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279話 セレスの冒険 下

「本当にこの先であってるのね?」

「うんうん。ここを直進して!」


 お姉さんの車に乗ってテロの現場に直行する。この速度なら間に合いそうだ!


「弁護士の私が交通法違反すれすれの行為をすることになるなんて!」

「大丈夫大丈夫! 法が許さなくても(龍馬)が許すよ!」

「……危ない子だったかしら」


 ばれないように注意しつつ魔法でこっそりと補助をする。ふふん。快適だね!


 無事現場に到着するとスマホに表示されたタイムリミットがゼロになる。ぴったり間に合った! ゴーーール!


 どかん!


 突然の爆発と共にビルが吹き飛び、鉄骨がいくつか地面にめり込む。だ、大惨事……。


「きゃあ。本当にテロが起きるなんて……警察! 警察に連絡しないと!」

「あれぇ?」


 間に合ってないじゃん! 龍馬の嘘つき!

 お姉さんが慌ててスマホをタップするのを横目に龍馬に連絡を取る。


「龍馬の嘘つき!」

『このおバカ! タイムリミットぴったりに合わせるんじゃない!』

「なんで私が怒られるのさ! 間に合ったもん!」

『間に合ったとはいわんわ! まあセレスのおかげで問題にはならなかったが……』


 んん? それってつまり? 私のおかげで大問題にならなかったってこと? ふふん。さすが私!


 連絡を切ってお姉さんに向き合う。


「中に突入しましょう! 何か分かるかも!」

「ダメです。警察と救急にお任せしますよ」

「えぇー」


 それじゃあ犯人がどうなったか分からないじゃん!


「なにかあったのか? 仕方ない。迂回するか」


 遠くにビシッとビジネススーツを決めた中年の男が見えた。あの人私が絡まれてる時の野次馬にいたような……?


「気になることでもあった?」

「ううん。なんでもないよ。それよりそろそろ帰ろう?」

「ダメよ!? できればあなたの情報提供者にも話が聞きたいし……」


 ……どうしよう。龍馬をここに呼ぶわけにはいかないよ。未来に重要な人材を助けるためとか言えないし……。だらだらと冷や汗が出てくる。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。あなた達は止めようと動いていたと私も証言してあげるから」

「あ、ありがとう」


 少し勘違いしてるお姉さんが心配してくれるけど……帰っていいかな?


 結局お姉さんに捕まったまま警察と救急隊員が来るまで待つことになった。現場を確認した人たちの話だとテロリストは既に死んでいたが、現場となったビルの中には重傷者が多くとも奇跡的に死者は出なかったって。


 私も簡単な聞き込みをされた。情報提供者についても聞かれたから龍馬に連絡してそのままスマホを貸してあげた。私がどうこう言うよりもきっといい感じにまとまると思う。


 それにしても……私が関与しなくても誰も死なないなら私が来た意味なかった気がするな?


 全てが終わって解放されたときにはすでに外が暗くなっていた。


「家まで送りましょうか?」

「! ううん。一人で帰るから大丈夫だよ。ありがとう」


 お姉さんが車から顔を出して聞いてくるのを断る。車じゃ私達の家には帰れないからね。

 気持ちは嬉しかったからお礼にお姉さんに幸運が降りかかるように祈ってあげた。きっとこの後幸せになれるよ!


 ―――


 神界へ帰りさっそく龍馬に文句を言う。


「りゅうま~? 私が行った意味あったの?」

「ああ、おかげであいつが死なずにすんだ」


 そういって龍馬が指さしたのはビジネススーツの中年男性だった。


「あのおじさん!?」

「ああ、あのおじさんは今後魔力抽出装置を作り上げる重要人物なんだけど今回のテロに巻き込まれて死ぬところだったんだ」

「んぅ? テロが起きたビルに用がある様子じゃなかったよ?」


 道が封鎖されているのを見て迂回していたしただの通り道だったと思う。


「運悪く飛んできた鉄柱につぶされるところだったんだよ。セレスが男に絡まれたときの野次馬に邪魔されて到着時間が遅くなって回避できたみたいだな」

「さ、作戦通り!」

「嘘つけ!」


 ふざけたら頭にチョップをされた。可愛いただのお茶目じゃないか! 龍馬の意地悪!


 不貞腐れて地面に転がると龍馬が苦笑する。


「ほれほれ、ありがとな」

「……むぅ」


 やっぱり龍馬はずるい。頭を撫でつつお礼を言うだけで許したくなっちゃうんだから。くふふ。


 ―――


 その後、何事もなく数日が経過し、定期的に行っているサクラとの情報交換会という名の女子会が始まる。


「もしもしセレス。時間は大丈夫?」

「はいはーい! セレスだよ! もちろん大丈夫! サクラは何かあった? 私はね――」


 サクラも私に合わせてスマホを創って連絡をしてくれている。サクラからは新しい神霊達が可愛いこと、コハルが成長したこと、カトレアが可愛いという惚気などの報告を聞く。

 私は龍馬が何をしていたとか、サポート係として何をやったとか報告をする。


 いつも通り楽しい平和な報告会で終わりになるはずだったのにあんなことになるなんて……。私は思ってもいなかったんだ。

次話は明日の17時投稿予定です


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