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ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~  作者: あきさけ
第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第4章 秋の訪れ、少しずつ強く成り行く私とペットたち
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16. マジックバッグをもらいました

 今日と明日は〝ゴブリンの森〟大掃除のため、私は街から外出禁止。

 せめて薬草だけでも取りに行こうとしたら、門衛さんから止められてしまった。

 私、今日と明日は本当にお仕事をさせてもらえないみたい。


 仕方がないのでペットたちをメルカトリオ錬金術師店に預けて街の図書館に行き、入館料を支払ってから蔵書の魔術書を読んでみたけど、やっぱり難しいね。

 新しい魔法を覚えるには〝魔術式〟って言うものを理解しなくちゃいけないみたいだけれど、私にはそれの知識すらないもん。

 だから、図書館に来たときの勉強内容は〝魔術式〟を覚えるための〝魔術学入門〟からスタートしている。

 時々しか来ていないから進捗度合いもまばらだし、読み返さないとわからなくなることも多くて大変だけど、この内容を頭に入れないと魔法を増やせないんだよね。


 いま増やしたい魔法の筆頭はシラタマの《回復魔法》なんだけど、《回復魔法》は特別難しいみたい。

 シラタマから借りている時点で軽い怪我を治せる《ヒール》と、ちょっとした毒を治せる《キュア》が使えるけれど、それだけだとまだまだ足りないの。

 シラタマが魔法を使う分には、ペット用ご飯で成長していけば増えるらしいけど、私が借りるときは自分が覚えている魔法しか使えないものね。

 せめて、ある程度深いも傷を治せる《ミドルヒール》と各種専用解毒魔法は覚えたいけれど、先は長そう。

 サンドロックさんからも実戦訓練を受けているし、アダムさんからも目利きの講義を受けているから実際に図書館へ通えるのは週に2日か3日だからね……。

 もっと勉強したいけれど、どうしようもないや。


 とりあえずこの日は他にやることがなかったから、1日いっぱい図書館で過ごすことができたし、かなり〝魔術学入門〟も読み解けた。

 これなら〝魔術学入門〟と〝回復魔術書〟を読み比べて新しい魔法を覚えられるかも。

 明日もどうせ一日中街の中だし、図書館にずっと居よう。

 ペットたちには申し訳ないけれどね。


「ただいま戻りました」


「あ、シズクちゃん。お帰りなさい。今日はなにをして過ごしていたの?」


「1日中図書館で〝魔術学入門〟と向き合っていました。大分理解も進んで来たので、そろそろ新しい魔法を覚えるための準備に入ろうと考えています」


「よかったわ。キントキやモナカ、シラタマも魔法が使えるみたいだけれど、それだけじゃ心配だったもの」


 うん、私はいまだにメルカトリオ錬金術師店でお世話になっている。

 というか、メイナさんが他の宿に移らせてくれないんだよね。

 ペット同伴のできる宿なんて滅多にないし、メイナさんもペットたちが気に入ったみたいだし。

 あと、メイナさんにもペットたちがスキルを使えたり、私がそのスキルを借りたりすることができることを教えた。

 一緒に暮らしているのにあまり内緒にしておきたくなかったから。

 ミネルの許可も出たし、話しちゃった。


「それで、昨日は〝ゴブリンの森〟で危ない目にあったんだよね? シズクちゃんって普段はポーションとかを持ち歩いているの?」


「えっと……それは……」


 ポーション、つまり錬金術で作り出した即効性のある怪我の回復薬だ。

 結構値がはって、1本銀貨4枚はするし、魔力を回復するマジックポーションになるとその倍はする。

 それに、ポーションは劣化しないための保存瓶に入っていてその瓶も頑丈なんだけど、割れちゃうときは割れるからね。

 ウルフ狩り専門の私はどうしてもためらう高価な買い物なんだよ。


「その様子、1本も持ち歩いていないようね?」


「……はい」


「これからは〝ゴブリンの森〟でもウルフ狩りをするんでしょう? ゴブリンにばったり遭遇したときに備えてポーションの2、3本用意しておきなさい」


「いや、でも……ポーションだって割れるときは割れるじゃないですか。高価だしシラタマがいれば安全かなって」


「シラタマはまだ《ヒール》と《キュア》しか使えないんでしょう? あなたの鎧が頑丈なのは知っているけど、関節とかの鎧で守られていないところを攻められたら大怪我しちゃうよ?」


「それは……」


「というわけで、私からプレゼント。ポーション5本とマジックポーション3本。受け取ってね」


 ポーション5本にマジックポーション3本……って!

 これ、大銀貨どころの騒ぎじゃない!?


「メイナさん、もらいすぎです! もっと少なくても大丈夫ですから! マジックポーションとかもいらないですから!」


「だーめ。それに、そのポーションだって普段シズクちゃんが採ってきてくれている薬草から作ったポーションだよ?」


 え?

 ポーションは薬草から作られるって聞いているけど、マジックポーションは魔力草じゃなかったの?

 私、魔力草なんて採ってきてないよ?


「……ひょっとして気付いていないの? シズクちゃんが採ってきてくれたいる薬草に魔力草が含まれているのを」


「……初めて知りました」


「シズクちゃん、冒険者をやっていくなら薬草や魔力草の見分け方とかも覚えなくちゃだめだよ?」


「はい」


「ともかく、そのポーションはシズクちゃんのもの。素材だって高価な薬草類はシズクちゃんが集めてきてくれたものだし気にしないで受け取って」


「わかりました。でも、私、ポーションホルダーとかウエストポーチとか持っていないです」


 ポーションホルダーとはその名前の通り、ポーションを身につけておくための革でできたベルトのようなもの。

 ポーションが落っこちないように工夫されていて、なおかつ、取り出すときは取り出しやすいっていう優れものなんだよね。


 ウエストポーチもその名前の通り、腰につけるカバン。

 ポーションだけじゃなくてお金とかもしまえるから便利ではあるけれど、すぐに使えないのが難点かな。


 ただ、どっちもポーション瓶に強い衝撃が加わってしまうと割れちゃうのは変わらないんだけどね。


「シズクちゃんがどっちも持ってないことなんて知っているよ。だからお姉さんがきちんと用意しておきました」


「メイナさん、そこまで用意しておいてくれたんですか?」


「まあ、売り物として作ろうとしたものの失敗作なんだけどね。魔法処理も施してもらったから魔鋼のナイフでも切れないくらい頑丈にしてあるから大切に使ってよ」


 そう言ってからメイナさんが取り出してくれたのは青黒い革のウエストポーチ。

 ポーションホルダーも2個付いているから緊急用はそこにつけておけっていうことなんだろうね。

 でも、この色って……。


「ね、ねえ、メイナさん。こ、この、革って、キラーブルの革じゃ?」


「そうだよ? 売り物にしようとした失敗作って言ったでしょう?」


「ちなみに、どうやって売り物にしようとしたんですか?」


「え? マジックバッグ」


「マジックバッグ!?」


 キラーブルの革で作られたマジックバッグって高級品だよ!?

 そんなのもらっていいの!?


「そんな高いものいただけません!」


「大丈夫だって。空間拡張の付与に失敗して容量5倍にしかできなかった失敗作だから」


 確かにポーチ部分はあまり大きめではないけれど……容量5倍って……。

 失敗作でも金貨が10枚以上かかるよ!?


「やっぱりこんな高級品……」


「はい、認証完了」


「え?」


「個人認証の魔法もかけちゃったから、普通の人にはただのウエストポーチになっちゃった。だから、あなたに使ってもらわないと困るな?」


「いや、困るなって……」


「シズクちゃん。私だって心配したんだよ? ゴブリンに襲われたって聞いたときは」


「は、はい」


「ここは錬金術師店なのにポーションを買っていったことなんて一度もないし、そこのところどうしているのかすっごく不安だったの。わかる?」


「ご心配をおかけしました……」


「反省できればよろしい。そういうわけだから、明日からそのバッグを常に持ち歩くように。ああ、あと、毒消し薬も買っていってね。そっちは薬草を納品してくれていないから、普通に買い取ってもらうけれど」


「はい、買い取ります」


 キラーブルの革製マジックバッグなんてお礼はどうすればいいの!?

 ただでさえ、毎日泊めていただいて朝食と夕食をごちそうになっているのに!?

 今度からはメイナさん用のウルフ肉も多めに確保して持って帰ろう……。

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