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280話 歌

 いつも通りの報告会が続くと思ったら最後の最後にサクラから爆弾が投下された。


「セレスたち何時になったら夫婦になるの?」

「は? ふぇ? ひょへ?」

「あはは、動揺しすぎ。……後で龍馬に発破かけないと」


 サクラがぼそっと恐ろしいことを呟く。


「待って待って。まだ心の準備が……」

「そういってもう何年経ってるのさ……。さっさとアタックしなよ」

「うぅ……」


 確かに私は龍馬が好きだけど龍馬は神で私は眷属だし……。


「うだうだうるさい。私とカトレアだって神と眷属の関係だよ!」

「うっ」


 それを言われると弱い。で、でも二人は二人が神でも眷属でもない時に付き合ったじゃないか。


「アピールしないといつまで経っても娘だか妹としてしか見られないよ?」

「分かってるよぅ」


 耳が痛い。私も怠惰の大罪の影響が抜けて成長したとはいえまだまだ子供っぽいことは自覚してる。


「イエローとかいう他の世界の神様も龍馬を気にしてるみたいだし……」

「誰!? それ誰!!?」

「神界の恋愛ブームで龍馬が盗られちゃうかもよ?」

「うぅぅ」


 他の誰かと龍馬が仲良くする姿を想像して落ち込む。少なくとも私よりも釣り合いそうだよ……。


「それが嫌なら頑張ってね」


 サクラは冷たく突き放すと連絡を切った。酷い!


 ―――


 数日後、少しおしゃれをして龍馬の前に立つ。気付いてくれるかな……。


「ん? 今日は気合入ってんな。いいことあったか?」

「ん、そういうわけじゃないんだけど……で、でーといかない?」


 サクラのアドバイスに従って上目遣いでお願いする。サクラは大丈夫だって言っていたけど固まった龍馬を見て心配になり思わず裾を掴んでしまう。


 少しして顔を手で覆い天を仰いだ後、頷いてくれた。よし! 第一段階クリアだ!


 そのまま龍馬を急かして一緒に地球へと降りる。龍馬は神として世界に干渉できないように神の力を封印中だよ。


「どこを回る? 決まってなかったらエスコートしようか? レディ?」

「お願いします」


 うぅー、龍馬かっこいいよぉ。思わず顔が赤くなりつつも龍馬が出してくれた手を掴む。


 地球に普及したSDSの記念館を見て実際のサクラとの違いを見たり水族館や動物園に行ってアースフィアの生き物との違いを見つけたりしつつデートを楽しむ。


 サクラに渡すお土産も買い、夕食にちょうど良い時間がやってきた。


「ここでいいか?」

「うん。いいよ」


 夕食に連れてこられたのは大人っぽくておしゃれなお店だった。私が入ってもいいのかな?


「大丈夫だ。自信を持っていい」

「ひゃいっ!」


 尻込みしてる私に顔を近づけて耳元でささやかれる。うぅ、言葉が凶器!


 龍馬の真似をして必死にマナーを守りつつ食事をする。……緊張で味が感じないよ。


「もっと気楽にして大丈夫だぞ? 美味しいものも味が分からなかったらもったいないだろう?」

「……ごめん」


 私に大人っぽさはまだ早いと突きつけられているようでショックを受ける。……あと十年、いや五年は成長するの待ってからに――「龍馬が盗られちゃうかもよ?」――ダメだ! 弱気になった私の脳裏にサクラの言葉がフラッシュバックした。


「大丈夫。美味しいよ」


 むんと気合を入れて飲み物をあおる。そろそろこ、こくはくしようかな。


 ドキドキと心臓の音が大きくなってくる。顔が火照ってきて龍馬がいつもよりかっこよく見えてくる。あぁー、心臓が飛び出しそう……ぐぅ。


 ―――


「寝ちまった……酒に弱かったのか。いや、魔力が働いてない状態だからか?」


 すやすや気持ちよさそうに眠っているセレスの頭を撫でる。本人は自覚が無いかもしれないけどここ数年で立派な女性に成長したセレスが酔ってとろんとした顔で見上げてくるのは反則だろう。


 サクラにもせっつかれてるけど……こういうのは俺から言わないとダメだよな。俺は神で、セレスは俺の眷属になったから俺が告白すると命令になると思って言えなかったけど……。


 セレスを背負い、食事の料金を払う。夜の公園のベンチでセレスの酔いが醒めるのを待つ。本当は食事の終わりにでもと思っていたけど、俺らしく。セレスに気持ちをぶつけよう。


 ―――


 涼しい風が頬を撫でて目が覚める。なんかしっかりして落ち着くまく……ら?


「おはよう。酔いは醒めたか?」

「ひょわ!? ひ、ひざまくら??」


 あれ? 普通逆じゃない? なんで龍馬が私に膝枕を……寝顔を見られた!?


 頭がパニックになってるとおでこを押さえつけられる。にゅわわわわ。


「セレス。落ち着いて聞いてくれ」

「何? くび? いたっ」


 酒に酔っぱらうやつは眷属にいらんと捨てられるのかと思って聞いてみたらチョップされた。酷い!


「セレス。――」

「うん。……うん!」


 顔を真っ赤にして思わず横を見ると九匹の猫が目に入る。


「あ、猫……」

「親子みたいだな」


 白と紺の親猫に金、黒、青、赤、銀、桜、水色の子猫達が寄り添っている。


「みんなを思い出す配色だね」

「おう」


 みんな(兄弟)を想って龍馬と二人、歌を歌う。これからもずっと想いを込めて……

これにて小さな龍の鎮魂歌(レクイエム)完結となります!

ご愛読ありがとうございました!


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