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31. シズクの決意

「今日もいたのか」


「はい、今日もいました。それも4匹も」


 私が初めてオークスカウトと戦ってから2週間が過ぎた。

 寒さも大分収まってきていて、本当にもうすぐ春って時期なのに私やサンドロックさんの表情は晴れない。

 だって、オークスカウトの出現頻度が上がっているんだもの。


「実はな、シズクが倒している以外にもオークスカウトの目撃情報はあるんだ。〝ゴブリンの森〟の方でなんだが、下級冒険者どもが見かけて追い散らされたり逃げ出したりしている」


「普通は金貨じゃないと買えない魔鋼の武器ですら切れない皮膚ですもんね。下級冒険者じゃ逃げるしかないでしょう」


「ああ。だから、冒険者ギルドも下級冒険者にはオークを見かけたら、すぐに逃げ帰って報告しろって告げている。上級冒険者もオークスカウト狩りで近辺を警戒させているしな」


「そんなにいるんですか?」


「そんなにだ。最近、アダムのところに行ったか?」


「いえ。ダガーを受け取ったときに詳しいメンテナンス方法を教えてもらったきりです」


「ここだけの話にしてくれよ? いまアダムはオークスカウトの武器や防具、皮なんかで装備を作り続けている。いまオークスカウトどもが使っている剣や鎧は特別な素材でできているんで、この街じゃアダム以外の鍛冶師の手に負えねぇ。オークスカウトの皮をなめして革防具にできるのもアダムだけだ。アダムには悪いが大急ぎで装備類を整えてもらっているところだよ」


 そうだったんだ、知らなかったよ。

 でも、私が持ち込んでいる量だけでも結構多いのに、それだけの装備をなにに使うんだろう?


「あの」


「……シズク、オークが怖いなら早いうちにこの街から逃げろ。あと1週間もすれば手遅れになる」


「手遅れ?」


「偵察兵がこれだけ送り込まれてきてるんだ。間違いなくオークが戦争をふっかけてくる。そうなりゃ、街はオーク軍との全面抗争。特に冒険者は逃げ出すことが許されなくなる。いまならまだ逃げることも許されるぞ?」


「……私も戦えるんですか?」


「悪いが戦ってもらう。〝ペットテイマー〟として、手札を隠すことなくな」


「1日だけ時間をください。メイナさんがどうしたいのかを聞いてきます」


「わかった。メイナが避難したいと言いだしたら連れて逃げろ。この街の守りは俺たち先輩に任せな」


「ありがとうございます。それでは、失礼します」


 私はサンドロックさんと別れて夏の終わり頃からずっとお世話になっているメルカトリオ錬金術師店へ、メイナさんのところに戻ってきた。

 今日もメイナさんはお店で店番をしているね。


「あら、シズクちゃん、お帰り。今日は早かったね?」


「うん。メイナさんに確認したいことがあって」


「オーク軍のこと?」


「え?」


「私、錬金術師店の店長だよ? 冒険者ともつながりがあるの。冒険者が最近オークがらみで出かけ続けていることも知っているし、街が襲われそうなことも想像がつく。それで、シズクちゃんは私になにが聞きたいの?」


「あ、あの……メイナさんはこの街から避難しないの? もしオーク軍が攻めてきたら……」


「最悪殺されちゃうね。私、『天職』は〝錬金術師〟だし、戦闘系のスキルってひとつも持っていないし」


「……怖くないの?」


「怖いけれど……私、このお店を先代から任されちゃったし、この街が好きだから離れたくないな。シズクちゃんは?」


「……私もこの街に残りたい。私を1年間助けてくれたみんなを守りたい!」


「うん。それでいいんじゃないかな? でも、シズクちゃんも生き残らなくちゃだめだよ? シズクちゃんも私の家族みたいなものになっちゃったんだから」


 家族、家族かぁ。

 お父さんとお母さんは里に残っているから異境の地に家族なんていないと思っていたけど、メイナさんは私のことを家族だと思ってくれていたんだ!


「わかった! 私も必ず生きて帰ってくる!」


「うん、お願いね。さて、今日はもうお店を閉めちゃおう。お夕食はなににしようかな?」


 メイナさんが残るなら私も残る。

 そして、絶対にこの街を守ってみせるんだから!

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