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35. オーク総大将との戦い

「あ、あの。オークエンペラーって、オーク軍の後ろの方にいる豪華な鎧を着たあいつですよね。どうやってあそこまで?」


「ああ。そのために今日シズクに残ってもらった。お前、空を飛べるだろう? 俺とデイビッド、ふたりを抱えて飛べないか?」


 サンドロックさんとデイビッド教官を?

 ふたりとも鎧とか武器とかがっちり身に包んでいるのに!?


「ええと、やってみないと分かりません」


「そうか。じゃあやってみてくれ。デイビッドも準備はいいな?」


「もちろんです。すまないがシズク、よろしく頼む」


「は、はい」


 最初はふたりを抱きかかえるようにして空を飛ぼうと思ったけど、ステップワンダーの短い腕じゃ無理。

 仕方がないので、ふたりには腕を繋いでもらい一緒に飛び上がってもらうことにした。

 すると……。


「ふむ、飛べるようだな」


「だが、スピードは出せないか。シズク、なにかいい方法はないか? このスピードではマジシャンやシャーマン、それから弓兵の的にされてしまう」


「デイビッド教官、なにかいい方法といわれましても」


 困った。

 少しずつ浮き上がることはできるんだ。

 でも、できるのはそこまでで、そこから先はいい考えが思いつかない。

 このスピードで飛んでいくのは無理なのはわかるけれど、どうしろと……。


『シズク、一度高いところまで飛び上がり、そこから滑空するように勢いをつけて飛び込むのはどうじゃ? そうすれば勢いに乗って飛び込めるのではないのか?』


「ああん? そこのフクロウはなんて言っている?」


「ある程度の高さまで飛び上がってそこから滑空して飛び込めと。そうすればスピードをつけて敵陣に攻め込めるんじゃないかって」


「なるほど。それしか手はねぇか」


「そうですね。そうしましょう」


「いいんですか、派手な着地になりますよ?」


「構いやしねえよ。そうなると、他のお前のペットを連れて行くかどうかだが……」


『もちろんついて行くよ!』


『シズクになにかあったら危ないわさ』


『そうそう、一緒に行く!』


「みんな一緒に来たいそうです」


「じゃあ、往き道は俺たちが抱えていくか」


「そうですね。シズク、お前はペットを回収したらすぐに離脱しろ。いいな?」


「はい、わかりました」


 一度地上へと降りてみんなをサンドロックさんとデイビッド教官に抱きかかえてもらってから、ゆっくり空の上へと上っていく。

 そして、かなり高い位置、オークたちが豆粒みたいに見えるようになってからミネルの待ったがかかった。


『この位置からの滑空ならば一気に飛び込めるじゃろう。全員、覚悟はよいか?』


「覚悟はいいか、って聞いています」


「そんなもん、とっくにできてるよ」


「勝つにはこれしかないのだ。逃げ道などない」


『いい覚悟だ。では、いくぞ!』


 ミネルの先導の元、私たちは一気に滑空を始める。

 高いところから落ちるような速度だけれど、サンドロックさんとデイビッド教官はまったく気にしていない。

 本当にこのふたりは強いなぁ。

 いつか私もこれくらい強くなれるんだろうか?

 ウルフ狩りはやめないけれど。


 そして、オーク本陣が目の前に迫ったとき、ふたりは私の手を離してペットたちを宙に放り上げ、オークの本陣へと突撃していった。

 私はペットたちを慌てて回収し、空へと舞い上がったけど、乱暴すぎない?


 でもふたりは、途中にハイオークよりも豪華な鎧を身にまとったオークがいても、気にせずなぎ払っていき、サンドロックさんはそのままオークエンペラーへ切りかかり、デイビッド教官はオークの中でもひときわ大きな体格をした連中に切りかかっていった。

 デイビッド教官が相手をしているのがオークジェネラルなのかな?


 サンドロックさんとオークエンペラーの戦いはまさに互角。

 オークエンペラーは魔法も使うみたいだけど、サンドロックさんはそれをかわしたり両手剣で断ち切ったりしながら間合いを詰めて切りかかっている。

 オークエンペラーも手に持った剣でそれを受け止めるんだけど、完全に力負けして吹き飛ばされているね。


 デイビッド教官の方は……かなり大変そう。

 1匹でも手強そうなオークジェネラル相手なのに3匹も同時に相手をしているんだから仕方がないよね。

 でも、デイビッド教官も負けずに戦っているけどやっぱり厳しそう……ってああ!?

 デイビッド教官が相手取っていたオークジェネラルの1匹がサンドロックさんの方に向かって走り出した!?

 デイビッド教官もそれを阻止しようと頑張っているけれど、残りの2匹が邪魔でどうにもできないみたい!

 ええい、こうなれば!


『シズク! なにをする気じゃ!?』


「あのオークジェネラルの首にダガーを突き刺す! それだけでとどめを刺せなかったら《パワフルキック》で私ごとダガーを蹴り飛ばして! お願いね、シラタマ!」


『シズクには危ないことはしてほしくないけど……わかったの!』


「じゃあ、いくよ!」


 私は大きく旋回し、一陣の矢になってサンドロックさんのもとに走って行っているオークジェネラルの首筋にダガーを突き刺した!


「BuHiii!?」


 でも、やっぱりこれだけじゃ致命傷には届かないみたい!


「シラタマ!」


『あたちに任せるの! 《パワフルキック》!』


 私を巻き込んでダガーを蹴り飛ばしたシラタマ。

 オークジェネラルは……やった!

 血しぶきを上げながら倒れ込んでいってくれた!

 これでサンドロックさんも、オークエンペラーとの戦いに集中できる。


 そう考えていた瞬間、私の周りに影が差してきた。

 これって!?


「Bumooo!」


「オークジェネラル!? どうして!?」


 見てみるとデイビッド教官が相手どっているオークジェネラルが1匹だけになり、私の方にもオークジェネラルが1匹やってきていた。

 これって……私も敵認定された!?


「くぅ……こうなったら、デイビッド教官が助けに来るまでなんとか耐えきってみせないと……って、私のダガー!?」


 よく見てみると、私のダガーが根元からポッキリ折れていた。

 さっきオークジェネラルの首をはねたとき、一緒に折れちゃったんだ……。

 倒せただけ、よかったよ。


『シズク! 大丈夫なの!?』


「シラタマ、私は平気だよ!」


『シズク!? 上に跳ぶわさ!!』


「え!? うん!!」


 大急ぎで《静音飛行》を使い空へと飛び上がると、私の足元をオークジェネラルの剣がかすめていった。

 オークジェネラル、怖すぎる!?

 武器もなしにどうやって倒せば……って、武器!?


 武器のことを考えていた私のすぐ側にショートソードが突き刺さった。

 これってデイビッド教官の予備武器じゃ?


「シズク! 俺が助けに入るまでそいつを使ってなんとか生き延びろ! 倒そうだなんて無茶はするな!」


「はい! ありがとうございます!」


 私はすぐさまデイビット教官のショートソードを拾い、包帯で右腕に固定した。

 やっぱりナイフよりも重いけれど、なんとかこれで戦えそう!


「Buuu!」


「え!? ちょっ!?」


 オークジェネラルがいきなり右手の剣の他に左手に斧を持ちだして攻撃を仕掛けてきた。

 どっちに当たっても、私、ぺしゃんこだよ!?


「ひゃっ!? うわっ!?」


「Bumo! Bumoo!」


 オークジェネラルの攻撃は《高速移動》で回避し続けられるけれど、なかなかその先、反撃の糸口が見えない!

 あっちはあっちでちょこまか動き回る私にいらだってきているようだし……ああ、もう!?


「Buooo!」


「うひゃあ!?」


 しびれを切らしたのかオークジェネラルが左手に持っていた斧を投げつけてきた!

 私は余裕を持ってかわすことができたけれど、これってチャンス?


「シラタマ!」


『《超跳躍》からの《パワフルキック》だね! 任せてなの!』


「私たちはシラタマが落ちてくる間の時間稼ぎだよ! 攻撃に当たらないように気をつけて!」


『任せい! 《魔の鉤爪》!』


『《ストーンランス》!』


『《魔爪》だわさ!』


「《魔爪》からのぶった切り!」


「Buuuu!」


 私たちの攻撃はほとんどオークジェネラルに効いていない。

 でも、いままで潰すだけでしかなかった獲物から反撃されている上に、私が抱きかかえて連れ回していただけの仲間(ペット)たちからも攻撃を受けているんだ。

 剣をやたらめったら乱暴に振り回してそれを払いのけようとするけれど、みんなその程度は慣れたもので、安全な距離を保ちつつまた攻撃を繰り返している。

 私以外、全員の攻撃が頭部に集中しているのもいらだっている原因のひとつかな?


『お待たせなの! 《パワフルキック》!』


 ここで天から降ってきたシラタマがミラクルキックをオークジェネラルに決めてくれた!

 剣を振り回すことだけに集中していたオークジェネラルが不意打ちで思い切り蹴飛ばされたものだから、一気にバランスを崩し、仰向けの状態で倒れ込んだよ!

 いまが勝負時!


「みんな!」


『わかっておる!』


『一斉攻撃だね!』


『手は抜かないわさ!』


『がんばるの!』


 仰向けに倒されて起き上がろうとしていたオークジェネラルに、シラタマがもう一発パワフルキックを当ててまた仰向けの状態で倒した。

 その隙にミネルとモナカが《魔の鉤爪》と《魔爪》で顔を攻撃して目潰しを行い、私が剣で左目を、キントキが《ストーンランス》で右目を突き刺してしまう。

 これで、オークジェネラルは完全に目が見えなくなったね!

 ついでだから、私は兜も帯を切り落として蹴り飛ばしてしまい、転がってた剣も遠くに蹴り飛ばした。

 これで、かなり安全になったでしょう!


「BuMooooo!?」


 オークジェネラルが暴れ出したけど、既に私たちは距離を開けて様子見の態勢。

 武器だって側にないんだし、兜もなくなったんだからあとは油断しないように頭をグチャッとだね!


「ミネル!」


『承知しておる!』


 私とミネルで《魔の鉤爪》を連射。

 ひたすら頑丈だったけど、少しずつ、少しずつ頭を潰していき、遂に頭を完全破壊できた!

 2匹目のオークジェネラルも完全に動かなくなったし、これで完全勝利だね!


『お疲れ様じゃ、シズク』


『やったね!』


『やったわさ!』


『おめでとうなの!』


「ありがとう、みんな!」


「本当にやりやがったな、シズク」


「まったくだ。時間稼ぎだけで十分だったのに」


「あ、サンドロックさん、デイビッド教官!」


「こっちも終わったぜ」


「俺の見せ場はシズクに取られたけどな」


「えへへ……」


『僕、解体と回収に行ってくる!』


 キントキはふたりが倒したオークエンペラーとオークジェネラルの死体を解体して回収しに行ったみたい。

 いつの間にか私が倒した分は回収し終わっているんだから、気が利くよね。


「さて、これでオークどもの指揮官個体は全滅したはずだ」


「そうですね。残されたオークナイトたちも混乱しているようです」


「じゃあ、キントキが戻ってきたら離脱ですね」


「そうなるな。もっとも、もうすぐ回収も終わるようだが」


 キントキ、足が速い。

 解体も回収も一瞬で終わるけれど、それにしてももうこの距離を終わらせるだなんて。


「さて、あとは帰るだけ……」


「ええ、そうですね……」


「はい!」


「Buuuu!」


「え?」


「シズク!」


「シズク! 危ない!?」


「え!?」


 気がついたら私のお腹に太い剣が生えていた。

 私、オークジェネラルを倒して油断しすぎていた?

 嘘、ここで死んじゃうの?


 私、まだ死にたくない。

 もっと、メイナお姉ちゃんと一緒にいたいよ……。

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