38. 〝ペットテイマー〟お仕事復帰
そーっと、そーっと近づいて、ダガーでえいっ!
「ギャウン!?」
「よし、また1匹お掃除完了」
『そのダガー、切れ味すごいよね』
『《魔爪》の強化なしでも骨ごとウルフの首を切ってるわさ』
『でも、ウルフの首っているの?』
「んー、ウェイド毛皮店でも必要ないって言われているからなぁ。本当に必要ないのかも」
『そこも帰ったらドネスに聞くとよい。今日はウルフ狩りの復帰初日なのじゃからな』
はい、〝ウルフ狩りのステップワンダー〟こと、私、シズクはオーク退治から2週間経ってようやくウルフ狩りの許可が出ました。
本当は1週間経った時点でウルフ狩りに出たかったんだけど、メイナお姉ちゃんがどうしてもだめだって許してもらえず、基礎体力訓練とか動きの確認とかでさらに1週間を費やしていたの。
街の人たちからすれば、早くウルフのお肉はほしかったと思うんだけどなぁ。
「あ、左斜め前からウルフが2匹固まってやってきた。両方とも私がダガーで狩っちゃうね」
『今日は好きにしていいわさ』
『シズクの復帰と体力確認だものね』
『明日からはあたちも戦いたいの』
『まあ、今日のところはシズクの好きにやらせよ。魔力もオークジェネラル2匹を倒したおかげで一気に増えたしのう』
うん、あの戦いのあと、私の魔力はすっごい増えたみたいなんだ。
いままでは数回使っただけで魔力切れのサインが出ていた魔法だって平気だし、《静音飛行》の飛行可能時間もかなり長くなった、というか3時間飛び続けていても落っこちなくなった。
ペットから同時に借りられるスキル数も4つから8つまで一気に増えていたし、よっぽどな強敵を倒したんだなってわかっちゃう。
ペットたちのスキルも一部進化したり増えたりしていて、とっても強くなった。
まずはキントキのスキルだけど、強化されたスキルはなし。
ただ《ディスアセンブル》を6匹ぐらい同時にかけられるみたいだけどね。
新しく覚えたのは《草魔法》、《魔力急速回復》、《魔力譲渡》の3つ。
1つ目の《草魔法》は草を生やしてとげとげのトラップや槍にしたり、絡みつかせて動きを鈍らせる魔法。
私も勉強して手札を増やさなくちゃ。
2つ目の《魔力急速回復》と3つ目の《魔力譲渡》は一気に説明した方が早いかな。
《魔力急速回復》はその名前の通り、使用した魔力をものすごい速度で回復してくれるスキルらしい。
ちなみに私は借りられない。
ちょっと残念。
代わりに、回復した魔力を《魔力譲渡》で私に送ってくれて間接的に魔力を回復し続けてくれる。
側にいないと使えないらしいけど、急激に使いすぎなければ、このスキルで魔力は補充し続けてもらえるからね。
ミネルには慢心するなと注意されているから、ほどほどにとどめておくけれど、すごいスキルだ。
対してそのミネルはというと《夜目》が《猛禽の目》に強化、それから新しく《風魔法》を習得した。
《風魔法》はその名前通り、風の力で攻撃したり補助的な効果を起こす魔法。
《静音飛行》と組み合わせるととっても早く飛べたよ。
もうひとつ、《猛禽の目》は《夜目》のように暗い場所でも相手をはっきり見えるだけではなく、視覚の中心地にいる相手ならすごく遠くにいる相手でも近くにいるかのようにくっきり見えるスキルだ。
これ、偵察とかに役立ちそう。
次はモナカかな。
モナカは新しく覚えたスキルはなし。
その代わり、3つのスキルが強化されたよ。
ひとつ目は、わたしがよくお世話になっている《高速移動》が、《俊足迅雷》ってスキルに変わったこと。
《俊足迅雷》は《高速移動》よりもはるかに走れるだけじゃなく、魔力を込めて移動すれば、ほとんど一瞬のうちにその場にたどり着ける優れものだ。
これなら相手を見失わない限り、絶対にダガーで攻撃できる。
ふたつ目はこれも常時つけている《隠密行動》が《気配遮断》になった。
この進化によって、私の気配はほとんどなくなったらしい。
大きな音を立てたりしなければ気付かれることはないんだって。
《俊足迅雷》との組み合わせがみなぎる!
最後、《熱波耐性》が《炎熱無効》に変わった。
どう変わったのかをミネルに聞くと、いままでは暑い砂漠とかでも平気だった程度のスキルが、今度は炎の魔法を受けても無傷で済むようになった便利な防御スキルらしい。
でも、服や防具は普通に燃えるから、戦場で丸裸になりたくなければこのスキルを過信するなとも注意された。
乙女としての慎みは捨てたくないです……。
最後、シラタマも新しいスキルは1つ、残りは既存スキルの強化だけに留まったみたい。
新しく覚えたスキルは《爆走》って言うんだって。
これは高速で地上を走り抜けるスキルで……《高速移動》とあまり変わりがないみたい。
でもシラタマにとってはこれが大切で、次のキック技につなげる助走手段になるそうだ。
そして、強化されたスキルの1つ目は《気配察知》から強化された《気配判別》。
このスキルは、《気配察知》よりも広範囲の気配を察知できるだけではなく、相手が自分にとってどういう存在かを色で見分けさせてくれる。
味方なら青、友好的なら緑、中立ならオレンジ、警戒心を抱かせていたら茶、敵対的なら黄、敵なら赤って感じでね。
私はもうすぐ里から出てきて2年だけど、こういうスキルって役立つよ。
ミネルにはこれも過信するなって言われているけど、田舎者にはいいじゃない。
次、《ソフトガード》から強化された《ソフトバリア》っていうスキル。
これは対象の周りにやんわりとした膜を張ることで衝撃や斬撃の威力を弱めてくれるらしい。
さすがにオーククラスになると気休め程度にしかならないらしいけど、ゴブリン程度なら矢もはじけるって。
便利なスキルだね。
最後は《パワフルキック》が強化した《ミラクルキック》。
これはいうまでもなく、キック力が上がってる。
試しに《超跳躍》も《爆走》もなしに岩の塊を蹴らせてみたんだけど、岩が粉々に砕け散ったからね。
シラタマも攻撃的になってきたよ。
最初はあんなに怯えていたウサギだったのに。
とまあ、こんな感じで私の仲間たちの強化具合は説明終了。
私が借りているスキルだけど、《猛禽の目》、《気配判別》、《俊足迅雷》、《気配遮断》、《静音飛行》、《超聴覚》、《魔爪》、《ストレージ》を基本にさせてもらっている。
これならいざというとき《俊足迅雷》でも《静音飛行》でも逃げられるし、《猛禽の目》と《超聴覚》で周囲の状況を判別できる。
近距離なら《気配判別》と《気配遮断》の出番だね。
攻撃には《魔爪》を重ねがけすることが多いし、その場で解体しなくても《ストレージ》にしまってしまえば安全な場所で解体できる。
実際は《ストレージ》は自由枠扱いで、状況に応じて入れ替えているんだけどね。
ともかく、こんな感じでリハビリついでのウルフ狩りを続けている。
でも、今日はそろそろ終わりかな?
「キントキ、今日の獲物ってどれくらいになった?」
『53匹かな。そろそろ引き上げよう』
「わかった。沢の上の薬草を採取したら帰ろうね」
うーん、ウルフ狩りだけだと数時間で終わってしまう。
明日からは〝シラタマの丘〟も見回りに行こうかな?
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