34. オーク軍との戦争
今日は特別4話公開!
8時、12時、20時、21時です!
「この! 《魔爪》!」
「Buhii!」
『《ディスアセンブル》に《ストレージ》と』
『《魔爪》だわさ!』
『《ミラクルキック》で吹き飛ばしちゃうよー』
『《魔の鉤爪》じゃ!』
『みんな! 解体が追いつかないよ!』
「頑張って、キントキ!」
『キントキが頑張れば頑張るだけ戦いやすきなるわさ!』
『はーい、僕頑張る……』
オークの軍勢が街に攻めてきて今日で一週間、領主軍は夜にオーク軍に攻撃を仕掛けてくれているみたいだから、私たち冒険者は日中ひたすらオークを倒している。
なかなか減ってくれないけど!
『しかし、シズクの魔力も大分上がったのではないか? ここ数日、休みなしで格上のオークをなぎ倒し続けているのだからな』
「そんなこと確認している暇なんてないけどね! 《魔爪》!」
『それもそうじゃの。《魔の鉤爪》!』
『僕なんて、他の冒険者のみんなが倒したオークも回収して歩いているんだよ? 本当に大変なんだからね?』
「わかっているって! ご飯は奮発してあげるから!」
『オーク肉じゃなくてウルフ肉がいいなぁ。オーク肉のご飯って脂っこい』
『わちもそう思う。奮発してくれるならウルフ肉の方がいいわさ』
『あたちはお野菜だから関係ないの!』
この子たちもグルメになってきちゃって……。
でも、オーク肉は確かに脂っこいから食べにくい人が多いって聞くし、早く平和になってウルフ狩りに戻りたいね!
「うわっと!」
『シズク、気を抜くなよ。お主の防具なら普通のオークが持つ剣では切られないだろうが、重さで潰される』
「わかっているよ、ミネル! 反撃の《魔爪》!」
「BuMooo!」
私を狙ってきていたハイオークの首をはねてそれをすぐさまキントキが解体と収納、これで戦場があまり汚れることもなく、次々戦いを進められる。
そうなんだよね、私が戦う相手って、この一週間で普通のオークからハイオークメインに切り替わっちゃった。
襲いかかってくれば普通のオークも倒すけれど、メインはハイオークの駆除をしてほしいって指示なんだ。
ギルド命令だし、いまの私の武器ならオークもハイオークも大差なく倒せるからいいんだけれど、私がこんなに戦果を上げてていいのかな?
他のDランクの冒険者はオークの駆除をしているのに。
私が考えごとをして動きが止まったところを隙だと考えて2匹のハイオークが襲ってきたけど、ミネルの《魔の鉤爪》とモナカの《魔爪》で倒されて終了。
私、時々こういう囮役もやってます。
そうやって、今日もたくさんのオークを駆除して周り、夕暮れが近づいてきた頃、銅鑼の音が鳴り響いた。
撤収の合図だね。
私も、襲いかかろうとしてきたハイオーク3匹を仕留めて、怪我をしていた冒険者を《回復魔法》で治療しながら撤収していった。
今日の戦果も上々かな。
「お帰りなさい、シズクさん。今日の収穫物を出してもらえますか?」
「はい、リンネさん」
私はキントキに命じて冒険者ギルドが用意したシートの上に収穫物、つまりハイオークの肉や皮、装備品などを出してもらった。
相変わらず、その多さにはギルド職員の皆さんも驚いているけれど。
「こういってはなんですが……シズクさん、本当に無茶してませんよね? ほとんどがハイオークの肉などです。シズクさんにもハイオークをメインで倒してほしいと指示したのはギルド側ですが、シズクさんの身になにかあると……」
「大丈夫です! 頼れる仲間が常に側にいますから!」
「では、そういうことにしておきます。それから、シズクさん。あなたは明日一日出陣なしの待機任務です」
「えぇっ!?」
「本来なら3日に1回は待機任務なんですよ? それを、シズクさんはメイナさんのポーションがあるからといって無茶をして……」
「あはは……」
うん、メイナさんからもらったポーションの中には〝スタミナポーション〟っていうポーションも含まれていたんだ。
これを飲むと、疲労していた体の調子が良くなってまだまだがんばれるようになるから、毎日出撃していたんだけど、遂にストップがかかってしまったみたい。
「シズクさんが帰り道に重傷者へと《回復魔法》を施して帰ってきてくれるおかげで、冒険者側の死者もかなり減っています。ですが、シズクさんの肉体的疲労はともかく、精神的疲労は無視できません。時々、わざと囮になってペットに倒させているようですが、それだって一歩間違えれば死ぬかもしれないんですよ? さすがにギルドとしても看過できません。本来なら家でゆっくりしていてもらいたいのですが、非常事態中なので、待機任務には就いてください」
「わかりました。収穫物の配分はお任せしてもいいですか?」
「もちろん。これも冒険者ギルドの役割ですので。あなたは早くメイナさんのところに戻って、返り血を洗い流し、無事な姿を見せてあげなさい」
「はい!」
私はキントキに乗り、一般人が出歩かないアイリーンの街を抜けてメルカトリオ錬金術師店までやってきた。
そこで、店の中に入る前に、近くの井戸で水浴びをして私も含めペットたち全員の返り血を洗い流してあげる。
私が特に酷いけど、《魔の鉤爪》や《魔爪》でオークを倒すミネルやモナカも酷いんだよね。
あと、キントキとモナカも血まみれの戦場を歩くから足が血まみれだし。
私たちは返り血を落としてある程度水を切ったらメルカトリオ錬金術師店に入る。
まだびしょ濡れで、春になったとはいえ寒い季節だから早く温まりたいのもあるんだけど。
「お帰りなさい、シズクちゃん。今日も大活躍をしてきたみたいね」
「メイナさんにも伝わっているんですか?」
「ギルドの職員さんがポーションの受け取りに来るもの。〝ウルフ狩りのステップワンダー〟が大暴れしている、って聞けばシズクちゃんだってすぐにわかるわよ」
「なんだか恥ずかしいです」
「それよりも早く着替えてらっしゃい。春になったといってもまだまだ寒いわ。ペットのみんなはタオルを用意してあげるから私が拭いてあげるね」
「お願いできますか?」
「うん。この程度なら」
こうしてメイナさんとの暖かい時間も過ぎていき、翌日、私は再び街門前へと集まった。
ただし、今日は待機任務として出番はない予定だけど。
「よし、お前ら、準備はいいな!? 今日はシズクを待機任務にする! いままでみたいに重症を負って帰れなくなったらオークに殺されることを忘れるな!」
帰ってくるのは鬨の声。
みんな、私の支援なんかなくてもやる気だね。
そして、冒険者の皆さんは出陣していき、私を含めた今日待機任務の冒険者数名が残された。
うー!
なにもできないって、じれったい!
「シズク、俺と一緒に街壁の上まで上ってくれるか」
「え? あ、はい」
サンドロックさん、一体どうしたんだろう?
街壁の上からは戦場の様子がよく見て取れた。
冒険者のみんなも頑張っているけど、オークの数に対抗しきれず、ひとり、またひとりと倒されていってしまう。
サンドロックさんはこんな悔しい光景を毎日見ていたんだろうか。
「シズク、正直に答えていい。この戦争、冒険者側に勝ち目があると思うか?」
「……難しいと思います。この光景を見せられると、私が毎日倒していたオークだってあくまで一部でしかないんだって思い知らされましたから」
「お前が活躍していた場所にはオークの穴がぽっかり開いていたんだがな。ともかく、全体の戦況はこんな状況だ。今回招集されたのはDランク以上の冒険者。それでもオークの軍勢には届かないって証明になっちまった」
「私たち、このまま負けるしかないんでしょうか?」
「いや、勝ち目がひとつ残されている」
「え?」
「大将首を取るんだよ。その混乱に紛れて大物を次々ぶっ殺していく。そうすりゃオークの軍勢は瓦解して逃げ出すはずだ。そのあと、追撃戦で数を減らす。いずれは〝オークの砦〟も攻略しなくちゃならねえが、アイリーンの街が危機に瀕している状況は改善できる」
大将首……それってオークエンペラーを倒すってこと!?
一体どうやって!?
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