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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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245話 それぞれの戦い4

 チェリエ共和国ではローズとネリネが、空島では真田と織田が、ブーワ火山ではジャックとラティナが健闘している。一方、魔国ではサクラが作り出したゴーレムたちは暴れまわっていた。その様子が魔族たちのサクラに対する崇拝度合いが鰻登りなのだが、サクラ本人は知る由もない。


 ―――


「ちょっと~。うちらのことこき使いすぎじゃな~い? ちょっと休憩しようよ~」

「気合いだー! 軟弱なことを言うんじゃない! やればできるっ! 為せば成る! 文句を言わずに体を動かすんだ!」

「ドランうざーい。暑苦しいしテンション爆落ちなんですけど~」


 虎徹とマティナのパートナーであるドランとルディは二人、妖精族の協力の元、別動隊として各国の魔物たちを遊撃していた。


 ニュディルに見つからないように細心の注意を払いつつも遠い国々を適宜カバーしないといけないため敵が弱くとも負担はとても大きい。


「うおおおおおお! 不穏な気配があちらこちらからするぞ!」

「だる~い。マティナ~うちに癒しを~」


 駄々をこねるルディの首根っこを掴んで叫びだすドラン。各国に現れた強敵たちを無視して一直線に空へと向かう。本能で嗅ぎ取ったニュディルとボルボロスの元へと最短距離で突っ切るのだ。


 ―――


「来たか」

「ボルボロス様?」

「ニュディル。神霊が来ました。本体に意識を集中しなさい。足元を拾われますよ」


 神霊の気配を感じ取ったボルボロスがニュディルに警戒を促す。ニュディルは優秀だが相手を見下すのが欠点なのだ。


「今更神霊如き相手になりませんよ。私達にはアビス様から頂いたこの力があるのですから」

「油断なきよう」


 ボルボロスはそういうと大鎌を取り出すのと戦闘形態()の姿をしたドランが突っ込んでくるのは同時だった。


「やりますねぇ」


 ボルボロスの鎌とドランの爪が激しくぶつかり合う中、ニュディルは黒の魔法を練って防御できない魔法を使う。


「うわきもーい。生理的に受け付けないんですけどっ!」


 しかし、黒の魔法は後から来たルディが投げた液体によって消失する。


「面妖な……」

「そっちほどじゃないし。うざプ」


 こうしてドラン対ボルボロス、ルディ対ニュディルの火ぶたが切られた。


 ―――


 ドランが熱で真っ赤に染まった爪を振り下ろす。爪には岩や鉄、ミスリルであってもバターのように切れる程の熱が込められているがボルボロスは涼しげに鎌ではじき返す。


「やるなー! 今ので終わらせるつもりだったぞ!!」

「暑苦しいですね。クールダウンしてはいかが?」


 ボルボロスの鎌に闇が集まり周囲の気温が氷点下まで下がる。

 そのままボルボロスが鎌を振り抜くと軌跡には綺麗な氷の後が残った。


「うおおおー! 当たらないぜー! ふんぬぅっ!」

「なっ!」


 豪快な掛け声と裏腹に最小限の動きで鎌を躱したドランが思いっきり頭突きをする。ボルボロスはその衝撃に地面へと叩きつけられた。


「本当にやりますねぇ。私の本気を見せて差し上げましょう」


 ボルボロスの身体に黒の紋様が浮かび上がり、体格が一回り大きくなる。ボルボロスの変化に合わせて大鎌も脈動し始め、無機物のはずがまるで生きているように殺気を振りまき始めた。


「ワッハッハー! ならこちらも本気の本気でいくぜー! うおおおぉぉ!」


 ドランが気合いを入れると紅い湯気のような物が身体から立ち上る。ドランの熱気で周囲の空気が荒れ狂い、雨が降り始めた。


「さすが神霊サマ。天候をも操りますか」

「行くぞ!」


 鎌と爪の斬撃が飛び交うなか、二人の動きは勢いを増していく。


 ―――


「うはー、かくれんぼとかちょー久しぶりじゃん。どこかなー?」


 ドランとボルボロスの激しい戦いとは対照的にルディとニュディルの戦いはとても静かな戦いになっている。

 魔力に紛れた闇討ちを得意とするニュディルと自作アイテム(盗聴機や盗撮機)の使用を初めとした情報収集が得意なルディの戦いは必然的に隠れんぼのように推移していった。


「ここっ! ラッキーあったりー!」


 一見何も考えてないように見えるルディだがその言動を隠れ蓑に蜘蛛のような罠を張り巡らせている。いくら隠れていても自ら罠にかかるようでは敵ではない。罠にかかった一瞬の反応を見逃さずにルディは攻撃を仕掛けていく。


「およ? 隠れんぼはもうお終い? じゃ、次いくっしょ!」

「神霊如きがなめるな……!」


 隠れても無意味だと判断したニュディルは姿を現し分体達を集める。暗殺や諜報専門とはいえアービシア軍の幹部を担うニュディルは力押しも得意だった。


「チョマっ! ヤバいかも……」


 ルディは元の大きさの数倍に膨れ上がったニュディルの腕を見て慌てだす。それを見て満足そうに頷いたニュディルは必殺のストレートをルディに向かって叩き込んだ。


「ぴえん。うちの力だけで勝とうと思ってたのになー。セレちんに借りができちゃった」


 ニュディルの拳は人型に戻ったルディによって止められる。正確にはルディの持っている大盾によって止められていた。


「次はうちのターン! てー!」

「はっ?」


 ルディの背中に付いたオーパーツから大量の機関銃が飛び出す。ルディの合図に合わせて飛び出した銃はニュディルを集中砲火した。


 最初の数発は理解出来なくて被弾するもどういう攻撃か理解したニュディルは分体を壁にして攻撃を避けていく。


「面妖な……!」

「きっしょいあんたにだけは言われたくないっしょ」


 分体の壁が破壊され、蜂の巣にされつつも何度も再生し続けるニュディルを見てルディは顔をしかめる。互いが互いを強者だと認めた二人は戦闘が長引くのを覚悟するのだった。

次話は明日の17時投稿予定です


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