275話 父娘喧嘩
今回は少し短めです
様子見として魔力弾を撃つ。魔力だけは自信があるから数で勝負!
「……舐めてるのか?」
「う、舐めてないもん!」
私の攻撃を見たアービシアは呆れた顔をして魔力弾を弾く。……全く効いてないよ。
うぅ、でも私は世界の管理者だから世界の力を借りれるの!
「支配者」
世界への指令はアービシアに魔力を供給しないこと。そして私の攻撃が必中になること。これで時間をかければ一方的に勝てるはず……!
「興覚めだな」
「ぐっ」
想定と異なり私の攻撃は一切アービシアにダメージが当たらない。アービシアの攻撃は尽きることがなく私は逃げ惑うしかできない。
「さっきの死にぞこないの方が強かったぞ」
「セレス様と比較しないでっ!」
いくら神だとしても長年生きてきたセレス様とほんの数十年生きただけの私と比較しないで欲しい。勝てるわけないじゃん!
苦し紛れだと分かりつつも魔力弾を撃ち続ける。……なんで効かないの!?
「いい加減にしろっ!」
「きゃあっ」
呆れた顔のアービシアにお腹を蹴られる。いたいいたいいたいいたい。
なんで私がこんな目に……。
「死ねば楽になれるぞ?」
「うぅ」
頭を思いっきり踏みつけられる。なんで私はこんな奴と戦ってるの? こんなつらい思いをしながら戦う必要はあるの? 辛くて悲しくて、涙が溢れてくる。
「……はぁ、親としての慈悲だ。痛み無く殺してやる」
私が黙って泣いてるとアービシアの剣が頭上に迫る。
私は……私は……これで楽になれる……?
ギュっと目を瞑るも、体は生きたかったのか。無意識で転がって躱した。
「あがくな。下手に躱すと余計に痛い思いをするぞ。父としてもお前をこれ以上苦しめたくない」
「う……うぅ」
目を開けるとアービシアの冷ややかな目が見える。私のことを想っての言葉ではなく楽に処分したいからそう言ってるだけなのが分かった。
なんでだろう。以前にもそんな目を見たことがあるような……。
お母様はそんな目をしない。お父様は今日会ったのが初めてだ。どこでこの目を見た? そうだ、私が**のとき。**ってだれ?
でも、一つだけ思う。
私は……生きなければいけない。
私は……アービシアを倒さないといけない。
私は……私は……オリディア様、セレス様、カトレア、コハル、そして**の想いを無駄にしないためにも……。
負けるわけにはいかないんだ!!
「やっぱり死ぬわけにはいかない! 何としてでも生きるんだ!」
「……うざいな。落ちこぼれのくせに。俺様と同じのくせに。なぜそんな力強い目をできる」
「なぜって? 私には皆がいるんだ! お前と違って私は……俺は一人じゃない!」
私の中で紅の魔力と桜の魔力が混ざり合い、マゼンタ色の魔力へと変わる。
「サクラ・トレイル・マゼンタの名において誓う! 俺のすべてをかけてアービシア・エルネスを討つ!」
「くはははは。やってみろ!」
マゼンタ色に変わってもできることは桜の魔力と変わらない。ただし、再構築できる規模が変わってくる。
「貫け!」
世界の空間に干渉して見えない棘を作り出す。そのまま刺突をすると見せかけて桜華を振りかぶる。
「腑抜けが治ったな!」
感知できないはずの棘を嫉妬の力で凌いだアービシアの耳を切り落とした。
「おいおい、その刀は物理的ダメージができないんじゃなかったか?」
「私の魔力が何か忘れてない?」
もちろん私がつけた傷は治らない。そのことに気付いたアービシアの眼の色が変わる。
天魔と桜華でアービシアを攻撃しつつマゼンタの魔力でアービシアを包む。
「ちっ。突然面倒になったな」
勘か何かで私の攻撃に気付いたアービシアが距離を取る。よし、今だ!
「崩壊」
「くそがぁ!」
アービシアが羽をはやして盾にする。ふうん? 攻撃されると消滅して再生しなくなるから余分な部位を先に作ってしまおうという魂胆か。
天魔と桜華の二刀流でアービシアを追い詰めていく。精神への干渉と斬撃と刺突とを織り交ぜつつ嫉妬の対策をする。
「やるな。高ぶってきたぞ!」
「うるさい。黙ってやられろ!」
嫌な奴と戦ってるはずなのに自然と口角が上がっていく。世界がかかった戦いのはずなのにとても楽しい。
「笑うとは余裕だな!」
「そっちこそ楽しそうだね! 世界を滅ぼすの止めたらどう?」
黒の魔力でできた剣と天魔がぶつかり合う。少しの間拮抗したのち、天魔が折れた。
「限界が来たようだな」
「まだまだだよ」
折れた天魔をマゼンタの魔力で作り直す。
私がイメージして作るのはやっぱり……。
「千本桜・爆」
魔力を桜の花のように散らす。一つ一つが触れた箇所を対消滅させる爆弾となっている。先ほど権限として私の攻撃は必中の攻撃となる。
本来であれば対消滅なんて現象が起きたらここら一体が吹っ飛ぶけど今の私なら吹き飛ぶ範囲に境界を作ることも可能だ。
「先ほどと変わってないぞ?」
「本当にそう思う?」
氷華に魔力を込めてアービシア周辺の空気を一部凍結させる。さあ、迎撃しろ!
「ぐぬっ! ぬわーーー」
アービシアの叫び声と共に爆炎がアービシアを覆う。
「終わった?」
あまりにもあっけない結末に間の抜けた顔をしつつアービシアのいた場所に近付いていく。
「……殺せ」
「うん。抵抗しないでくれて嬉しいよ」
氷の檻でボロボロになりつつ横たわったアービシアが一言告げる。
氷華を使ってアービシアの首を切り落とした。
次話は明日の17時投稿予定です
評価とブクマ、いいねをお待ちしております!