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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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263話 アビスの復活

 セレスとジークの戦闘は続きますます激しさが増していく。


 セレスを応援しつつも私は私がやるべきことをやっておこう。


あと一人(・・・・)か」


 アービシアが自ら創った球状の世界を消滅させて呟く。

 こっちにはセレスだけじゃなくて私達もいるんですけど!?


「くっくっく。そう睨むな。可愛い可愛い我が娘よ」

「キモっ」


 体に鳥肌が立ったよ!? え? 突然なに? 精神攻撃?


「そう嫌がるな。俺とて気分が良い時は冗談を言いたくなるものだからな」

「ジョークのセンスないね」


 上機嫌に笑うアービシアは椅子に深く座りつつどこからともなく取り出した飲み物を飲み始めた。


 アービシアのコップが空になるまで時間が経過した頃、常に再生し続けるセレスと異なりセレスの妨害や攻撃で疲れ始めたジークの動きが鈍くなってくる。


「そろそろ頃合か……」


 少しの間様子見をしていたアービシアはゆっくりと立ち上がってセレス達に近づいていく。

 何するつもり? 神は神界で戦闘行為が禁止されてるはずでは?

 良かった。セレスを見るとアービシアの動きに気付いているみたい。気付いていないのは……ジークだけかな?


 セレスに何かした時に反応できるように警戒する。戦闘行為が制限されている以上直ぐにどうこういった妨害はないと思うけどね。


 しばらくしてアービシアは最初の勢いが無くなり、それでも小声でブツブツとオリディア様の賛美とセレスへの暴言を言い続けるジークの背後に立つと貫手でジークの体を貫いた。


 え?


「ジーク!」


 アービシアの狙いがセレスではなくジークだったことに反応が遅れ、崩れ落ちるジークに声をかけることしかできない。


「なぜ心配している? こいつはただの裏切り者だろう?」

「そういう問題じゃない! あんたの仲間じゃなかったのか!」


 不思議そうに眉を上げるアービシアに思わず声を荒らげる。

 いくらマザコンで自己中で裏切り者だったとしても……、互いに信用せずに利用し合う関係だったとしても……。あれ? 割と自業自得……じゃなくて、味方に手をかけるなんてダメでしょう!


「安心しろ。こいつだって大好きなアビス(シアン)の復活に役立てて嬉しいだろうよ」

「ジークが好きなのはお前(アビス)でもシアン様でもなくオリディア(オリジン)様でしょうが!」

「そうだったか? ま、一緒だろ。同一神物だしな。くっくっく。はーはっはっはー!」


 高笑いするアービシアに黒い魔力が集まっていき繭のようになる。


「ジーク……」

「助けられる?」

「ううん。もう死んじゃっているから再生も効かないよ」

「そう……」


 龍馬と共にセレスの元へ向かうも横たわるジークにできることは無いみたいだ。


「今はジークを置いておけ。それよりあの繭をどうにかした方がいいと思うぞ」

「まずは私が何かできないか試してみる」


 今の私ならカトレアちゃんを補助するために使い続けたお陰で神の魔力であろうと手足のように扱える……はず。


 早速桜色の魔力を使って黒い繭に干渉していく。黒の魔力に反発されながらも奥深くへと桜色の魔力を浸透させていくとかなり濃密度な殻に当たった。


「途中までは妨害できるけど本体には届かなさそうかな」

「なら壊せるところまで壊してくれ。足りない分は俺とセレスでどうにかする」

「了解」


 干渉した箇所の繭を少しずつほぐして解いていく。拳大ほどの穴を開けるとセレスと龍馬が追撃して殻を壊した。


『ぎゃああああ』


 アービシアの悲鳴が聞こえ、繭から血が垂れる。へー、アービシアの血も赤色なんだ。


 場違いなことを考えていると繭全体に罅が広がっていき罅から黒の魔力が溢れ始めた。


「これ大丈夫?」

「近付かない方が良いかもな……」


 黒の魔力に触れた床が腐り落ちるのを見て顔がひきつる。セレスとジークの戦闘で傷一つ付かなかった床に穴があくなんて……。


 少しすると繭が完全に崩壊し、真っ黒でドロドロの液体に包まれたアービシアが這いつくばっていた。絵面が完全にホラーな件。井戸やテレビから出てきそうだよ……。


 黒の魔力と液体が混ざり合わさりつつアービシアを覆っていく。

 はっ! 眺めてる場合じゃない!


 我に返った私は桜の魔力で黒の魔力に干渉して強固に纏まろうとする動きを阻害していく。

 思ったより纏まる力が強くて妨害できない……。仕方ない、上手くいくか分からないけど……。


「サクラ大丈夫?」

「私はね……。でもごめん、妨害しきれなかった」

「これは仕方ないだろ。魔力に怨念が乗って強力になってやがる」


 黒の魔力が集まれば集まるほど鳥肌が立つ。アービシアに纏わりついた黒の魔力が霧散すると少しぽっちゃりしたアービシアがその場に立っていた。


「……アービシア?」


 佇まいに違和感を覚える。アービシアじゃ……ない?


「サクラか。久しぶりだな(・・・・・・)

「アビス?」

「ついてこい」


 アビスはそう言うと空間にゲートを開いて中に入る。……完全にアウェーな場所に行くしかないのか……。しかたないね。受けて立とう。


 桜の魔力で少しゲートに干渉して行先を確認する。


「セレスと龍馬はどうする?」

「もちろんついていくよ!」

「ああ、サクラだけだと心配だからな」


 行先が安全だと確認をしてゲートを潜る。移動したらとうとう最後の決戦だね。

次話は明日の17時投稿予定です


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