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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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255話 ジークとの戦い

「ま、いろいろ言ったけど元の世界なら戻れるはずだから安心しなよ」

「今までの話は何? 茶番?」


 いやホントなんで一度絶望に叩き落としたりカトレアちゃんに魔力を渡す話をした? 意地悪か?


「今までの話は元の世界に戻れなかった時の保険の話だったんだけど……」

「へ?」


 恨めしげにセレスを睨むと困った顔をされてしまった。

 そんな話だったっけ?


「龍馬のおふざけでショックを受けて聞こえて無かったのかも……」

「あっはっは。そういうこともあるさ! …………悪い」


 笑って誤魔化そうとした龍馬だったけど私とセレスからの圧に負けて謝罪した。うむ、許そう。


「今のサクラはアービシアと似た状態だ。いわゆる受肉した状態だって言えばしっくりくるか?」

「精神生命体が肉体を得る的なやつ?」

「ああ、そのイメージでいい」


 さすが元私、すっと理解できたよ。


「話は終わったか?」

「おう、バッチリだ」


 そういやアービシアも居たね。話に入らないで睨んでくるだけだったから忘れてたよ。


「話が終わるまで待つなんて律儀だね」

「うるさい。ただの気まぐれだ」

「神には神のルールがあるのさ。サクラもおいおい分かってくるよ」

「ちっ」


 ルールか……制約が多いなんて神様も大変だね。


「他人事のような顔してるがお前もだぞ?」

「うぐっ。考えないようにしてたのに……」


 ため息を吐きつつ皆の現状を確認する。何かサポートできる事があるかもしれないし……。現実逃避じゃないよ?


 ―――


 虎徹さんが暴れ回ったおかげで竜の数がかなり減ったわね。次々と増えるから全滅させるのは無理そうだけどジークに集中できそう。マティナもショックから立ち直ったみたいだし総力をあげてジークと戦えるわ。


「いい加減しつこいの」

「余所見とは余裕ですね!」


 私達の状況を見たジークが文句を言う。二人はずっと動きながら口喧嘩してるけど疲れないのかしら。


 シルビア様が一度下がって私達と肩を並べる。


「そんな勝ち方で良いの?」

「悪いですが私個人の感情よりも世界の方が大切ですから」


 分が悪いと思ったのかジークが挑発するもシルビア様は涼し気にかわしたわね。


「しかたない……の」


 …………? ジークの瞳が黒く光る。少しゾワッとしたけどなんとも無いわね。


「対策されてるみたいなの。なら……」


 ジークがシルビア様に襲いかかる。今更単調な攻撃をするの?

 シルビア様も気になったのか慎重に攻撃を見極めようとする。


 しかし、二人が衝突する直前でジークが進む方向を変えた。


「リヴィ!!」


 今までよりも一段階速度を上げたジークに受けようと構えていたシルビア様は反応できず、マジュリーと共に後方でサポートしていたリヴィが攻撃を受ける。


「大丈夫よ。ダメージはないわ!」


 リヴィに怪我が無いようでホッとするもジークはニヤリと笑う。


「何がおかしい」

「なんでもないの」


 ジークは何かを誤魔化した後、歌を歌い始めた。

 なんだか少しゾワゾワするわね?


「なんであんたがそれを!」

「全員耳を塞いで!」


 歌を聞いたリヴィが驚き、マジュリーが全員に警告する。

 どうやら呪歌だったみたい……って不味くないかしら? 思いっきり聞いちゃったわよ?


 周りを見ると私以外全員が冷や汗をかいている。私は平気みたいね。


 皆の動きが鈍くなっている間にジークがレオンに肉薄する。さっきより動きが良くなったかしら。


 呪歌の影響で動きが鈍くなっているレオンはあっさりとジークに捕まってしまう。

 呪歌の影響を受けてない私が対処しないといけないわね。


「離れなさい!」


 右手に纏う外皮をゴムのように伸ばしてジークを爪で切り裂こうとする。しかし、ジークがレオンを私の方に投げ飛ばして離脱したため、腕を振り下ろさずに途中で止めることになった。


「うん。これくらいで良さそうなの」


 何を納得したのか一つ頷いたジークは私達を見渡す。


「最後の勧告なの。こちらにつくか死ぬか選ぶの」

「ジーク……。あなたがこちらに戻ってくる選択肢は無いんですか?」

「まだ甘っちょろいことを……。そんな選択肢は鼻から無いの。諦めるんだよ?」


 シルビアの言葉を鼻で笑い飛ばしたジークはレーザーを打ち出してくる。

 かなりの量の弾幕に躱しきれず当たってしまう。……チクチクするだけね。ダメージ入ってないわ。


「今度は俺の魔法を!」


 レオンが驚きつつもレーザーで相殺しようとする。他のメンバーもそれぞれが魔法を使って迎撃していった。


「魔法の威力が高いわね」

「そうなの?」

「ええ、盾を貫通してくるもの」


 近くに来たレオナは影でできた盾で身を守っているけどよく見ると盾が穴だらけになっている。


「その割には全く痛くないのだけど……」

「愛されてて羨ましいわ。私のことも守ってくれないかしら?」


 やっぱりサクラが守ってくれているのかしら。そう考えると嬉しいわね。


 皆が守りに入る中、私だけは受けても問題ないから攻撃に転じる。


 焔魔法でも喰らいなさい! ありったけの魔力を杖に込めると巨大な竜をも丸呑み出来そうな大きさの火球が出来上がる。や、やりすぎたかしら……。


「えぇ……」


 横にいるレオナの顔が引き攣る。し、仕方ないじゃない。ここまで大きくなると思わなかったのよ! サクラがやらかした時にわざとじゃないって言う気持ちが初めて分かったわ……。


 出来ちゃったものは仕方ないから諦めてジークに向かって火球を投げつける。


「それはなんなんだよ!?」


 火球を見て呆然としていたジークが我に返って叫ぶ。そう、想定できていなかったのね。……当然よね、私だってこうなるなんて思ってなかったもの。


「ぐぬぬ」


 一瞬何かしようとしていたジークだったけど何もできずにあっさりと火球に飲み込まれていった。

次話は明日の17時投稿予定です


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