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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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265話 決断

 アビスが消えてから念のため少し待つ。


 …………。復活しなさそうかな? 少しあっけなかったけど無事に終わったならなによりかな。


「サクラ……倒しちゃったの?」

「え? だって中途半端だと復活しちゃうから……」


 私、なにかやっちゃいました?


「なにかやっちゃいました? じゃないよ! アビス倒の命はお母様と繋がってるんだよ!?」

「あ……」


 もしかしなくてもやっちゃってましたね……。


「おいアビス! 気合を入れろ! あんな攻撃で死ぬな!」


 慌ててアビスが生き残っていないか魔力感知で探る。ここには私達三人以外残ってないみたい……。

 なんで私は何もないこの世界に封印しようとした相手の心配をしてるんだろう……。


「落ち着けサクラ。落ち着いて魔力感知をしてみろ。得意分野だろう?」


 龍馬の言葉に深呼吸してから魔力感知を再度行う。


 アビスはいなさそう……おや?

 ふと違和感を覚える。ここがオリディア様の創った空間ならアビスが死んだときにこの空間も消滅するんじゃ?


「オリディア様は生きてるってこと?」

「可能性は高いな。いいかえればアビスも生きてるってことだが……」

「そうだね」


 なんとか首の皮はつながったみたいだね。


「まあ仕方ないよ! 聞いたのついさっきだし!」

「うん。ソウダネ。アハハハハ」


 オリディア様とアビスがもともと同一人物で一蓮托生だって知らなかったのならまだしも聞いた後にすぐ考えておくべきことだったよね……。


「じゃ、アビスのところに向かう前にどうするか考えておくか」

「ごめん、ありがとう」


 中途半端な攻撃は再生……いや、なかったことにされるから一撃で仕留めないといけない。でも虎の子の龍桜でも逃げられたし……仮に殺せたとしてもオリディア様が死んじゃって世界が滅びる。

 ならアビスの考えを変えさせるか……もう一度封印するか。


「誰か封印術持ってる?」

「ないな」

「今は持ってないかな」


 怠惰の大罪(ベルフェゴール)があれば封印も可能だったのかな? でも分かっていた通り今は封印の手段はないと。


「じゃあアビスを更生させられると思う?」

「無理じゃない?」

「むしろなんで更生できると思ったんだ? ひねくれたやつがこんなところに封印されてずっと恨みつらみをため込んでいたんだろう?」


 アビスになる前(アービシア)はオリディア様とも普通にはなしていたからもしかしたらって思ったけど……対峙したときに見えたアビスの眼は達観していて感情が読めなかったね。


「詰んでるじゃん……」

「お母様に聞いてみよう」


 オリディア様ならアビスのことも良く知ってると思うし何か妙案があるかもしれないね。


「ならここを出ないとな」

「そうだね。まずは神界に戻ろうか」


 ゲートを開いて神界とつなげて移動する。


「こっちも物が少ないけどアビスが封印されていた場所よりはマシだね」


 なにが違うんだろう。見た目は向こうの方が綺麗だったのにな。


「余計な事考えてる場合か。シアンのところに行くぞ」

「うい」


 再びゲートを開いてアースフィアのオリディア様のところへつなげる。

 ゲートを潜ると……傷だらけのオリディア様がアビスに首を絞められている場面に遭遇した。


「遅かったな」

「お母様!!」

「ごほっ。ママって呼びなさいって 言ってる でしょ?」


 か細い声で律儀に訂正するオリディア様にアビスの気が向いた瞬間を狙って二人の間に割り込む。天魔でアビスの手首を切り落としてから蹴り飛ばした。


「オリディア様。大丈夫ですか?」

「うふふ。残念ながら力を全て奪われちゃったわね。足を引っ張っちゃってごめんなさいね」


 力なく寄り添ってきたオリディア様を支える。魔力がほとんど残ってない!? このままじゃ……。


「アビスは何を? オリディア様が死んだらアビスも死ぬんじゃないの?」

「例外があるのよ。それが直接片割れを殺した場合。このままだと私が死んでも魔力が全てアビスに移動するからアビスは残る……どころかシアンだった頃の力を取り戻すわ」


 こんな方法で解決方法が提示されるなんて……。オリディア様をサポートしてオリディア様にアビスを殺して貰えばよかったのか……。


「……サクラちゃんには悪いけど私はアビスを殺さないわよ。あの子も大切な私の分身だもの」

「こんな状態に追い込まれても?」

「ええ。もちろんよ」


 オリディア様は弱弱しくもにこりと笑う。でも……そうだね。私が何か言うことじゃないか。


「理解してくれてありがとう。お願いがあるの」

「なんですか? 内容によりますよ」


 まっすぐと見つめられて思わず即答で頷きたくなったけどぐっと我慢して見返す。


「意地悪をいわないで。 ……私を殺してちょうだい。……アースフィアは滅ぶかもしれないけど……最後の娘だけでも助けてあげたいの。私を殺したらセレスちゃんを連れて地球に戻りなさい。そこに地球の神だっているし可能でしょう。身内のごたごたにあなたを巻き込んでごめんなさいね」

「ママ? 死んじゃやだよ! 私を一人にしないで!」


 オリディア様の願いにセレスが泣きつく。そして涙を流しつつも私を見るセレスの眼には殺さないで! 殺さないよね? と書いてある。私だって殺したくないよ。


「させるか」

「ちっ。水を差すんじゃねえ」


 私に吹き飛ばされていたアビスが戻ってきてオリディア様にとどめを刺そうとする。

 龍馬が間に割って入りアビスを牽制し始めた。


「サクラちゃん、私の魔力が完全にアビスへ行き渡る前にお願いするわ」

「サクラ! 殺さないよね? 私の力を使ってもいいからお母様を治して!」

「おい! アビスの力が強くなってて長い間抑え込むことはできねえぞ! 殺すにしろ救うにしろさっさと決めろ!」


 私は、私は……。一つの決断を胸に桜華を構えた。

次話は明日の17時投稿予定です


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