256話 終わらない戦い
「終わったのかしら……」
「まだ油断しないようにしましょう。竜の掃討戦も残っています」
ジークが火球に飲まれ、レーザーから解放されたメンバーが集まってくる。竜の数もだいぶ減ってきたし残りは時間の問題よね?
でも、ジークが最後何もしなかったのが気になるわね。サクラも引っかかることがあったら気をつけろって言ってたし注意しておきましょう。
ジークが居なくなった場所を注視しつつも二人一組となって残った竜を倒していく。虎徹さんだけはまだ一人で暴れているけどね……。ジークのレーザー攻撃の中でも竜を盾にしつつ斬りまくっていたし戦闘能力高すぎるわ……。
「む?」
虎徹さんは何か違和感を持ったらしく竜を斬りつつ首を傾げる。……今なら話しかけても大丈夫かしら。
正気? と目で訴えてくるレオナを無視して虎徹さんの近くに行く。
「虎徹さん。どうしたの?」
「ふむ、カトレア殿は神々しくなったな」
「そこは触れないで……」
良かったわ。普通に話せそうね。
「神々しいのはいい事だと思うが……まあ良い。いやな、竜の動きが知的になってきたのだ。学習し始めた……というところやもしれぬ」
「学習……それは厄介ね」
「うむ。気をつけるよう伝えておいてくれ」
再度無双し始めた虎徹さんから離れて全員に竜に知能が付いたと教えて回る。皆首を傾げていたけど大丈夫かしら。
サクラが学習型の敵は先手必勝って言っていたし私もそれに倣いましょう。
さっきの火球は大きすぎたから魔力を少なめにして火球を作る。代わりに連射速度をあげてみようかしら。
端から順に火球で竜を撃ち落としていく。いい加減多すぎよ。もしかして本体が別にいてこいつら全員分身だったりする? ……想像したくないわね。どれほど巨大な敵なのよ……。
考えたくない可能性は頭から切り捨てて攻撃に集中する。
うん? 虎徹さんが言った通りね。ほんの僅かだけど攻撃が躱され始めたわ。
打ち出す速度を少し変えるだけでまた攻撃が当たるようになる。
……そういや死骸はどこにいってるのかしら。
相当数の竜を倒したから死骸が山積みになっていてもおかしくないはずなのに……。
不安になって撃ち落とした竜を観察する。なるほど。死んで少ししたら黒い灰になるのね。
魔力感知で灰の行方を追うと灰は一つに纏まって新しい竜として生まれた。
…………どうりで数が減らないはずね!!!!
色んな魔力が混ざっていて気付けなかったわ……。学習した竜は一度殺された竜みたい。元々の数も多いけど一度殺られた方法は二度と効かないみたい……これって不味くないかしら。
「シルビア様! お話があります!」
シルビア様に今考えたことを話す。後の作戦立ては任せるわ。
「なるほど、知識が共有されていないことと常に同じ人の所に来ないおかげで問題なく動けていますがこのままだと一気に不利になりますね」
私の話を聞いたシルビア様が少し逡巡してから全員を招集する。もう対策を考えたのかしら。
全員に竜について説明をした後シルビア様が指示を出す。
「倒すことよりも封印することを主体に変更します。相手を封印する術を持っているのは……」
「私達ね」
「私も一応できるけど苦手よ。あまり期待しないで」
シルビア様の問いにマジュリーとリヴィが手を上げる。レオナは自信なさそう。珍しいわね。
「マティ。敵の力を封じる道具は作れませんか?」
「ん、やってみる」
なるほど道具ね。作るのは大変そうだけど誰でも使える道具であれば脳筋勢でも戦えるようになるわね。
「そしてカトレア」
「なにかしら」
突然名前を呼ばれて驚いたわ。私は封印術なんて知らないわよ?
「倒した竜の魔力を浄化できないか試してください」
「浄化なんてやり方分からないわよ?」
「なんかこう……魔力で魔力を塗りつぶすみたいな……うりゃーってやってみてください」
シルビア様の説明に思わず目が点になる。この王子うりゃーって言ったわよ!?
「とにかく!! お願いしますね?」
「え、ええ」
勢いと威圧で押し切られた気がしないでも無いけど誤魔化されてあげましょう。ふふっ、うりゃーってやりにいきましょうか。
―――
目の前にジークが現れてアービシアと軽い口喧嘩を始めた。
「誰が離脱して良いと言った?」
「下に付いたつもりはないの」
「ちっ、大人しく従えばいいものを」
「利用してるのはお互い様なの。仕事はしたんだから文句を言われる筋合いは無いの」
私は二人の喧嘩を見つつ神の魔力を扱えるように練習している。カトレアちゃんに魔力を補給しないとね。はっ! 推しに貢ぐってこんな感じ!?
「集中しろバカ」
「バカって言う方が馬鹿なんだぞ! というかあんたも私なんだからブーメランなんだからね!」
「うるさい」
酷い、二回も頭を殴られた。本当に馬鹿になったらどうするのさ。
それにしても……。
球の中にある世界の様子を確認して少し心配になる。
シルビアの指示は正しいけど正解じゃないよ。手遅れになる前に誰が気付いて……!
「もういい、黙って座っておけ」
「そうするの。あとは全滅するまで見守るだけでいいの」
二人の悪い表情を見つつ、せめてもの助けにならないかと魔力を注ぎ続けた。
次話は明日の17時投稿予定です
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