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25. 冬も2カ月が過ぎ、もうじき雪解けが近づいてきた頃

 寒い冬も3カ月目に入って2週間が経過した。

 そろそろ少しずつ暖かくなる季節だけれど、外の移動ではウルフの毛皮でできたローブを手放せない。

 街の外では着て歩かないけどね。


 そうそう、冬に入った頃に助けてそのまま弟子になった6人組だけど、2カ月かけて徹底的に育てた結果、無事一人前の冒険者になってくれたよ。

 Eランクにもなれたようだし、最近はゴブリン退治も時々しているようだけど、基本は〝ゴブリンの森〟でウルフ退治と素材集めが基本らしい。

 Eランクに上がりたてで、まだ装備の整っていない彼らでは、ゴブリンとの戦いは厳しいって。

 でも、最初はウルフさえ怖がっていたベティもゴブリン相手に動けるようになったっていうから安心かな。

 私程度を踏み台にしてステップアップしてくれるなら嬉しいね。


 さて、そんな私だけど、今日もまたサンドロックさんに訓練をつけてもらっている。

 ペットたちもすごく強くなっているはずなのに、かすり傷ひとつ負わないサンドロックさんってやっぱりすごいなぁ。


「さて、今日はこんなもんか」


「ありがとうございます、サンドロックさん」


「おう。シズクもかなり動きがよくなったし、攻撃時も気配を消せるようになってきた。ペットたちとも適切に連携が取れているし、ゴブリンの群れくらいなら余裕で倒せるんじゃないか?」


「……そうだとしても、連れ去られたときに女の尊厳を踏みにじられたくないです」


「ああ、そっちの心配もあるか。アイリーンの街や冒険者ギルドとしては、このままウルフ狩り専門でやってくれても問題ないんだがな」


「それでいいならそうしたいです。それで街に貢献できている間は、ですけど」


「まあなぁ。シズクもいずれはこの街を出て行くかもしれねぇし、Dランク冒険者がいつまでもFランクのウルフばかりを狩り続けているってのも聞こえが悪い。シズクは気にしないかもしれないが、外野がどう思うかだな」


「難しい問題ですね」


「そうだな。冬の始まりから先月までお前が育てていたような新人が集まってくれるなら話は別なんだが」


「ルイスたち、元気でやってますよね?」


「俺も時々見かける程度だが元気にやっているぞ。いまは少しずつお金を貯めているところで、金が貯まったらいい装備を買う予定だそうだ。シルヴァ武具店を紹介してくれたことも感謝しているとさ」


「アダムさん、面倒見がいいですから」


「気に入らない相手はぶん殴ってでも追い返すがな」


「そうなんですか? 私は初めて入ったときから親切にしてくれましたよ?」


「お前さんなら偉ぶったところはなかっただろうよ。道具も大切に扱っていただろうし、まさにアダム好みの上客だ」


 そうなのかな?

 アダムさんにはいつもおまけしてもらえているんだけど……。


「ともかく、あの6人も元気でやってる。いまはまだ無理だが、将来自分たちと同じように困っている冒険者がいたら手助けしてやりたいとも言っていたな」


「それだと嬉しいです。私も手助けした甲斐がありました」


「お前さんもつくづくお人好しだな。それで、丘の方はどうなっている?」


 はい、私の警戒対象は〝ゴブリンの森〟からシラタマに会った丘へと移行した。

 ゴブリンの巣には1カ月に1回定期的に駆除を行うことにしたみたいで、ある程度ゴブリンとの戦闘経験を積んだパーティ限定らしいけど割のいいお仕事だとか。

 それによって〝ゴブリンの森〟外周部におけるゴブリンの出現率は激減、私の元弟子なども含めていくつかのパーティが定期的に狩りをしているため、そちらの警戒はもう必要ないとか。


 代わりに私が命じられたのはシラタマと出会った丘、私が名付けたところの〝シラタマの丘〟を定期的に見回ることだった。

 あちらの近くにもウルフのコロニー、つまり大きな巣があるらしくそこからあふれ出してきたウルフがいないかを調べてほしいとのことで。

 私としてもシラタマの仲間はもういないけど、他にもいくつかのウサギたちが暮らしている巣があるらしいので、これ以上犠牲を出さないためにも都合がいいお願いなんだよね。


「〝シラタマの丘〟も平和ですね。スノーウルフが歩き回った足跡はありましたが、そちらも定期的に駆除しています。いまのところは異常ありません」


「〝シラタマの丘〟ねぇ。いまじゃギルド員や一般冒険者までその名前で呼び始めているんだぞ、あの丘」


「いいじゃないですか。〝ウルフの林〟とか〝ゴブリンの森〟よりかわいくて」


「名前を使われたシラタマ自身も気にしていないようだし、特定地域の呼称があった方が楽なのは事実だが……かわいらしい名前になったもんだ」


「〝残虐ウルフの丘〟にでも変えます?」


「〝シラタマの丘〟の方がいい」


「じゃあ、そちらで」


 とまあ、こんなたわいもない話をしながら今週の訓練も終了。

 私はその日の午後も〝ウルフの林〟でウルフ狩りを行うことに。

 それで、ひたすらウルフを狩り、40匹を超えたくらいで今日の狩りを終えようとしたんだけど……なんだか嫌な予感がしてきた。

 なんだろう、この嫌なざわめきは。


「キントキ、私を乗せて〝シラタマの丘〟に行ってくれる?」


『いいけど、急にどうしたの?』


「なんだか嫌な予感がするの。みんなも集まって」


『わかった』


『了解だわさ』


『乗ったよ』


『じゃあ、枝にぶつからない程度の全速力で行くよ』


「うん、お願い」


 キントキも成長とともに走る速度が速くなって、いまじゃ馬なんて目じゃない速度になってる。

 そんなキントキなら〝シラタマの丘〟もすぐなんだけど……一体なに!?

〝シラタマの丘〟がウルフであふれかえってる!?


『シズク!』


「わかってる! みんな、ウルフを倒すよ! 今回はお肉とか気にしなくていいからどんどん倒しちゃって!」


『わかった!』


『これはおかしいわさ!』


『異常事態だよ!?』


 私は仲間(ペット)たちと手分けして〝シラタマの丘〟にあふれかえっていたウルフを全部やっつけた。

 血の臭いがすごいけれど、キントキと分担して解体魔法(ディスアセンブル)でウルフの死骸を解体し《ストレージ》に格納、全部が終わったら街門を閉じる時間ぎりぎりになっちゃった。


 でも、このことは急いで冒険者ギルドに伝えないと!


「キントキ、疲れているかもしれないけれど」


『早く僕に乗って、みんな!』


『話が早くて助かるわさ!』


『あたち、もう乗った!』


『シズクも急げ!』


「うん!」


 ああ、もう!?

 一体なにが起こっているの!?

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