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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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266話 再構築

 桜華に魔力を込め、オリディア様に向き合う。


「オリディア様……」

「サクラちゃん。……ありがとう」


「ダメ! いくらサクラでも許さないよ!」

「セレス。私を信じて」


 私とオリディア様の間に立ち両手を広げて威嚇してくるセレスの肩をそっと掴む。

 黙って避けたセレスの横を通り過ぎてオリディア様の前に立った。


「オリディア様。痛いかもしれないけど我慢してくださいね」

「私を誰だと思ってるの? 母は強いのよ」


 神じゃなくて母……か。それは強い。ならきっと大丈夫だ。


「母なら……負けないでください」

「うっ」


 桜華をオリディア様の胸に突き刺す。そして桜華を通じてオリディア様に魔力を行き渡していく。


「サクラ……ちゃん?」

「もう少しじっとしていてくださいね」


 驚いた顔のオリディア様に優しく笑いかける。今のオリディア様は体中に激痛が走ってるはず。でも、セレスのためにも我慢して欲しい。

 オリディア様の枯渇した魔力を補うように、怪我が治るようにイメージをしつつ魔力を浸透させていくとオリディア様の顔色が良くなっていく。


 少しして十分だと判断した私は桜華をオリディア様から引き抜いた。


「ごほっ。ごほっ。サクラちゃん……何をしたの?」

「私の桜華は少し特殊な刀なんです。痛みは与えるけど傷を与えない。精神を切る刀です」


 天魔が物体を切り、桜華が魂を切る刀だと気が付いたのはラティナから刀を受け取ってすぐだった。魔物の素材が欲しい時に傷一つつけずに殺せるから便利なんだよね。


「いやいや、それじゃあ説明がつかないわよ! 神の精神を傷つけるだけならまだしも怪我が治ったのよ!?」

「怪我を直したのは桜華の力じゃないですよ。私の魔力で干渉しました。私の魔力の特性は干渉みたいなので」


 桜華で刺したのはあくまで魔力を通す穴を作るためだ。神相手だと精神が強すぎて普通は桜華の刃が通らないけど弱っていたオリディア様だからこそうまくいったんだと思う。

 私が良かったと頷いているとぶつぶつ呟いていたオリディア様がはっとする。


「干渉? サクラちゃんの魔力の特性はたぶん――」

「すまねえサクラ! 後ろだ!」


 オリディア様が何か言いかけた時にアビスが龍馬を躱して真後ろに来た。真っ黒な剣を振り上げている。

 ちょっ! 待って! 反応できない!


 黒い剣がゆっくりと目の前に迫ってくる。死ぬ間際だからスローモーションに見えてるってやつ? 迫りくる剣からアビスを倒す鍵となるオリディア様を庇い、衝撃に備えて目をつぶる。ごめん。カトレアちゃん。


「させないよ!」


 剣が私に振れる直前、セレスが私とオリディア様の体を突き飛ばした。


「セレス……」


 地面に突っ伏していると胸にぽっかりと穴が開いた感覚がする。立たなくちゃ。セレスの無事を確認しないと。でも見たくない。確認したら取り返しのつかないような……。


「サクラーー!! 動け! セレスの想いを無駄にするなよ!」


 龍馬の言葉に体が勝手に動く。呆然とするオリディア様を庇いつつアビスから距離を取った。


「セレスちゃん……」


 私達が先ほどまで立っていた場所に目を向ける。アビスの向こう側に上半身と下半身が切り分けられたセレスが横たわっていた。


 ごりっと何かが欠ける音がして口の中に血の味が広がる。アビスめ……よくも。よくもやってくれたな!!


 天魔と桜華を両手に持ってアビスに切りかかる。


「その剣は狡いな」

「死ね」


 天魔でアビスの持つ剣を切り落とし桜華でアビスを刺す。簡単には殺さない。精神的痛みを受け続けろ!


「ふんっ」


 新しくできた黒い剣で応戦されて一度距離を取る。もう一度だ。


 天魔でアビスの攻撃を捌きつつ桜華で何度も何度も切りかかる。それでも我慢強いのか顔色一つ変えないアビスに腹が立ってきて天魔を振りかぶった。


「サ クラ……ころしちゃ だめ……」


 天魔を振り下ろす直前、セレスの弱弱しい声が聞こえて動きを変える。


「セレス! セレス! 今治してあげるから!」


 天魔の鞘でアビスを殴り飛ばしてからセレスに駆け寄るとオリディア様に抱きかかえられたセレスが私ににっこりと笑いかける。


「くふふ。さすがに サクラでもむりだよ……」

「無理なもんか! 勝手に諦めるな!」


 涙でセレスの顔が良く見えない中、魔力を思いっきり注ぎ込む。なんでセレスの再生が始まらないの? 龍馬は何をしてたの?


「サクラちゃん」


 魔力でセレスに干渉して傷を治せないか考える。どうすればいい? どこから治す?


「サクラちゃん!」


 龍馬の紅の魔力を探す。ほんの僅か、セレスの体が真っ二つになっても生きていられるのに必要最低限の魔力を感じ取ってなんで再生できないのか悟る。

 アビスがセレスから私と龍馬の魔力を奪い取ったんだ……。龍馬が外から再生するための魔力を注ぎ込んだ名残があるけど体に残った黒の魔力の残滓の方が強く影響してるみたいだ。


「サクラちゃん!!」

「黙っててください! セレスを助ける方法を探してるんです!」

「方法を教えるわ! だから話を聞きなさい!」


 頬を覆うように掴んできたオリディア様の手を振り払うとビンタをされた。びっくりしてオリディア様を見るとセレスが助かると確信を持った目で私を見ていた。


「何をすればいいですか」

「いい? サクラちゃんの魔力の特性は干渉じゃないわ。干渉はただの入り口よ」

「入口?」

「そう、あなたの魔力の特性は――」


 オリディア様の説明を聞いてからセレスに魔力を送る。上手くできるか分からないけどやるしかない。


 イメージするのは桜のブローチ。傷が癒えるように一人で寂しくないように。私やオリディア様、神霊達をイメージした花を添えて中心にセレス(・・・)だったもの(・・・・・)を配置した。


「うまく……いったかな」

「ええ。自信を持って」

「いつ元に戻るんだ?」

「傷が癒えたらかな」


 オリディア様曰く私の魔力の特性は再構築だという。セレスに干渉し、分解した後ブローチとして再構築したのだ。分解したときはドキドキしたけど上手くいって良かった。


 セレスのブローチを胸元に付ける。


 再構築か。この魔力があればオリディア様だけに頼らなくてもなんとかなるかも。

次話は明日の17時投稿予定です


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