ」


「オーク肉!?」


 ここで食いついてきたのはミーベルンだった。

 食欲旺盛だけど……今日の彼女には食べさせてあげられないかな。


「うん。エンディコットさんに頼んで脂っこくないオーク肉料理を考えてもらっているの。ミーベルン、オーク肉、食べたい?」


「その、食べたいです。オーク肉って高級食材らしいから……」


「うーん……食べさせてあげたいけれど、今日のミーベルンじゃ無理だねぇ」


「そう、ですか……」


「ああ、意地悪で言っているんじゃないよ。今日保護されたばかりで体調が回復していないだろう? あんな脂っこい肉をいきなり食べたら体の調子が悪くなる。明後日くらいなら食べさせてあげられるように頑張るからもう少しだけ待っとくれ」


「はい!」


 エンディコットさんも明後日にはある程度脂っこさの抜けたオーク料理ができる自信があるんだね。

 ミーベルンにはそれまで我慢してもらおう。


 あとは寝るだけなんだけど、ミーベルンは私のベッドに潜り込んできて私の腕に抱きついたまま眠っちゃった。

 よっぽど人恋しくて、寂しかったんだね。

 できるだけ一緒にいてあげたいけれど、私も昼間はブル素材集めのお仕事があるからなぁ。

 どうしたものか。



********************



「え? お仕事に行ってきても大丈夫なの、ミーベルン?」


「うん。このお部屋でお留守番してる」


 シズクお姉ちゃんは昼間、冒険者としてのお仕事があるんだって。

 私が一緒に行っても邪魔しちゃうから、私はお部屋に残ってシズクお姉ちゃんが帰ってくるのを待つことにしたの。


「いや、助かるけれど、本当に大丈夫? 無理していない? 私のお仕事はついでだから無理に行かなくても大丈夫なんだよ?」


「平気。シズクお姉ちゃんから《ペット用ご飯作り》を習ってニベラマとベルンに食べさせてあげたら、2匹ともすっごく元気になったから」


『そうだにゃ。いまなら〝真理同盟〟の刺客ごときいくらでも倒せそうな気分だにゃ』


『ニベラマほど大言は言わないが、ミーベルンを守ることはできる。気にせず行ってきてもらいたい』


「そうは言われてもなぁ。心配だよ」


『それならば、儂らが残ろう』


「ミネルたちが?」


『儂とシラタマが残る。ただし、シラタマから《回復魔法》を借りて持っていけ』


「あ、なるほど。《回復魔法》があれば、もし怪我をしても安心だからね」


『そうなの。でも、昨日みたいに特殊変異個体とは戦っちゃメッなの』


『あれとは儂らもいないと勝負にならん。見かけたら逃げ出せ』


「わかってるよ。それじゃあ、ミーベルンの守り、よろしくね」


「いってらっしゃい、シズクお姉ちゃん」


 シズクお姉ちゃんとキントキさん、モナカさんは出て行っちゃった。

 残ってくれたミネルさんとシラタマさんはこれでよかったのかな?


「あの、ミネルさん、シラタマさん、本当に残ってくれてもよかったの?」


『儂のことは〝ミネル〟でいい。儂がついていってもできることは目標を一緒に探すくらいなのでな』


『あたちも〝シラタマ〟でいいの。あたちなんて仕事がないの。獲物を見つけてもシズクが空から首めがけ、ダガーで切り裂けば一撃で終わるの。あたちのキックも回復も出番がないから抱えられているだけなの』


『そういう意味ではモナカも似たようなものだが、念のための護衛じゃな。モナカの《魔爪》ならば獲物の首を易々と切り裂ける』


『本当にお仕事があるのはキントキくらいなの。解体魔法と《ストレージ》で獲物をしまう係なの』


 すごい。

 シズクお姉ちゃんの〝ペット〟ってそんなに強かったんだ。

〝解体魔法〟っていうのは聞いたことがないけれど《ストレージ》なら私でも知ってる。

 たくさんのものを傷つけずに持ち運べる魔法なんだって。

 シズクお姉ちゃん、こんなところでもすごかったんだな。

 憧れちゃう。


『……なんじゃ? シズクがうらやましいのか?』


「え? ええと」


『〝ペットテイマー〟が他人のペットをうらやんでも仕方がないぞ? そんなことをする暇があるならば自分が契約している〝ペット〟との絆を強くし、育ててやれ』


『そうなの。私なんて最初はなにもできない野ウサギだったの。それがたくさんご飯を食べて、シズクから魔力をもらっていまの強さになったの。最初はどんな〝ペット〟だってそんなに強くないけれど、育てばとっても強くなるの!』


「ええと、ペットを強くするには私が《ペット用ご飯作り》で作ったご飯を与え続ければいいんだよね? 本当にそれだけでいいの?」


『半月、毎日3食食べさせ続ければ目に見えて効果が出る。それこそ、普通の冒険者程度には負けなくなるくらいにな』


『あたち、初めて《パワフルキック》でウルフを倒せたときの感動が忘れられないの』


『だが、本当にそれだけ強くなれるのか? 我々もミーベルンと契約したあとスキルを使えるようになったが、〝真理同盟〟の一般人すら追い払えなかったぞ?』


『私の《閃光魔法》なんてピカって光るだけで終わりだにゃ』


『それはミーベルンも含めお主らが成長していない証明だ。いまはまず、ミーベルンの《ペット用ご飯作り》でご飯を作ってもらい、それを食べて強くなれ。そのあとシズクからウルフの倒し方を習い、ミーベルンともども魔力の向上に務めよ』


「え? ウルフ?」


 ウルフって街の外に出る魔獣だよね?

 あんな怖い魔物に私なんかが勝てるはずが……。


『シズクなら安全に倒す方法も教えてくれるじゃろう。お主らがセンディアを離れ、アイリーンの街までついてくる気があればじゃが』


「え!? センディアを離れられるの!?」


『少なくともシズクはもう、お主をセンディアという害悪しかいない街に放置するつもりはなかろう。シズクはあれでもアイリーン領主特使。アイリーン領主ともつながりがある。子供ひとりの市民権くらい、なんとかしてもらえるようにお願いするじゃろうよ。今回、センディアで集めている獲物のうち、いらない分をすべて渡すとでも言えば見返りとしては十分過ぎるじゃろうし』


「……そういえば、シズクお姉ちゃんってなにを狩りに行っているの? ウルフ? ゴブリン?」


『シズクはアイリーンの街だと〝ウルフ狩りのステップワンダー〟として知られるほど、ウルフ狩りを専門としている冒険者だが今回は違う。キラーブルとフォーホーンブルという魔獣じゃな』


「……どっちもCランク冒険者が複数人で戦うような魔獣だって聞いたことがあるよ?」


『シズクからすればただのザコじゃよ』


 シズクお姉ちゃん、本当に強かったんだ。

 それに、私もこの地獄みたいなセンディアから脱出できるのかな?


 夕方、狩りを終えて帰ってきたシズクお姉ちゃんに聞いたら、〝センディアに未練があるなら残して行ってもいいけど……アイリーンに連れ帰っちゃだめ?〟って言われちゃった。

 これでシズクお姉ちゃんともっといっぱい一緒にいられる!

 ああ、嬉しいなぁ!

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